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非効果的脳組織循環リスク状態(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は「非効果的脳組織循環リスク状態」について考えていきます。
非効果的脳組織循環リスクとは、脳の血流が減少することです。
脳血流を減少させる疾患はいくつかありますね。
脳動脈の狭窄、脳動脈奇形、脳動脈の閉塞、脳内の占拠性病変、心疾患による拍出量減少などがあります。
その中でも脳血管疾患は死因でも上位に来ています。
私が学生だった頃は3位でしたが、2020年の統計では、4位です。
ちなみに2020年の1位は悪性新生物(27.6%)、2位は心疾患(15%)、3位は老衰、4位が今回扱う脳血管疾患です。
死因で上位に来ているものは、臨床でもよくお見かけします。
脳血管疾患のおさらいからしていきましょう。
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1.脳血管疾患
1)概念
脳血管の閉塞・破綻により、急速に神経症状が発現した状態。
虚血性脳血管障害としては脳梗塞がある。
出血性脳血管障害としては脳出血、くも膜下出血がある。
2)原因・リスクファクター
・加齢
・男性
・高血圧
・脂質異常症
・糖尿病
・非弁膜症性心房細動
・高尿酸血症
・血液系の異常(DIC、血小板増多)
・喫煙
・大量飲酒
・肥満
・寒冷
3)症状
・運動障害
・感覚障害
・構音障害
・高次脳機能障害(失語・失認)
・意識障害:脳浮腫、脳ヘルニア徴候
・視野障害
・嘔気・嘔吐
・偏視
4)検査
(1)脳梗塞
・MRI(脳梗塞超急性期は拡散強調画像で高信号)
・CT(急性期以降で低吸収域)
・CTA・MRA(血管の狭窄や閉塞)
(2)脳出血
・CT(高吸収域)
5)治療
(1)脳梗塞
①超急性期(受傷6時間以内):
血栓溶解療法(rt-PA)、脳保護剤(エダラボン)、抗脳浮腫療法(グリセロール)、抗血小板療法、血管内治療
※ラクナ梗塞では血管内治療・グリセロールの使用をしない
②慢性期:
・アテローム性脳梗塞:危険因子の管理、抗血小板療法、外科治療
・心原性脳梗塞:抗凝固療法
・ラクナ梗塞:危険因子の管理、抗血小板療法、血圧コントロール
2.非効果的脳組織循環リスク状態の対象
・出血傾向
・DIC
・血管障害
・脳腫瘍
・脳出血
・くも膜下出血
・脳梗塞
・アテローム血栓性脳梗塞
・心原性脳塞栓症
・ラクナ梗塞
・動脈硬化
動脈硬化をきたす疾患:糖尿病、脂質異常症
・脳動脈奇形
・一過性脳虚血発作
・一回心拍出量減少する心疾患:拡張型心筋症、洞不全症候群、心筋梗塞
・血栓(菌塊)ができる心疾患:感染性心内膜炎 ※抜歯後に多い
・不整脈:心房細動(血栓ができ脳に飛ぶ)
・頚動脈狭窄
3.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・脳血管疾患について理解できる。
・ACT FASTについて理解できる。
・必要時は生活習慣を見直すことができる。
・医師の処方薬を用法容量通りに服用できる。
看護師を主語にする場合にはつぎのようになるとおもいます。
・バイタルサイン、モニターで異常の早期発見に努める。
・TIAの患者さんには早期発見のための指導をする(ACT FASTに沿って、症状が出たらすぐに受診し、早期治療を受けてもらうことの必要性を理解してもらう。)
・再発防止ための生活習慣改善に導くことができる。
・検査や血管内治療への不安を傾聴し、不安の緩和に務める。
・不快症状の緩和に務める。
・受傷によりできなくなったセルフケアを補う。
・麻痺などのボディイメージ変化に対する受容の過程を見守る。また、ライフスタイル変化への適応のための助言を行う。
・障害として残った場合には、ソーシャルワーカー、ケアマネージャーに相談し、必要なサービスが受けられるように調整する。
4.看護計画
