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慢性混乱(看護計画)
いつもご覧頂きありがとうございます。
今回は慢性混乱について考えていきます。
似たような診断に「急性混乱」がありますね。急性混乱は一過性ですが、こちらは一過性ではなく、混乱した状態が3か月以上継続して見られている場合に立案します。
この「混乱」という語句についてもう少し考えてみましょう。
第10版のNANDA-Iでは、「慢性混乱」の定義をこう示しています。
「環境刺激を解釈する能力の低下と知的な思考に必要な能力の低下を特徴とする。
知的能力とパーソナリティが悪化した状態。
不可逆性であったり、長期間であったり、進行性であったりする。
記憶障害、見当識障害、行動障害が出現する。」
この定義の中の「記憶障害、見当識障害」は認知症の中核症状に当てはまりますね。
そして、そのあとの「行動症状」は認知症の周辺症状に当てはまります。
ですから、認知症による中核症状や周辺症状による生活への影響が出ている人が一番に思い当たると思います。
一口に認知症といっても種類がありましたね。また、それ以外にも、認知症のような症状を来す疾患もありますね。
認知症と認知症のような症状を来す疾患が今回の「慢性混乱」の対象となります。
では、まず認知症のおさらいからしていきましょう。
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1.認知症について
1)概念
後天的要因(脳血管疾患、外傷、全身疾患など)により脳に障害を受け、社会生活や職業遂行が困難なレベルにまで認知機能が傷害されたもの。
疫学は65歳以上の15%、85歳以上では40%以上を占める。
2)原因
それぞれの原因により、後から出てくる4つの分類の認知症になる、と考えられている。
①神経変性:
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、進行性核上性麻痺、パーキンソン病、ハンチントン病、大脳皮質基底核変性症
②脳血管障害:
脳血管性認知症
③外傷:
慢性硬膜下血腫、頭部外傷後遺症
④感染:
クロイツフェルトヤコブ病、亜急性硬化症全脳炎、進行性多巣性白質脳症、脳炎・髄膜炎、HIV感染(AIDS脳症)、神経梅毒(進行麻痺)
⑤腫瘍:
脳腫瘍
⑥内分泌・代謝・栄養疾患:
甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、リピドーシス、肝不全、腎不全、ウィルソン病、ペラグラ
⑦ウェルニッケ脳症、アルコール脳症、正常水頭症
3)分類別の症状
アルツハイマー型認知症(65~70%)、レビー小体型認知症(5%)、前頭側頭型認知症(2%)、血管性認知症(20%)がある。
(1)アルツハイマー型認知症(65~70%)
①主な障害部位
側頭葉、頭頂葉
②特徴的な症状
記憶障害、見当識障害、取り繕い反応、モノ取られ妄想、周囲への無関心
③人格変化
晩期に崩壊
④病識
なし(初期にはある)
⑤経過
緩徐に進行
⑥基礎疾患
とくになし
⑦男女比
女性に多い
⑧CT所見
海馬の萎縮→大脳皮質の全般的萎縮
⑨病理所見
神経原繊維変化、老人班
⑩蓄積蛋白
アミロイドβ
(2)レビー小体型認知症(5%)
①主な障害部位
後頭葉
②特徴的な症状
幻想、妄想、パーキンソニズム、抗精神病薬に過敏性
③人格変化
晩期に崩壊
④病識
なし(初期にはあり)
⑤経過
緩徐に進行
⑥基礎疾患
とくになし
⑦男女比
男性に多い
⑧CT所見
海馬の萎縮は比較的経度
⑨病理所見
レビー小体
⑩蓄積蛋白
α-シヌクレイン
(3)前頭側頭型認知症(PICK病を含む)(2%)
①主な障害部位
前頭葉、側頭葉
②特徴的な症状
・人格変化
・抑制困難:万引き、信号無視、性的脱抑制
・感情鈍麻:無表情、多幸感
・自発性低下:無関心
・常同行動:
・同じところを周回、
・同じものを食べ続ける、
・反響言語(オウム返し)
・滞続言語(何を聞かれても内容と無関係であっても同じ返答を繰り返す)
③人格変化
早期に崩壊
④病識
なし
⑤経過
緩徐に進行
⑥基礎疾患
特になし
⑦男女比
特になし
⑧CT所見
前頭葉、側頭葉の血流と代謝の低下
⑨病理所見
PICK球
⑩蓄積蛋白
タウ蛋白、TDP-43
(4)血管性認知症(20%)
①主な障害部位
様々な部位に出現。前頭葉が多い
②特徴的な症状
運動障害、歩行障害、感覚障害、情動失禁、まだら認知症
③人格変化
保たれる
④病識
あり
⑤経過
段階的に進行する
⑥基礎疾患
糖尿病、心疾患(心房細動など)、高血圧
⑦男女比
男性に多い
⑧CT所見
脳実質内に脳梗塞巣
⑨病理所見
梗塞部位に応じた血流、代謝低下
⑩蓄積蛋白
なし
ひとことで認知症と言っても、分類により様々な症状をきたすことがわかりましたね。
