不安定性情動コントロール(看護計画)
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今回は「情動」に焦点を当てていきます。
情動とは『「怒り、おそれ、喜び、悲しみ」などの比較的急速に引き起こされた一時的で急激な感情の動きのこと』と定義されています。
まず、情動について考えてみましょう。
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1.情動とは
1)情動は何?
人間は「情動」である、怒り、おそれ、喜び、悲しみの感情を抱くのはどんな時でしょうか?
なぜ、そのような感情が生まれるのでしょうか?
「情動」を誘導しているのは「快」と「不快」で、生き物が生存するために極めて重大な役割がある。
食料を得るための接近行動は「快」に属し、敵に対する攻撃や回避は「不快」に属する。
情動の原因をなんとするかは、学問においてはいまだはっきりしていない。
「生理的要素」とする説、「脳神経系」とする説、「身体反応と原因の認知」とする説がある。
2)それぞれの説
(1)生理的要素とする説:ジェームズ・ランゲ説
この説は、「身体変化を認知する」ことが情動を生むという考えかた。
身体変化を認知することとは、次の順で起こる。
①外部の刺激を受ける
②身体反応が起こる
③身体反応を認知する
例:
①アルコールを飲む
②アルコールの作用によりドパミン分泌が活発になったり、交感神経の動きが抑制される
③緊張が解けて楽しい気分になる→「嬉しい」という情動が起こる
(2)神経系とする説:キャノン・バート説
この説は、情動(怒り、おそれ、喜び、悲しみ)が、視床により調整・認知されているという考え方。
①知覚に刺激を受ける
②視床が興奮する
③情動反応(末梢)が起こる
④情動体験(大脳皮質)が起こる
実験では、視床下部をすべて除去された猫は、怒りを示さなくなったそうです。
現在では、情動に関与するのは、視床下部、大脳辺縁系、網様体、大脳新皮質と言われている。
詳しくは後述のWikipedia「情動」ページをご参照ください。
(3)身体反応と原因の認知(情動の二要因説)とする説:シャクター・シンガー理論
この説では、身体反応(心拍数の増加などの興奮した身体状況)が出ていても、その場の雰囲気によって、引き起こされる情動は異なるという考え方。
実験を紹介します。詳しくは後述のWikipedia「情動」ページをご参照ください。
①いくつかのグループに分けた大学生にアドレナリンか、生理食塩水のいずれを投与する。
②①の投与を受けた大学生は「さくら」が待つ部屋に入る。
さくらは「喜びの感情を誘う」さくらと、「怒りの感情を誘う」さくらがいる。
③最後に、一人ひとりの大学生から、どのような感情を抱いたか、どんな反応を示したかを
聞き取りする。
④結果は、身体反応(心拍数や身体所見)が同じでも、さくらの誘導によって、抱く感情が異なった。
→この(3)の説は(1)と(2)の説の融合のように感じます。
ここまでで、
情動のコントロールが不安定になる要因にはしたのようなものがあるといえます。
①神経系(視床下部、大脳辺縁系、網様体、大脳新皮質)の障害、異常
②外部からの刺激
2,不安定性情動コントロールの対象
すでに情動のコントロールができていない症状が出ており、加えて1)から3)のような原因のあるものを対象とします。
★情動コントロール不良の症状★
・極度になみだもろい
・怒りが爆発する
・怒りで物を破壊したり投げつける
・相手への攻撃、暴力
・自傷行為
・自傷すると脅す行為
・抑えきれない笑い
・職業を転々とする
1)神経系の異常をきたした患者
・脳損傷(脳梗塞、くも膜下出血、脳出血)
・視床下部、大脳辺縁系、網様体、大脳新皮質の障害により
情動のコントロールが不良になっている
・麻痺などによりADL低下で自尊感情が低下している
・脳血管の異常:モヤモヤ病
・神経難病:意識がはっきりしているのにうまく話せない、自分で動けないことにいら立ちを感じて
情動のコントロールがうまくいかない場面をよく見かけます。
• 多発性硬化症:中枢神経系の慢性炎症性疾患で、神経の伝達が障害されます。
原因: 免疫系が誤って中枢神経系のミエリンを攻撃する自己免疫疾患。
症状: 視力障害、筋力低下、感覚異常、運動失調、疲労感。
