目次
半側無視(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は半側無視について考えていきます。
半側無視は半分が見えなくなる高次脳機能障害です。
大脳の機能局在について思い出しながら考えていきましょう。
すぐに計画立案をしたい方はこちらをクリックしてください。
1.半側無視(半側空間無視)とは
1)概要
半側無視は「半側空間無視」と呼ばれ、「失認」の一種。「失認」は高次脳機能障害の一種です。
半側空間無視は症状・兆候である。
高次脳機能障害を知るためには高次脳機能について振り返る必要が出てきましたね。
高次脳機能と大脳の機能局在については★1を見てください。
2)原因
脳血管障害(脳梗塞、脳血管攣縮、脳出血、くも膜下出血)、脳腫瘍、頭部の外傷により大脳皮質に障害をきたしたもの
3)症状
大脳半球の障害により、傷害された大脳半球の対側から刺激が認識されなくなる。
大脳皮質の機能局在に沿った障害が出る。大脳皮質のどの部分がどの機能を司っているかがわからないと理解できません。★1で機能局在について振り返って見てください。
機能局在をみると、
空間認識を主に司っているのは右半球にあるという頭頂連合野という部位です。
空間認識機能の一部である構成機能は右半球だけでなく、左半球も一部を司っている。
ですから、
ほとんどは、右半球が傷害を受けることで起こる左半側空間無視が多い。
ですが、
一部を左半球でも機能を一部になっているので、ときどきは左半球障害による右半側空間無視も起こりうる。
左半球には言語野(ブローカ野)が存在する。左半球が傷害を受けると、失語症が前面に出てくるため、半側空間無視の症状が見えづらいという特徴もある。
ただ、右半球での「空間認識」がメインなので、
右半球の障害による「左半側空間無視」が多くなる。
左半球の障害では、右半球にある「空間認識能力」は保たれているので、空間無視は起こりにくい、というわけですね。
失語は、ウェルニッケ野(感覚性言語)もブローカー野(運動性言語)も左半球にありますから、左半球が障害を受けたら、失語になります。
右半球が障害を受けても左半球にある言語野は無事ですから発語は出来ることになります。
4)具体的症状(左半側空間無視の場合)
・食事のトレーを正面に置いたとき、左側の部分を食べ残してしまう。
・自分の左側に障害物があることに気づかずにぶつかる。
・左側の人に気づかず、右ばかり向いてしまう
半側無視(半側空間無視)について理解できましたね。
では、次に、半側無視の対象についてみていきましょう。
★1 高次脳機能障害と大脳皮質機能局在
難しい言葉でわかりにくいですね。
少しずつ理解していきましょう。
まず、大脳皮質機能局在から。
1.大脳皮質機能局在
1)機能局在とは
・大脳は「溝(こう)」と呼ばれる溝で大きく4つの部位(葉)に分かれる。
・前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つ
・溝はさらに細かく「回(かい)」を形成する。
・葉によって与えられている役割が異なる。
葉の中の特定部位に、特定の機能が備わっている=「機能局在」という
2)前頭葉の機能と障害
①前頭連合野(右・左前頭野にある):
機能:精神活動や意思決定、行動の分別・抑制
障害されると:社会的行動障害、注意障害、遂行機能障害
②ブローカー野(左前頭野)
機能:運動性言語(話す)
障害されると:ブローカー失語(発語できない)
③一次運動野(左右前頭野)
機能:随意運動
障害されると:錐体路障害、運動失行
3)頭頂葉の機能と障害
①一次体性感覚野(左右頭頂葉)
機能:体性感覚
障害されると:錐体路障害、四肢運動失行、感覚障害
②上頭頂小葉(左右頭頂葉)
機能:行為の無意識コントロール
障害されると:視覚性運動失調
③下頭頂小葉(左)
機能:感覚情報と視覚情報による物体認識、読み書き計算
障害されると:伝導性失語、失読、失書
④頭頂連合野(②-③の連合野)
機能:感覚情報の統合、認知、視空間認知
障害されると:半側空間無視(主に右半球の障害)、着衣失行、構成障害
4)側頭葉の機能と障害
①聴覚野(左右)
機能:聴覚
障害されると:聴覚障害
②ウェルニッケ野(左)
機能:感覚性言語
障害されると:ウェルニッケ失語(言語が理解できない)
③側頭連合野(左右)
機能:視覚性認知
右の障害:相貌失認