臨床でも、認知症全体の65~70%を占めるアルツハイマー型の症状が出ている方を(見当識障害や短期記憶障害)よく見かけます。
「認知症の人ってホントに何度言っても聞かないから困る」なんて言っている人がいますが、患者さん本人は悪気があってそうしているわけではありません。
何度言われても忘れてしまうこともありますし、何度言われても大事なものを探すためにウロウロしたりしてしまいます。
そういう症状が出てしまう病気なのであって、その人が迷惑をかけてやろうと故意にしているわけではないことを認識し、不安を解消してあげるためのケアを考えてみましょう。
2.認知症への介入
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1)認知症の進行予防
厚生労働省「認知症のケア」資料より一部引用させていただきます。
https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/000701055.pdf
進行を予防する(アルツハイマー型・レビー小体型・前頭側頭型の場合は緩徐に進行する疾患なので完全に予防することはできない)ためには、「危険因子」を減らしながら、「緩和因子」を強化していきます。
「危険因子」は認知症を進行させる因子です。
「緩和因子」は認知症の進行を緩和させる因子です。
(1)危険因子
・疾患:高血圧、脂質異常症、肥満、糖尿病、うつ病
・生活習慣:過脂肪食、高カロリー食、運動不足、喫煙
・その他:引きこもり
(2)緩和因子
・生活習慣:運動、対人交流
・食習慣:魚、果物、野菜
・趣味:文章の読み書き、ゲーム
2)認知症の治療
(1)中核症状に対する治療
・薬物療法で進行を遅らせる:抗認知症薬(ドネペジル、リバスチグミン、メマンチン)
・脳血管型認知症の場合は血圧管理、抗血小板療養
・原疾患の治療(糖尿病、脂質異常症)
(2)周辺症状に対する治療
・運動療法
・レクリエーション
・ケアの工夫
・薬物療法
3)認知症の人のために家族ができる10か条(「認知症の人と家族の会、2008より引用)
ご家族の方がどのように認知症の患者さんと向き合えば良いかが10か条としてわかりやすくまとめられています。
1. 見逃すな「あれ、何かおかしい?」は、大事なサイン。
2. 早めに受診を。治る認知症もある。
3. 知は力。認知症の正しい知識を身につけよう。
4. 介護保険など、サービスを積極的に利用しよう。
5. サービスの質を見分ける目を持とう。
6. 経験者は知恵の宝庫。いつでも気軽に相談を。
7. 今できることを知り、それを大切に。
8. 恥じず、隠さず。ネットワークを広げよう。
9. 自分も大切に、介護以外の時間を持とう。
10. 往年のその人らしい日々を。
4)認知症の方への接し方
①放っておくのではなく見守る。
少し離れたところから、危なくないかを見守る
②わかる言葉で簡潔に話す。
一度にたくさん伝えず、一つ一つ伝える。
③プライドを傷つけない。
間違った言動をしても、叱ったり、無理に訂正しない。
④スキンシップを適切に取る。
手を握る、温かい眼差しで見守るなど、安心感を与える。
⑤相手のペースを守る。
急がせると興奮するのでゆっくり待つ。
⑥孤独にさせない
声かけをし、買い物などの行動を共にする。
⑦急な環境の変化を避ける。
どうしても変えなければならない場合は、少しずつ慣らす。
⑧身だしなみを整えるケアを取り入れる。
症状の進行とともに無気力や無関心になり、更衣や洗顔をしなくなる。
それは認知症を促進させてしまう因子なので、毎日身だしなみを整えるようにケアをする。
3.看護診断「慢性混乱」の対象
・認知症
・クロイツフェルトヤコブ病
・脳腫瘍
・中枢神経系疾患
・精神疾患
・発達障害
・代謝障害
4.目標
目標は患者さんを主語にして立てます。
・安心して治療を受けられる。
・安心した環境で療養生活を送ることができる。
・不安を表出できる。
・服薬の自己管理ができる。
・定期的に受診できる。
5.看護計画
1)観察計画(OP)
(1)せん妄の原因となるもの
①準備因子(もともと素因がある)
・認知症
・脳血管疾患(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)
・脳腫瘍
・頭部外傷
・高血圧
・糖尿病
・高齢
②促進因子(せん妄を誘引する間接的な原因となる)
・入院
・ICU管理
・手術
・疼痛
・持続輸液・尿道カテーテルなどのくだ類
・暗所
・睡眠不足
・身体拘束
・不安
③直接因子(せん妄を引き起こす直接的な原因となる)
・薬剤(睡眠薬など)
・アルコール
・代謝異常(甲状腺機能異常、副腎皮質機能異常、下垂体機能異常)
・電解質異常
・低酸素血症
・高炭酸ガス血症
・感染症
・脱水
・肝機能障害
・腎機能障害
(2)身体状況
・バイタルサイン
・意識レベル、記憶障害、見当識障害
・せん妄歴
・幻覚、妄想
・認知障害(長谷川式20点以下、MMSE21点以下)