• 重症筋無力症:神経と筋肉の接合部に問題が生じ、筋力が低下します。
原因: 免疫系が神経と筋肉の接合部を攻撃する自己免疫疾患。
症状: 筋力低下、眼瞼下垂、嚥下困難、呼吸困難。
• 筋萎縮性側索硬化症(ALS):運動ニューロンが徐々に死滅し、筋肉が萎縮します。
原因: 遺伝的要因や環境要因が考えられるが、正確な原因は不明。
症状: 筋力低下、筋萎縮、言語障害、呼吸困難。
• 脊髄小脳変性症:小脳や脊髄の神経細胞が変性し、運動失調が生じます。
原因: 遺伝的要因が多いが、特定の原因は疾患によって異なる。
症状: 運動失調、歩行困難、言語障害、眼球運動障害。
• ハンチントン病:遺伝性の神経変性疾患で、運動や認知機能に影響を与えます。
原因: 遺伝子変異による神経細胞の変性。
症状: 不随意運動、認知機能障害、精神症状。
• 進行性筋ジストロフィー症:筋肉が徐々に弱くなる遺伝性疾患です。
原因: 遺伝子変異による筋肉の異常。
症状: 筋力低下、筋萎縮、歩行困難、呼吸困難。
• パーキンソン病関連疾患:ドパミンの不足により運動機能が障害されます。
原因: 中脳の黒質におけるドパミン神経細胞の減少。
症状: 振戦、筋強剛、無動・寡動、姿勢不安定。
• 多系統萎縮症:自律神経や運動機能に影響を与える神経変性疾患です。
原因: 神経細胞の変性が原因だが、正確な原因は不明。
症状: 自律神経障害、運動失調、パーキンソン症状。
• プリオン病:異常なプリオンタンパク質が脳に蓄積し、神経細胞が破壊されます。
原因: 異常なプリオンタンパク質の蓄積。
症状: 認知機能障害、運動失調、精神症状。
• 亜急性硬化性全脳炎:麻疹ウイルスの感染後に発症することがある脳炎です。
原因: 麻疹ウイルスの感染後に発症。
症状: 認知機能障害、運動失調、精神症状。
• ライソゾーム病:細胞内のライソゾームに異常が生じ、様々な症状が現れます。
原因: ライソゾーム酵素の欠損。
症状: 発達遅延、臓器肥大、骨異常。
• 副腎白質ジストロフィー:副腎と白質に影響を与える遺伝性疾患です。
原因: 遺伝子変異による脂質代謝異常。
症状: 行動変化、視力障害、運動失調。
• 脊髄性筋萎縮症:運動ニューロンが変性し、筋力が低下します。
原因: 遺伝子変異による運動ニューロンの変性。
症状: 筋力低下、筋萎縮、呼吸困難。
• 球脊髄性筋萎縮症:運動ニューロンが徐々に死滅し、筋肉が萎縮します。
原因: 遺伝子変異による運動ニューロンの変性。
症状: 筋力低下、筋萎縮、呼吸困難。
• 慢性炎症性脱髄性多発神経炎:末梢神経の炎症と脱髄が特徴です。
原因: 免疫系が末梢神経を攻撃する自己免疫疾患。
症状: 筋力低下、感覚異常、運動失調。
2)精神疾患
・注意欠陥多動性障害 (ADHD)
原因: 遺伝的要因、脳の形態学的な異常、神経伝達物質のバランスの乱れなどが関与しています。
症状: 注意力の欠如、多動性、衝動性が主な特徴です。集中が続かず、一つのことにとどまるのが難しい、過度に活動的で落ち着きがない、衝動的な行動をとることがあります。
・自閉症スペクトラム障害 (ASD)
原因: 生まれつきの脳機能の異常が原因と考えられています。
症状: 対人関係の困難、強いこだわり、コミュニケーションの問題が特徴です。視線が合わない、表情が乏しい、特定の行動や興味に固執するなどの症状が見られます。
・双極性障害
原因: 遺伝的要因が関与していると考えられていますが、明確な原因は不明です。
症状: 躁状態と抑うつ状態が交互に現れます。躁状態では過度に活動的になり、抑うつ状態では気分が落ち込みます。
・境界性パーソナリティ障害
原因: 遺伝的要因や環境的要因(特に小児期の虐待体験)が関与しています。
症状: 感情や対人関係が極端に不安定で、見捨てられることへの強い不安、衝動的な行動、自傷行為などが見られます。
・心的外傷後ストレス障害 (PTSD)
原因: 戦争体験、暴力、性的犯罪被害、自然災害などのトラウマ体験が原因です。
症状: フラッシュバック、悪夢、過度の警戒心、回避行動などが特徴です。トラウマとなった出来事を何度も思い出してしまうことがあります。
・胎児性アルコールスペクトラム障害 (FASD)
原因: 妊娠中の母親の飲酒が原因です。
症状: 発達遅延、行動問題、学習障害、身体的異常などが見られます。
・物質乱用
概要;物質の使用が制御できなくなり、生活に支障をきたしている状態
