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皮膚統合性障害リスク・褥瘡リスク(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は褥瘡のリスクについて考えていきます。
看護計画を立案するとき、立案する時点で、まだ褥瘡ができていない人に対しては「褥瘡リスク(皮膚統合性障害リスク状態)」を、すでにできてしまっている人に対しては「褥瘡(皮膚統合性障害)」を立案しましょう。
褥瘡のリスクをスクリーニングするためのスケールがあります。スケールに当てはめて考えることで系統的に漏れなくリスクを抽出することができます。
便利な世の中ですね~。
また、褥瘡がすでにできてしまっている人に対しても、このスケールに当てはめて考えてみると、どの部位で問題があって褥瘡ができてしまったのかを洗い出すことができます。問題点が抽出されれば、治療と並行してその問題を解決すれば褥瘡も治っていきます。
まず、褥瘡とはなにかと言う定義をおさらいし、スケールでリスクを抽出することにしましょう。
お急ぎの方は下のジャンプより進んでください。
1.褥瘡について
一般社団法人日本褥瘡学会の定義を見てみましょう。
URLは次の通りです。
褥瘡にまつわる様々な情報が掲載されています。気になる方はチェックしてみてくださいね。
https://www.jspu.org/general/about/
1)褥瘡の定義
「褥瘡とは、寝たきりなどによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなったり滞ることで、皮膚の一部が赤い色味をおびたり、ただれたり、傷ができてしまうことです。一般的に「床ずれ」ともいわれています。」と紹介されています。
2)褥瘡の好発部位
骨突出部によくできます。
・仰臥位のとき
後頭部、肩甲骨、仙骨部、踵部
・側臥位のとき
耳介部、肩、肘、腸骨部、膝外側(腓骨頭)、外踝
・座位のとき
背部、尾骨、坐骨
2.褥瘡のリスクをスクリーニング(洗い出す)する
看護計画を立案するとき、現状、まだ褥瘡ができていない人に対しては「褥瘡リスク(皮膚統合性障害リスク状態)」を、すでにできてしまっている人に対しては「褥瘡(皮膚統合性障害)」を立案しましょう。
リスクを把握するのにいくつかスケールがあります。
ブレーデンスケール、K式スケール、OHスケールがありますが、その中で日本褥瘡学会推奨度を比較します。
推奨度はA~Dのランクがあり、エビデンスの確実性として機能します。Aが「強(エビデンスが強い)」、Bが「中(エビデンス中程度あり)」、Cが「弱い(エビデンス限定的)」、Dが「とても弱い(エビデンスほとんどなし)」に分類されます。
ブレーデンスケールはB1(中:効果の推定値が推奨を指示する適切さに中程度の革新がある)、K式スケールはC1(弱い:効果の推定値が推奨を支持する適切さに対する確信は限定的である)、OHスケールもC1(弱い:効果の推定値が推奨を支持する適切さに対する確信は限定的である)なので、この中で最もエビデンスの確実性の強いブレーデンスケールを紹介します。
ブレーデンスケールでは、知覚認知、皮膚湿潤、活動性、可動性、栄養、摩擦とずれの6つの視点でスコアリングしていきます。
その合計点が14点以下(在宅では17点以下)のとき、褥瘡の高リスクと判断し、計画を立案していきます。
このスケールを見ると、何が褥瘡を起こすリスクなのかを簡単に把握できて便利ですね。

3.褥瘡リスクの対象者
・ブレーデンスケール(成人17点以下)、ブレーデンQスケール(小児16点以下)
・ASA(米国麻酔科学会)のPS分類(全身状態分類):2度以上(ASAのPS分類については下記✩2参照)☆2ASA
・るい痩、栄養状態の低下、骨突出部が目立つ
・肥満、動脈硬化
・喫煙
・皮膚湿潤状態(おむつ着用)、失禁
・皮膚の菲薄化(浮腫)
・皮膚の弾力の低下(ツルゴール反応低下、脱水)ツルゴール反応については下記✩3参照☆3ツルゴール
・長時間の同一体位、自力体位変換困難
・術中体位や固定、術後の安静
・鎮静剤使用、麻痺、
・整形外科領域の手術後(患肢の免荷や安静、禁忌体位)
・身体拘束
・間違った体位変換の方法、ポジショニング
