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床上可動性障害(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は床上可動性障害について考えていきます。以前は「床上移動障害」の診断でした。
床上可動性障害は、ベッド上での体位変換(仰臥位、長座位、伏臥位、端座位、寝返り)が困難場合に立案していきます。
1.床上移動障害の適応
・要介護3・4・5
・認知症高齢者の日常生活自立度でⅢ・Ⅳ・M(★1)
・障害高齢者の日常生活自立度でランクA2・B・C(★2)
・認知機能の低下(移動するという言葉の意味がわからない、動作の方法がわからないなど)
・神経筋障害
・筋骨格系の障害
・麻痺
・筋力不足
・サルコペニア(食欲低下・骨折による不動などの原因により筋肉量減少をきたしたもの)
・ロコモティブシンドローム(骨・筋肉・関節・靭帯・腱・神経などの運動器の障害により移動機能が低下した状態)
・フレイル(虚弱:健康と要介護の中間で、社会的フレイル、身体的フレイル、心理的フレイルがある。身体的フレイルにロコモティブシンドロームとサルコペニアは含まれている)
・肥満
・疼痛
・意識レベルの低下
・意識状態を不安定にさせる薬剤
・療養環境、生活環境がADLに適していない
・術後
・急性期
(★1)認知症高齢者日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf

(★2)障害高齢者の日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf

2.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・術後の早期離床ができる。
・ADLが維持・向上できる。
・自力体位変換ができる。
看護師を主語にする場合には以下のようになると思います。
・ADLの維持・向上を目指す。
・術後の早期離床の介助ができる。
・疼痛管理ができる。
・適時に体位変換や除圧を行い、褥瘡を発生させない。
・環境の整備や自助具の使用で、できるだけ自立を促す。
3.看護計画
1)観察計画《OP》
・バイタルサイン
・意識レベル
・認知障害(長谷川式20点以下、MMSE21点以下)
・疾患と疾患の病期
・安静度(ベッド上、室内フリー、病棟フリー、院内フリーなど)
・鎮静剤使用の有無
・術後の経過・日数・安静度
・麻痺の有無、部位
・安静時:疼痛の有無、範囲、部位、疼痛スケール
・体動時:疼痛の有無、範囲、部位、疼痛スケール
・疼痛時の鎮痛剤使用の有無
・MMT(徒手筋力テスト)
・関節可動域
・ADL、IADL(受傷前、受傷後、現在)
・要介護度
・自力で可能な関節可動域の範囲(どこまで出来て、どこから介助が必要か)
・認知症高齢者の日常生活自立度でⅢ・Ⅳ・M(★1)
・障害高齢者の日常生活自立度でランクA2・B・C(★2)
・肥満、BMI=25以上
・着衣(浴衣、パジャマ、洋服)
・自宅の寝室(ベッドかふとんか)
・同居家族の有無、介護力
・意欲、活気
・消極的言動、無気力
・睡眠と活動のバランス
・清潔への意識(不潔となっていないか)
・食欲、食事量、水分摂取量
・皮膚状態、褥瘡の有無
2)行動計画《TP》
・安全・安楽・自立に視点を置いて環境整備をする。
・自身でできることは自分で行ってもらう。そのための見極め(なにがどこまでできるのか)をし、他のスタッフへも申し送り、誰もが同じ介入をする。
・できないことの手助けをする。全部は手伝わない。
・リハビリ職とも連携し、リハビリでの実施内容、進行状況、生活上の注意などの情報を共有し、療養生活に組み込む。
・気分の落ち込みや、抑うつによる体動の減少がある場合には、気分転換につながる介入を行う。
・筋緊張が強い場合には温罨法やマッサージなどで筋緊張を緩和する。
・安全な療養環境を整備する。
・急性期から早期離床に取り組む。
・関節可動域訓練を行う。
・ベッド上でもできるROM訓練を取り入れる。
・日中はトイレまで移動する、食事の際は車椅子に移るなど、筋力維持や生活範囲の拡大につながる介入を行う。
・デイルームなどの皆が集まれるスペースがある場合には、食事の際やその他の時間に、お連れして、お互いにコミュニケーションをとってもらうように計らう。(刺激を与える)
・疼痛などにより活動が制限されている場合には、医師に鎮痛剤の指示をもらい、鎮痛剤の投与をする。
・肥満による体動困難がある場合には、間食の制限など、治療の計画に沿って介入を行う。
・日中活動し、夜間睡眠がとれるようにバランスを整える。朝の日光を取り入れる。
・体交時には、麻痺側を巻き込んだり、下になったままにならないよう気をつける。
・食事量の低下が見られる場合には、口腔内の様子・腹部症状・食形態・嚥下機能などを評価し、食事量が増えるように調整する。食形態の変更、歯科の介入、補助食品の追加など。
・完全に寝たきりの場合には、エアマットの導入を検討する。
・定期的な体位変換・ポジショニングの実施をする。
3)教育計画《EP》
・急性期の早期離床の効果を説明する。
・長期臥床による寝たきりへのリスクを説明する。
・受傷による後遺症で麻痺が残った場合には、麻痺側の扱い(脱臼、血流障害)について説明する。
・車椅子に移乗するときには、麻痺側を体幹の内側に入れてから移乗する。
・体位変換時は、麻痺側を下にする時間は短時間とする。
・体位変換時は、麻痺の腕の位置に注意し、脱臼しないように注意する。
・痛みを感じないので、怪我などにも注意する。
・在宅では、朝起きたら更衣をし、暮らしのメリハリをつけることのメリットをお話する。
・疼痛があるときには我慢せず、ナースコールを押すように説明する。
・内服薬は用法用量を守って内服するように、本人と介護者に説明する。飲み忘れしないような工夫も一緒に考えていく。
・食事にタンパク質を取り入れると筋肉量が維持されてサルコペニアの予防にもつながることを説明する。

