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車椅子可動性障害(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は車椅子可動性障害について考えていきます。
車椅子可動性障害では、車いすの自力操作が困難な場合に立案していきます。
車椅子は電動車いすも含みます。
NANDAの診断では、以前は「車椅子移動障害」でしたが、2021年版では「車椅子可動性障害」と変更になっています。
これまでの内容では、車椅子に乗車して「移動する」ことに主眼が置かれていましたが、「可動性障害」に変更になったことで、「車椅子に乗車しながら作業をする」ことにも対象が拡大しています。
そして「ハイリスク群」と「関連する状態」の項目が追加となったことでよりイメージしやすく変化しています。
お手元のNANDAを見て確認してみてくださいね。
1.車椅子可動性障害の適応
1)車椅子の管理面での障害
・電動車椅子の充電器操作が困難
・車椅子を広げる・閉じる行動が困難
・認知機能の変化・低下:長谷川式20点以下、MMSE21点以下
2)車椅子移乗での障害
・認知機能の変化・低下:長谷川式20点以下、MMSE21点以下
・認知症高齢者の日常生活自立度(★2)
・移乗手順がわからない
・視力障害
・ADLの程度
・障害高齢者の日常生活自立度(★3)
・筋力低下
・筋骨格系の障害(骨折、外傷)
・車椅子操作の方法がわからない、知らない
・電動車椅子の運転モード選択、速度選択
・車椅子の操作がうまくできない(やり方はわかるけれども操作できない)
・神経障害、麻痺、しびれ
・疼痛
・肥満
・車椅子移乗での転倒転落歴がある
※転倒転落アセスメントスコアⅡ以上は注意が必要(★1)
3)車椅子操作での障害
・認知機能の変化・低下:長谷川式20点以下、MMSE21点以下
・意識障害(せん妄、不穏)
・気分障害、集中力低下、幻覚
・視力障害
・筋力低下
・筋骨格系の障害(骨折、外傷)
・車椅子操作の方法がわからない、知らない
・電動車椅子の運転モード選択、速度選択
・車椅子の操作がうまくできない(やり方はわかるけれども操作できない)
・神経障害、麻痺、しびれ
・疼痛
・肥満
・環境(段差が多い、車椅子を操作するスペースがない、でこぼこしているなど)
4)車椅子を利用した生活への影響がでる障害
・定期的な除圧ができない(座りっぱなしなり褥瘡のリスクがある)
・車椅子に乗ったまま物を取ることができない
・物を運びながら車椅子操作ができない
(★1) 転倒転落アセスメントスコア
・転倒転落アセスメントスコア(危険度Ⅱ以上)
→この場合は「転倒転落リスク状態」も立案しましょう。
※日本医師会の転倒転落防止マニュアル参照して作成しています。
詳しく知りたい方はhttps://www.med.or.jp/anzen/manual/pdf/score.pdfへ。
※スコアは以下のように評価します。
危険度Ⅰ:1~9点 転倒・転落する可能性がある
Ⅱ:10 ~ 19 点 転倒・転落を起こしやすい
Ⅲ:20 点以上 転倒・転落を良く起こす

(★2)認知症高齢者日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf
ランクⅡ.Ⅲ.Ⅳ.Mでは介助が必要です。

(★3)障害高齢者の日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf
ランクA.B.Cでは介助が必要です。

2.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・車椅子へ(から)安全に移乗することができる。
・車椅子の操作を習得できる。
・車椅子の使用を想定した生活環境を整えることができる。
・車椅子の使用時には適時に除圧できる。
看護師を主語にする場合にはつぎのようになるとおもいます。
・車椅子を管理するための知識習得を支援する(患者、家族)
・車椅子への安全な移乗を支援する。
・車椅子の安全な操作方法を習得してもらうための支援をする。
・車椅子でも生活できるよう環境整備を行う(入院中、在宅)。
・疼痛などの症状を緩和しながら車椅子を利用した生活ができるように支援する。
4.看護計画
1)観察計画《OP》
1)ご自身(ご家族)で車椅子の管理ができるかどうか
・電動車椅子の充電器操作の可否
・車椅子準備の可否(車椅子を広げる・閉じる行動の可否)
・認知機能の変化・低下:長谷川式20点以下、MMSE21点以下
・認知症高齢者の日常生活自立度(★2)
2)車椅子移乗や操作での障害の有無
・移乗手順の理解度
・実際の移乗手順(方法、手順について安定性、安全性を確認する)
・車椅子移乗での転倒転落歴がある
※転倒転落アセスメントスコアⅡ以上(★1)
・視力障害(眼鏡の使用の有無など)
・筋力低下
・ADLの程度
・障害高齢者の日常生活自立度(★3)
・筋骨格系の障害(骨折、外傷)
・車椅子操作の理解度
・電動車椅子操作の理解度(運転モード選択、速度選択)
・車椅子の操作(やり方はわかっているようだができない場合には何が障壁となっている原因を特定)
・神経障害、麻痺、しびれ
・疼痛(部位、疼痛の種類、疼痛スケール、鎮痛薬使用の有無)
・肥満
3)車椅子を利用した生活が可能であるかどうか
・定期的な除圧ができるか(座りっぱなしなり褥瘡のリスクがある)
・車椅子に乗ったまま物を取ることができるか
・物を運びながら車椅子操作ができるか
2) 行動計画《TP》
・安全・安楽・自立に配慮したケアを行う。
・ADLに合わせた移乗介助を行う。
・自立を促すために、環境を整える(柵、バー、ADLに合った車椅子のチョイス)
・家族が介助できるような方法で、本人に移乗動作を習得してもらう。
・転倒歴がある場合には、原因を除去し、安全に移乗できるように整える。
・麻痺側に注意して移乗する。
・チューブ類を整理し、移乗や移動に際して屈曲や抜去が起こらないようにする。
・電動車椅子を適切に管理する。
・バッテリーの充電、装着、作動方法を本人や家族に実演しながら伝授する。
・たたんである車椅子の開き方、空気の入れ方など、保管から使用時までの方法を実演しながら伝授する。
・車椅子を使用する際の注意点を実演しながら説明する。
・ブレーキを必ずかける。
・フットレストに足が乗っているかを必ず確認する。
・アームレスト上、またはアームレスト内に腕が収まっていることを確認する。
・長時間座ったままとせず、適宜除圧をし(できたら毎時間、こまめに)
褥瘡ができないようにする。
・車椅子での日常生活が可能となるように自宅の環境を整えてもらう(バリアフリー)。
ソーシャルワーカー、ケアマネージャーに福祉用具や日常生活用具の調整を依頼する。
・疼痛のある場合には医師の指示書に従い、鎮痛薬を投与する。
・ADL維持、良肢位保持のため、ROM訓練をする。
・不安があれば傾聴し、不安の軽減に努める。
・疾患や治療によりできなくなったセルフケアを補う。
3)教育計画《EP》
・治療計画の目的、目標を説明する。
・疼痛のある場合にはナースコールで知らせるようにお願いする。
・電動車椅子を適切に管理できるよう方法を説明する。
・バッテリーの充電、装着、作動方法
・たたんである車椅子の開き方、空気の入れ方など、保管から使用時までの方法を説明する。
・車椅子を使用する際の注意点を説明する。
・ブレーキを必ずかける。
・フットレストに足が乗っているかを必ず確認する。
・アームレスト上、またはアームレスト内に腕が収まっていることを確認する。
・長時間座ったままとせず、適宜除圧をし(できたら毎時間、こまめに)
褥瘡ができないようにする。
・わからないことはそのままにせず、質問するように説明する。

