排泄セルフケア不足(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は「排泄セルフケア不足」について考えていきます。
排泄のセルフケアが難しい要因には様々なものがあげられます。
例えば、認知症でトイレの場所がわからなくなってしまった場合や、麻痺があって手すりがないとトイレが使えないのに自宅のトイレには手すりがない場合などもそうですね。
それぞれの要因について考えていきましょう。
1.排泄セルフケア不足
・意欲低下(精神疾患や認知症など)
・認知機能低下
・排泄行為の手順がわからない(ズボンや下着の着脱やトイレットペーパーの使い方)
・トイレの場所がわからない
・失禁など排泄行為に対する不安やあきらめ
・精神疾患(意欲低下)
・麻痺
・運動麻痺:自力での排泄行為が難しい
・立位困難、座位困難、上肢の可動域が狭い
・移動に時間がかかる
・感覚麻痺:便意がわからない、尿意がわからない
・ADLにあった排泄環境ではない
・手すりがない
・便座が低い(座るのはなんとか出来ても立ち上がれない)
・夜間トイレまでの道のりが暗い
・トイレが寒い
・骨折
・圧迫骨折(姿勢のアンバランス、疼痛)
・ストマ
・自己管理が困難
(交換や排泄が適切に行えない、排泄物破棄後の処理が難しい)
・空間無視(視界に制限がある)
・神経筋疾患(力が入らない、不随意運動があるなど)
・筋骨格系の疾患:座位困難、立位困難、車椅子やポータブル移乗が困難
・疼痛:立位や座位などの動作で疼痛が発生する
・膝関節疾患
・心機能障害(移動や努責など排泄行為で苦しくなる、動悸、胸痛)
・呼吸機能障害(移動や努責など排泄行為で呼吸が苦しくなる、酸素の吸入)
・消耗性疲労
※関節可動域の障害、移乗の障害には「身体可動性障害」や「移乗能力障害」を参考にしてみてください。
※易疲労状態による場合は「消耗性疲労」も参考にしてみてください。
※尿失禁が原因にある場合は以下の計画も参考にしてみてください。
・認知機能や暴行機能の低下により、尿意を感じるがトイレまで間に合わない人は「機能性尿失禁」
・前立腺肥大などで膀胱が過拡張し漏れ出てくる状態は「溢流性尿失禁」
・咳、くしゃみなどの腹圧で少量の尿漏れが起こるものは「腹圧性尿失禁」
・切迫性尿失禁と反射性尿失禁については「排尿障害」の計画内で触れています。
機能性尿失禁
https://florencenotomosibi.com/wordpress/%E6%A9%9F%E8%83%BD%E6%80%A7%E5%B0%BF%E5%A4%B1%E7%A6%81%EF%BC%88%E7%9C%8B%E8%AD%B7%E8%A8%88%E7%94%BB%EF%BC%89
溢流性尿失禁
https://florencenotomosibi.com/wordpress/%E6%BA%A2%E6%B5%81%E6%80%A7%E5%B0%BF%E5%A4%B1%E7%A6%81%EF%BC%88%E7%9C%8B%E8%AD%B7%E8%A8%88%E7%94%BB%EF%BC%89
腹圧性尿失禁
https://florencenotomosibi.com/wordpress/%e8%85%b9%e5%9c%a7%e6%80%a7%e5%b0%bf%e5%a4%b1%e7%a6%81%ef%bc%88%e7%9c%8b%e8%ad%b7%e8%a8%88%e7%94%bb%ef%bc%89
排尿障害
https://florencenotomosibi.com/wordpress/%e6%8e%92%e5%b0%bf%e9%9a%9c%e5%ae%b3%e7%9c%8b%e8%ad%b7%e8%a8%88%e7%94%bb
※便失禁がある場合には「下痢」を参考にしてみてください
下痢