1)観察計画《OP》
・年齢、性別
・既往歴、現病歴
・生活習慣:油や糖を多く摂取する生活、喫煙、過度な飲酒や毎日の飲酒
・体重、肥満度
・バイタルサイン
・血圧、脈圧、左右差
・心拍数(徐拍、頻拍)、脈拍数(徐脈、頻脈)、心拍と脈拍の差
・SPO2
・画像検査
・MRI
・MRA・CTA
・CT
・身体所見、神経症状
・麻痺(部位どこに、範囲どこからどこまで、程度どのくらいうごかせる)
:運動麻痺、感覚麻痺
・偏視
・悪心嘔吐
・意識障害、失神
・神経反射障害
・自覚症状:頭痛、悪心、めまい、暗転
・イベント:抜歯(心房で菌塊を作る可能性)、術後(下肢DVT可能性あり弾スト着用)
・静脈血データ
・PLT(血小板)、PT(プロトロンビン時間)、APTT(部分トロンボプラスチン)
・血糖:GLU、HbA1C
・中性脂肪、総コレステロール、HDL、LDL
・出血傾向を示す症状
・出血、点状出血、紫斑、血尿、血便、止血困難
・高血圧を示す症状
・鼻出血、血圧上昇など
・心電図
・不整脈(心房細動)
・内服薬(6Rに添ってみてみる。どのようなものを飲んでいて、どのようなリスクがあるか確認)
・チアノーゼ、抹消冷感
・治療計画
・CTAを行う際には造影剤同意書の確認、ショック既往の確認
※MRAは造影剤がなくても撮影できる
・MRI、MRAを行う場合には、禁止事項を確認する
(ペースメーカー、脳動脈クリップ、体内の金属、アートメイク)
・術前検査でのリスク確認
・(本人または家族)同意書の確認:検査同意、麻酔同意、手術同意、抑制同意など
・DNARの確認
・術前、術中、術後の経過
・バイタルサイン
・出血量、排液量、尿量
・挿入物
・モニタ異常値の有無(ECG、SPO2、ETCO2、P、BP)
・酸素投与
・投与デバイス、投与量(安静時・労作時)、SPO2、血ガスデータ、意識状態
・酸素ボンベの使用状況、本人が交換できるか
・循環動態の指標となる数値や症状
・チアノーゼ
・尿量減少、
・湿性咳嗽
・喀痰:量、性状(色、粘稠度)
・水分出納バランス
・内服薬
・認知障害、コンプライアンス
2)行動計画《TP》
・安全・安楽・自立に配慮したケアを行う。
・チューブ類を整理し、屈曲や抜去が起こらないようにする。
・安静度を守れるように環境を整える。
・入院時にタバコ、火気類を預かる。(持ってきている場合には、院内に持ち込まないように本人、家族に説明し、持ち帰ってもらう)
・内服薬の介助・管理をする。
・検査や術前検査の準備を行う。クリニカルパスがあれば、パスに沿って、シャワーや剃毛など行う。
・術前や検査前に休薬が必要な薬は、指示書で確認し、抜薬する。
・術後ベッドを作成する。酸素、モニター、電気毛布、フットポンプ、点滴棒、シリンジポンプ、輸液ポンプなど
・やむを得ず抑制をする場合には、勤務帯ごとに抑制による皮膚トラブルなどがないか確認する。また、毎日、抑制の必要性を評価し、外せる場合には速やかに外す。
・人工呼吸器使用中は、設定値、実測値をダブルチェックする。回路の破損を確認する。加湿の蒸留水の量を確認する。挿管チューブの挿入長・カフを確認する。挿管チューブにテンションがかからないように固定する。
・人工呼吸器使用に伴う鎮静を行っている場合には鎮静スケールによる評価を行う。スケールの指示に従い、適宜鎮静剤の量を調整する。モニターの値を確認する。異常値があればリーダーと主治医へ報告する。
・挿管チューブ挿入中は、マウスケアを2人で行う。固定による皮膚トラブルを観察する。
・シリンジポンプの使用法、交換手順を再確認し、フリーフローに注意する。
・酸素使用中は、酸素の投与デバイス・投与量・意識状態を確認する。酸素が確実に投与されているか、ルートをたどって確認する。引っ張らないように環境整備を行う。
・ボンベの残量を確認し、残量が少ない場合には交換する。自己管理をしている患者さんでも、使用時に声をかけ量を確認する(ときどき開栓を忘れたまま歩いていることがある)。