・疾患:脳血管疾患、脳腫瘍、脳外傷、精神疾患、代謝異常
・疾患の治療経過
・治療内容
・現在の療養環境(ICU、ナースステーションからの距離、多床室)
・疼痛の部位、程度、鎮痛剤の使用
・ADL、IADL
・要介護度
・睡眠と活動のバランス
・不眠(音や頻尿、環境変化など)
・活動・生活範囲(ベッド周囲のみ、室内のみなど)
・消極的言動、無気力、不安
・面会の可否
・馴染みの人がいるかどうか(医師、看護師、リハビリ、SWなど)
・家族構成・キーパーソン
・家族との関係
・主介護者との関係
・喪失体験
・医療従事者・福祉職との関係
・社会参加・社会とのつながり・孤立
2)行動計画《TP》
原因と誘因の除去を行う。
①環境整備
・静かで明るすぎない、落ち着いた環境にする。(モニターの音でせん妄になる場合もある)
・自己抜去や柵の乗り越えなどで目が離せない場合には、落ち着くまでナースステーションからの距離が近い部屋に移動する。
・馴染みのもの(時計や小物等)を持ってきてもらい、配置する。
・面会でご家族に会ってもらう機会を設ける。
・できる限り、こまめに訪室する(覗くだけでもいいのでほったらかしにしない)。
②原因除去
・直接原因となっている疾患がある場合には、治療計画に沿って、医師の指示の下、食事の介助、投薬などを行う。
・抑制などが原因となっている場合には、抑制の妥当性を検討する。
・点滴、バルンカテーテルなどの管類は見えないように工夫する(裾を通す、包帯を巻くなど)
・寄り添ったり傾聴したりして、関係づくりをする。
安心できる環境であることを理解してもらう。
叱ったり、説教したりするとかえって不信感や恐怖となり、逆効果なのでしない。
・痛みがあれば医師の指示に従い、鎮痛薬の投与などをする。
③昼夜のバランス
・昼間はできるだけ車椅子に載せたり、テレビを見せたりして覚醒を促し、夜間眠れるようにする。
・気分転換活動を取り入れる。
④記録をする
・いつ、どの様なせん妄が起きて、どのように対処したかを記録しておく。
(どの対処が効果的であったか評価できる。)
3)教育計画《EP》
忘れてしまって不安になる、何度も確認したい、相手に伝えたい(伝えたことは忘れてしまう)といった特徴に合わせて、不安を増強しないような関わり方(特にコミュニケーション)をする。
①高齢者の身体的特徴(運動・感覚機能の低下、難聴、視力障害)に応じたかかわり方をする。
・相手が認識しやすい立ち位置に立つ
・安定した体勢(麻痺や筋力低下で立位が不安定な時には座ってもらうなどの配慮)
・はっきりとした声、聞こえやすい大きさで話す。
・表情に留意する(痛みなどの苦痛がないかを確認しながら)
・声の調子に気をつけてゆっくりと話す(落ち着いて)
・身振りや手振りも織り交ぜながら話す
②高齢者の心理的特徴(社会からの孤立、記憶力低下による不安、恐れ)に応じたかかわり方をする。
・価値観や考え方習慣を受容する
・自尊心を尊重する(幼児語を使ったり、子ども扱いをしない)
・距離や目線の高さに留意する(不快でない高さや距離)
・相手の表情を確認しながら話しかける(不快に感じている表情でないかなど)
・相手のペースに合わせ、気持ちを汲み取る(表情やうなずきなど)
・相手を置き去りにしない
(家族とだけ話をしたり、自分の業務に夢中になって利用者が目に入っていないなど)
③認知症の症状を踏まえたかかわり方をする。
・名前を呼んでから話しかける
・短文でわかりやすい表現を使う
・一つひとつの動作に対して声かけをする
・声かけの内容は、他人に聞かれたくない内容ではないか留意する
・利用者の言葉や行動だけに反応しない
(本当は何を望んでいるのか等、本音・真意を酌み取る)
・利用者のシグナルを見逃さない(行動や言動への目配り、気配り、気づき)
・服装などの身だしなみや清潔感(視覚での安心感)
・周りの人的環境を確認する(他の職員などが走り回っている状況ではないか)
④認知症の症状を踏まえた生活環境の整備を行う。
・対人距離に留意する
(密接距離:とても親しい関係の距離=O~45cm、固体距離:歩み寄りで関係を構築できる距離=45~120cm)
・温度や明るさ、騒音などに留意する(視覚や聴覚などの感覚器での認識に関係)
・整理整頓、清潔を保つ(心理的な安心感)
・治療の経過や内容について説明する。
・退院の目安について説明する。
・昼夜、日時、曜日について理解できるよう説明する。
・場所について理解できるよう説明する。
・安心できる場所であることを説明する。
・ご飯をちゃんと食べて、水分も適度に取るように伝える。
・活動と休息のバランスについて説明する。
・痛みがあれば我慢しないで知らせていいことを伝える。
・わからないこと、不安なことは相談できることを伝える。
・ご家族の面会時間について説明する。
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