https://florencenotomosibi.com/wordpress/%e4%b8%8b%e7%97%a2%ef%bc%88%e7%9c%8b%e8%ad%b7%e8%a8%88%e7%94%bb%ef%bc%89
2.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・ADLや障害に合わせた排泄環境を整えることができる。
・自身の排泄パターンを把握し、排泄を間に合わせることができる。
・自身のADLに合わせた自助具や福祉用具を取り入れることができる。
・自身のADLに合わせた排泄行為のしやすい衣服を選択することができる。
・ストマの管理ができる。
・尿パットを適宜取り換え、皮膚の清潔を維持することができる。
・排泄物の性状を把握し、異常時には受診することができる。
看護師を主語にする場合にはつぎのようになるとおもいます。
・排泄セルフケア維持のために、ADLや障害に合わせた自助具を用意する。
・認知機能の低下による排泄ヘルスケア不足には、環境を整える。
・ストマ管理法の習得を支援する。
・失禁による意欲低下には、失禁の種類に合わせて介入をする。
・本人、家族の訴えを傾聴し、不安の緩和に努める。
・残存機能を生かした生活ができるように、本人や家族へアドバイスをし、知識や技術を習得してもらう。
・ADL維持のための生活リハビリを取り入れる。
3.看護計画
1)観察計画《OP》
(1)身体的要因
・年齢
・認知機能:MMSE21点以下、長谷川式20点以下で認知症疑い
・食事摂取量、食事内容、水分摂取量
・既往歴、現病歴など:
※消化器系疾患:下痢の原因
※泌尿器系疾患:膀胱炎、神経員性膀胱など
※筋骨格系疾患:可動域や関節の障害
※脳血管疾患、脳内病変:排泄コントロールをする中枢の障害、便意・尿意の障害、麻痺、運動機能障害
※肺高血圧、COPDなどの肺疾患:呼吸苦、酸素吸入の必要性
※心疾患:労作による胸部症状
※骨折:圧迫骨折なども含む。可動域の縮小と可動に伴う疼痛
※消耗性疾患:重症感染症、貧血、脱水、低たんぱく血症など
※がん:疼痛や神経症状、呼吸苦など転移の場所により様々な症状がでる。生活への影響もある。
・ADL、IADL:排泄行為について、自力でどこまで出来るか、自分で行う意欲があるか
・実際の排泄行為:どの部分ができていないか
・排尿パターン、排便パターン
・介護者の介護力、介入の程度
・バイタルサイン(安静時と労作後)
・血圧、脈圧、左右差、脈拍欠損
・心拍数(徐拍、頻拍)、脈拍数(徐脈、頻脈)、心拍と脈拍の差
・SPO2
・疼痛:
・疼痛の程度:フェイススケール、ペインスケールなど。
・疼痛出現のタイミング:安静時疼痛、労作時の疼痛
・疼痛の部位
・疼痛の種類;刺すような痛み、突然の痛み、じわじわと圧迫されるような痛みなど
・鎮痛剤使用の有無
・麻痺:部位、範囲、完全麻痺、部分麻痺
・麻痺の場合の残存機能
・介護者の有無、介護者の介護力
・末梢の感覚(指先・足先)
・画像検査
・XP、CT:胸水、腹水、骨折、脳の損傷部位など
・筋力:MMT、移乗能力(車椅子、ポータブルトイレ)
・関節可動域
・自覚症状:
・呼吸困難、胸痛、動悸
・めまい
・静脈血データ
・貧血(RBC、Hb、HT)
・感染(プロカルシトニン、CRP、WBC、顆粒球・リンパ球)炎症が進むと凝固系も
・低たんぱく血症(Alb、TP)
・心原性ショック症状
・血圧低下、意識消失、尿量減少など
・心電図
・不整脈
・内服薬(6Rに添ってみてみる。どのようなものを飲んでいて、どのようなリスクがあるか確認)
(2)環境的要因
・トイレの環境:場所が遠い、外にあり寒いために行きたくない、など
・トイレまでの移動手段:手すりが適切な位置にない
・ケアマネージャーの有無、プランの内容
2)行動計画《TP》
・安全・安楽・自立に配慮したケアを行う。(残存機能を生かす)
・排泄環境を整備する