原因:
遺伝的要因: 家族に物質乱用の歴史がある場合、リスクが高まります。環境的要因: ストレス、トラウマ、社会的圧力などが影響します。
心理的要因: 不安や抑うつなどの精神的な問題が関与することがあります。
生物学的要因: 脳の報酬系の異常が関与することがあります。
症状:
物質乱用の症状は、使用する物質によって異なります
身体的症状: 疲労感、体重減少、食欲不振、睡眠障害など。
精神的症状: 不安、抑うつ、幻覚、妄想など。
行動的症状: 物質の使用を優先するために仕事や学校を欠席する、
法的問題を引き起こす、対人関係の問題が生じるなど。
2)外部からの刺激による影響を受けている状態の患者
・虐待を受けている、受けていたもの
(虐待:身体的、心理的、精神的、ネグレクト、経済的)
3.目標
目標は患者さんを主語にして立てます。
・自分自身の特徴を知ることができる。
・情動をコントロールするための治療に前向きに取り組むことができる。
・治療効果を認め自己効力感が高まる。
・社会生活での対人関係でのいざこざが少なくなる。
4.看護計画
1)観察計画(OP)
・年齢
・性別
・生活歴(家族構成、既往歴、仕事)
・現病歴
・脳血管疾患
・精神疾患
・神経難病
・薬物乱用
・ADL
・どこまで自分でできるか
・自身の問題解決への意欲
・他者からの協力・支援
・生活環境:その人のADLに合った生活環境か
・仕事、自身の役割
・もともとの職業
・受傷後の職業上の困難
・収入基盤
・生活上のトラブル
・自身が困難なこと
・対人関係のトラブル
・精神的にショックな出来事
・虐待・非虐待経験
・心的外傷、トラウマ(戦争体験など)
・受傷によりできなくなったことが増える、馬鹿にされる
・喪失体験(他界、巣立ち)
・精神の成熟度(年齢に応じた成熟度か)
・治療
・治療内容、本人の理解度
・治療に対する本人の向き合い方
・治療の内容と進行度
・認知行動療法
・ソーシャルスキルトレーニング
・栄養療法
・薬物療法
・服薬の自己管理
・依存物質:自助グループ・家族会への参加
・ケアマネジャーの有無
・相談支援専門員の有無(障害のケアマネジメントを行う人)
・利用している福祉サービス
2)行動計画(TP)
・安全な環境整備を行う。
・危険なもの持ち込みがないか確認する(自傷他害の恐れがある場合)
・依存物質の持ち込みがないか確認する。
・治療計画に沿って、関係職種が統一したかかわりをする。
・話を傾聴する。否定も肯定もアドバイスもせず、相手の話したいことを聞く。
また必要な時には内容を記録し、関係職種と共有する。
・現状の不満
・心の移り変わり
・どうしたいのか、どうなりたいのかという希望
・受傷によって障害となった場合には
ADLに合わせた環境整備を行う。
・生活リハビリを取り入れ、自立を促す。
・自身ではできないセルフケアに対して介助を行う。
・服薬管理を行う。
・気分転換活動を取り入れる。
3)教育計画(EP)
(1)患者さん本人に対して
・治療内容について説明する。
・退院後の自己管理について説明する。
・セルフケアの方法について説明する。
・退院後の受診頻度について説明する。
・困ったときの対応について説明する(病院に連絡するように、など)。
・ソーシャルワーカーより、利用できる福祉制度について説明を受けてもらう。
・栄養士より、自身の疾患に合った献立や調理法について説明を受けてもらう。
・自助グループ・家族会について説明する。
・適度な運動、気分転換の効果について説明する。
(2)患者さんをサポートする家族などに対して
・介助する方法について説明する。
・自立の観点について説明する。(できることまで介助しない)
・ソーシャルワーカーより、利用できる福祉制度について説明を受けてもらう。
・栄養士より、自身の疾患に合った献立や調理法について説明を受けてもらう。
・服薬管理について説明する。
・患者さんの危険な状態になった際の対処について説明する。
・自身が介助をしていてつらくなった際には無理をせずに、病院やケアマネジャーに連絡するようにお話しする。
・自助グループ、家族会について説明する。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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