左の障害:物体失認
5)後頭葉の機能と障害
①視覚野(左右)
機能:視覚
障害されると:半盲
機能局在で、部位によって担っている役割が違っていることがわかりましたね。
では、次に、高次脳機能障害について理解しましょう。
2.高次脳機能障害
1)高次脳機能とは
体性感覚、視覚、聴覚などの一次的な感覚を統合し、解釈・判断する機能のこと。
言語、行為、注意、意思決定などの機能を指す。
2)高次脳機能障害とは
1)の高次脳機能が障害された状態。
失語、失行、失認、記憶障害、注意障害をきたしたもの。
※今回の看護計画「半側無視」は高次脳機能障害の中の、「失認」の中に分類されます。
2.半側無視の対象
・脳血管疾患、脳腫瘍、脳外傷により広範囲の脳損傷がある。
・左右どちらか半分を認識していない
・半分を認識していないためにセルフケアが不十分となっている
・半分を認識していないために転倒や外傷のリスクがある。
脳血管疾患は、2023年のデータで、死因の4位にランキングしています。
全体の7.5%です。(それでも癌の死亡率の1/3以下ですが)
そう考えますと、臨床でも遭遇する機会が多い疾患と言えますね。
ちなみに1位は悪性新生物で24.3%、2位は心疾患で14.7%、3位は老衰で12.1%、4位は脳血管疾患で%、5位は肺炎で4.8%、6位は誤嚥性肺炎で3.8%です。ちなみにこの年はコロナで亡くなった方は2.4%いらっしゃいました。
脱線しましたが、看護計画に戻って、今度は、計画立案していきましょう。
3.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・疾患の自己管理法について述べられる。
・自身の身体機能(機能障害)について、留意点について述べられる。
・生活の中に生活リハビリを取り入れることができる。
・自身のADLに適した環境を整えることができる。
・転倒転落しない。
・失認の特徴を踏まえたケアができるように、
・家族が、患者の疾患や障害について理解し、支援する方法を述べることができる。
看護師を主語にする場合にはつぎのようになるとおもいます。
・脳の障害により生じた機能障害について受容し、障害に応じた生活スタイルが確立できるよう支援する。
・転倒転落を予防する。
・外傷などの身体障害を予防する。
・失認の特徴を踏まえたケアができるように、在宅生活を支える本人・家族への情報提供(教育)を行う。
3.看護計画
1)観察計画《OP》
・バイタルサイン
・意識レベル
・認知障害(長谷川式20点以下、MMSE21点以下)
・疾患:脳血管疾患、脳腫瘍、脳外傷
・疾患の治療経過
・受傷前のADL、IADL
・受傷前の要介護度、現在の要介護度
・脳障害によって現れている症状:失認(半側無視など)、失行、失語
・麻痺の有無、部位、種類(痙性まひ、弛緩性まひ)
・MMT(徒手筋力テスト)
・関節可動域
・自助具の使用
・歩行状態(小刻み歩行、すり足歩行、突進歩行、小股歩行、痙性歩行、引きずり歩行)
・自力で可能な関節可動域の範囲(どこまで出来て、どこから介助が必要か)
・受傷前と後の認知症高齢者の日常生活自立度(★1)
・受傷前と後の障害高齢者の日常生活自立度(★2)
・同居家族の有無、介護力
・活動・生活範囲(ベッド周囲のみ、室内のみなど)
・着衣(浴衣、パジャマ、洋服)、はきもの(スリッパでないか)
・自宅の環境(手すりやスロープなどでバリアフリーになっているか)
・自宅の寝室(ベッドかふとんか)
・障害(麻痺や失認などの障害)に対する認識
・意欲、活気
・ボディイメージの変化
・消極的言動、無気力、不安
・障害の受容過程の段階:行動や発言に変化が見られるか
・利用できる福祉サービス
・ケアマネージャー、ソーシャルワーカーの存在、関係
(★1)認知症高齢者日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf

(★2)障害高齢者の日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf

2)行動計画《TP》
①転倒予防、外傷予防
・安全・安楽・自立に視点を置いて環境整備をする。
・活動しやすい衣服や履物を選択する。
・健側にドアが来るようにベッドを配置し、人の出入りが認識できるようにする。
・健側から話しかける。その後に患側から話しかける。(突然患側から話しかけると驚く)