・トイレの位置がわかるように蛍光テープなどで印をする。
・フットライトなど夜間でも足元が明るくなるように工夫をする。
・ポータブルトイレを設置する。
・排泄介助の際、突然の胸部不快や呼吸苦に対応するため、パルスオキシメーターや血圧計も念のために準備しておく
・排泄パターンを把握する。パターンに合わせた誘導をする。
・排泄しやすい衣服を選択する(ズボンはゴムにし、リハビリパンツを使用する)
・排泄行為の手伝い
・車椅子の移乗を手伝う。本人のできない部分のみの介助にする。
・尿パッドは汚染していたら交換する。何度も使用して皮膚トラブルにならないようにする。
・立ち上がりの方法など、手すりの使用法を伝えながら介助する。スムーズに自身でできるようになるまで見守る。
・立ち上がりが困難な場合、手すりの設置、補助便座(便座の高さを調整できるグッズがある)
・動悸、気分不快、嘔気、めまい、浮遊感、頭痛などの出現がないか確認しながら介助する。
・尿失禁のパターンに合わせて援助する。
・尿失禁を嫌がって飲水量を制限しないように観察しながら介入する。
・ストマを管理する。交換、洗浄、内容物破棄など。
・皮膚トラブルのある場合には、写真に撮りカルテに保存する。経過を追って観察していく。
・皮膚トラブルのある場合には、保護剤を使用する。
・便失禁がある場合、便の性状を観察し、水様・泥状未消化などの異常が見られる場合は医師へ報告する。
・疼痛で排便セルフケア不足になっている場合には、鎮痛薬を使用する。労作の30分前には投与する。
・ADL維持のための関節可動域訓練を行う。
・自宅でも自身でできることを支えるための環境整備をおこなう。布団→ベッドの生活など。ソーシャルワーカー、ケアマネージャーに相談し、必要なサービスが受けられるように調整する。
・ご本人、ご家族の不安を傾聴する。
・気分の落ち込みなどは声掛けに気を付ける。体調はどうですか?など相手を気遣う声掛けをする。気にかけてもらえることが安心する。無理に励まして連れて行こうとしないで、調子が良さそうですね、行ってみましょうか?などその時の調子に合わせて介助する。
3)教育計画《EP》
・自宅へ戻ってからの排泄について患者・家族の介護力も加味して一緒に考えアドバイスをする。
・ADLや機能障害にあった排泄環境の調整について説明する。
・福祉用具、自助具について説明する。
・ケアマネージャーとの連携について説明する。
・排泄セルフケアを維持する方法について一緒に考えアドバイスをする。
・内服は自己中断せず、処方されたものを内服するよう説明する(自宅での療養生活を維持するために内服は大切です)。
・鎮痛剤などの屯用で使用する内服薬や貼付薬について説明する。投与間隔や使用上限など。
・介助時は遠慮なくナースコールするように説明する。無理して自身で動かないように説明する。
・ストマ管理の方法を説明する。
・ストマの補助についてソーシャルワーカーに説明してもらう。
・労作時の自覚症状(疼痛、動悸、息切れ、呼吸苦など)があったら知らせるようにお願いする。
・痛みは我慢せず、知らせるように説明する。必要に応じて鎮痛薬が使用できることを説明する。
・自助具の使用法について説明する。
・ADL維持や寝たきり予防のための生活リハビリや関節可動域訓練の必要性を説明する。退院後に自身でも継続できるように、ご本人とご家族に、リハビリ職から説明してもらう。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
ご意見、感想、質問は以下のコメント欄よりお寄せください。
関連の計画もリンクを貼っておりますので参考にしてみてください。
入浴セルフケア不足
更衣セルフケア不足
摂食セルフケア不足
排泄セルフケア不足
セルフケア促進準備状態


[…] 排泄セルフケア不足(看護計画) […]
[…] 排泄セルフケア不足(看護計画) […]