・医師の指示に従い、決められた時間に尿量の測定を行う。CVP測定、インアウトバランスを確認し、記録する。
・良肢位保持のための他動運動(関節可動域運動)を行う。
・苦痛症状がないか確認し、苦痛の緩和に務める。不安があれば傾聴し、不安の軽減に努める。
・神経症状で、清潔ケアや食事などの必要なことが自身でできない場合には、援助する。
・受傷によりできなくなったセルフケアを補う。
・麻痺などのボディイメージ変化に対する受容の過程を見守る。また、ライフスタイル変化への適応のための助言を行う。
・障害として残った場合には、ソーシャルワーカー、ケアマネージャーに相談し、必要なサービスが受けられるように調整する。
3)教育計画《EP》
・「ACT FAST」★1について説明する。
・自覚症状(疼痛、動悸、息切れなど)があったらすぐに知らせるようにお願いする。
・痛みは我慢せず、知らせるように説明する。必要に応じて鎮痛薬が使用できることを説明する。
・治療計画の目的、目標、治療経過について説明する。
・治療上の守ってもらいたい事を説明する。
・治療計画上で休薬や禁煙など自身での管理が必要な項目について説明する。
・生活習慣改善の必要性がある場合には、医師、栄養士、理学療法士の方針を確認し、方針に沿った対応や説明をする。
・造影検査、手術、麻酔、抑制の必要がある場合には、説明し同意書を記入して頂く(基本的には医師が行う)。
・抑制の開始時には、ご家族に、理由・部位・使用時間(3要件)を説明する。
・CTAを行う際には造影剤同意書の確認、ショック既往の確認
・MRI、MRAを行う場合には、禁止事項を確認し、シップや入れ歯、指輪など外せるものは外してもらう。
・術前検査でのリスク確認
・術前、術中、術後の経過の理解度を確認。必要に応じて再度説明を行ったり、医師へ依頼する。
・検査や手術に向けての不安を傾聴する。経過を説明し、必要に応じて対処が出来ることを説明する。
・チューブ類の抜去に伴う危険について説明し、抜去が起こらないような療養方法について説明する。
・酸素使用時は火気厳禁であることを説明する。
・酸素ボンベへの接続、使用法を説明する。
・自宅で酸素を使用する場合、火気厳禁で、最低でも火気より2mは離れる必要があると説明する。
・内服治療では、医師の指示に従い、用法用量・期間を守る必要性を説明する。
・タバコ、火気類を院内に持ち込まないように本人、家族に説明する。
・麻痺などのボディイメージ変化に対する受容の過程を見守る。また、ライフスタイル変化への適応のための助言を行う。
・障害として残った場合には、ソーシャルワーカー、ケアマネージャーに相談し、必要なサービスが受けられるように調整する。
★1 ACT FAST(アクト ファスト)とは
米国脳卒中協会の示す、脳卒中早期発見のための指標です(脳卒中とは、脳梗塞と脳出血のこと)。
一過性脳虚血発作 の後、3ヶ月以内に 脳梗塞 を起こす人は10-15%と言われています。
一過性脳虚血発作を起こした人は、次の症状が出たら、早期に受診するひつようがあります。
ACTはアクションのことで、「行動」する。
「F」はFace
顔の麻痺の確認「イーと言ってみてください」と聞いてみる。
口角が上がらないようなら、麻痺がある。
「A」はArm
腕の麻痺の確認
「目を閉じて手のひらを上にして肩まで上げたらそのまま維持してください」
と聞いてみる。腕が降りてきてしまうようなら麻痺がある。
「S」はSpeech
構音障害の確認
声が出ない、うまく発語できていない場合は麻痺の可能性がある。
「T」はTime
時間の確認、記録
これまでの F顔面麻痺 A手の麻痺 S構音障害を認めたら、
それがいつからなのかを記録しておく。
※脳梗塞の治療は発症からの時間が重要です。早期に発見できれば血栓溶解療法の適応となります(前例対象ではありません)。
そして、すぐに外来を受診してください。
最後までお付き合い頂きありがとうございました。
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