(患側からも話しかけることで、見えていないところにも空間があることを認識してもらうことができる)
・見えていないところ、何もないように感じるところにも、物があり障害物があることを認識できるように繰り返し説明しながら学習してもらう。
・健側の指で患側にある物を触れる介助をする。
例えば、患側にあるベッドの柵を触れてもらう、など。
②麻痺側への配慮
・臥床時は、麻痺側が体の下敷きにならないようにする。
・車椅子への移乗時は、麻痺側を必ず腹部に乗せて移乗し、脱臼を防ぐ。
・麻痺側は循環が悪くなるため、定期的に循環や皮膚状態を観察する。
・痛みを感じないので、怪我などにも注意する。
・食事量の低下が見られる場合には、口腔内の様子・腹部症状・食形態・嚥下機能などを評価し、食事量が増えるように調整する。食形態の変更、歯科の介入、補助食品の追加など。
③セルフケアを援助する
・できないセルフケアを見極める。何がどこまで出来るのか、何がどこからできないのか、
どうすればできるようになるかを考える。
・医師、リハビリ職と連携し、必要な自助具を準備する。使用法を理解し、正しく使用する。
正しく使用できているか確認し、適宜声をかける。
・自助具を使用してもできないことに対する手助けをする。全部は手伝わない。
・リハビリ職とも連携し、リハビリでの実施内容、進行状況、生活上の注意などの情報を共有し、療養生活に組み込む。
④障害に対する受容過程を支援する。
・障害への受容ができるまで、過程を見守りながら、過程に応じた援助をする。
障害受容過程:ショック→否認→怒り→逃避→受容(※健康長寿ネットより部分引用)
・気分転換活動を取り入れる。
⑤再発予防を支援する。
・治療計画の中に食事療法、運動療法など組み込まれている場合、在宅でも継続し、再発が予防できるように支援する。
3)教育計画《EP》
①転倒予防、外傷予防のための説明をする。
・環境整備をし、ベッド周りに不必要に物を置かないよう伝える。
・活動しやすい衣服や履物を選択する要説明する。
・健側にドアが来るようにベッドを配置し、人の出入りが認識できるようにすることを説明する。
・健側から話しかける。その後に患側から話しかける。(突然患側から話しかけると驚く)
(患側からも話しかけることで、見えていないところにも空間があることを認識してもらうことができる)
・見えていないところ、何もないように感じるところにも、物があり障害物があることを認識できるように繰り返し説明しながら学習してもらう。慣れるまで繰り返すようにご家族にも協力してもらう。
・健側の指で患側にある物を触れる介助をするように、ご家族に方法を説明する。
例えば、患側にあるベッドの柵を触れてもらう、など。方法をご家族にお伝えする。
②麻痺側への配慮の仕方を説明する。
・臥床時は、麻痺側が体の下敷きにならないようにする。
・車椅子への移乗時は、麻痺側を必ず腹部に乗せて移乗し、脱臼を防ぐ。
・麻痺側は循環が悪くなるため、定期的に循環や皮膚状態を観察する。
・痛みを感じないので、怪我などにも注意する。
・食事中のむせ込みや食べにくさがあったらすぐに相談するように説明する。
③できないセルフケアを援助させてもらうことを説明する。
・自助具を使用してもできないことに対する手助けをする。全部は手伝わない。事を伝える。
また、ご家族に対しても同様の説明をし、自分で出来ることを行うことが、ADL維持につながることを理解してもらう。
④障害に対する受容過程について説明する。
・在宅での療養生活を支えるご家族に対し、障害への受容ができるまでの過程を説明し、見守りながら、過程に応じた援助をするように説明する。
障害受容過程:ショック→否認→怒り→逃避→受容(※健康長寿ネットより部分引用)
・ご家族でも対応できない場合には、相談するように伝える。
⑤再発予防のための治療計画について説明する。
・治療計画の中に食事療法、運動療法など組み込まれている場合、在宅でも継続し、再発が予防できるように支援する。
・内服薬は勝手に中断しないように、用法用量を守って内服するように説明する。
⑥その他
・困ったことがあれば、ナースコールをするように説明する。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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