✩2 ASA-PS (Wikipedia参照)
ASA-PS(ASA physical status)は、アメリカ麻酔科学会(英語版)における全身状態分類である。
全身状態を6クラスに分類しており、手術前のASA-PSと予後は相関するとされる。緊急手術の場合は「E」を併記する。
「褥瘡リスク状態」ではclass2以上を褥瘡ハイリスクと判断している。
・Class1:一般に良好。合併症無し。現在喫煙していない、酒を飲まないか少しだけ飲む。
・Class2:軽度の全身疾患を有するが日常生活動作は正常。現在喫煙している、付き合いで酒をよく飲む、妊娠、肥満(30< BMI <40)、コントロール良好な糖尿病/高血圧、軽度の肺疾患。 ・Class3:高度の全身疾患を有するが運動不可能ではない。コントロール不良の糖尿病/高血圧、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、高度肥満(BMI >40)、活動性の肝炎、アルコール依存または中毒、ペースメーカー、中程度の駆出率(EF)低下、定期的に透析を受けている末期腎不全、60週未満の早産児、3か月以上経過した以下の既往(心筋梗塞、脳血管障害、一過性脳虚血発作(TIA)、冠動脈疾患/ステント留置)
・Class4:生命を脅かす全身疾患を有し、日常生活は不可能。最近(3か月未満)の心筋梗塞、脳血管障害、TIAや冠動脈疾患/ステント留置、進行中の心虚血や重度の弁膜症、重度のEF低下、敗血症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、定期的に透析されていない急性腎不全や末期腎不全
・Class5:瀕死であり手術をしても助かる可能性は少ない。
・Class6:脳死状態の臓器移植ドナー。破裂した腹部/胸部動脈瘤、重症外傷、圧迫所見がある頭蓋内出血、重大な心臓病変または多臓器不全に陥っている腸閉
✩3 ツルゴール反応
脱水などの体液量減少時に使用する。
前腕か胸骨上の皮膚をつまみ上げて離し、2秒以内に皮膚が元の状態に戻れば正常と判断する。2秒より時間が掛かり、皮膚のしわの戻りが遅くなることをハンカチーフサインという。
4.看護目標設定
目標は患者さんを主語に立案します。
・褥瘡を発生させない。
・褥瘡のリスク因子を除去あるいは改善できる。
褥瘡の場合は、自身で動けない方が多く、患者さんを主語にしても患者さん自身が問題を解決するのは困難です。
そのため、看護師を主語にした場合の目標も下に記載しておきます。
・除圧器具、定期的な体位変換、適切なポジショニングを行い、褥瘡の発生を防ぐ。
・栄養バランスを整え、皮膚や筋骨格の健康を図る(るい痩を予防する)。
・皮膚の清潔や皮膚の循環を維持し、皮膚トラブルからの褥瘡発生を防ぐ。
・適切な可動性を確保する。
5.看護計画
1)《OP》観察計画
・自力体動(仰臥位、側臥位、立位、座位)
〈皮膚機能〉
・褥瘡の既往
・皮膚温度
・皮膚感覚
・皮膚弾力性
・皮膚水分量
・皮膚の厚み
・体毛の成長
・異常な色素沈着
・皮膚の病変
・粘膜病変
・瘢痕組織
・皮膚がん
・皮膚剥離
・皮膚落屑
・皮膚蒼白
〈栄養状態〉
・カロリー摂取量
・蛋白摂取量
・脂肪摂取量
・炭水化物摂取量
・繊維摂取量
・ビタミン摂取量
・ミネラル摂取量
・鉄分摂取量
・ナトリウム摂取量
・カルシウム摂取量
・飲水量
・血清アルブミン値
・血清プレアルブミン値
・血清クレアチニン値
・ヘマトクリット値
・ヘモグロビン値
・血清トランスフェリン値
〈皮膚知覚〉
・鋭い刺激の識別
・鈍い刺激の識別
・2点間の識別
・振動の識別
・温度の識別
・圧力の識別
・感覚異常
・感覚喪失
・しびれ
〈循環動態〉
・血圧
・脈圧
・平均血圧
・中心静脈圧
・PaO2
・PaCO2
・酸素飽和度
・尿量
・毛細血管充満時間
・血管の雑音
・心雑音
・末梢の浮腫
・頚静脈の怒張
・腹水
・疲労
・体重増加
・皮膚温低下
・感覚異常
・失神
・圧痕浮腫
・下肢の潰瘍
〈加齢変化〉
・体液量の減少
・細胞の減少
・骨密度
・心拍出量
・皮膚の弾力性
・筋力
・血圧
・肺活量
・膀胱筋緊満
・基礎代謝率
・脂肪分布パターン
・関節可動域
〈体液の状態・バランス〉
・下痢、嘔吐
〈浮腫の程度〉
・眼窩周囲の浮腫
・四肢の浮腫
・仙骨の浮腫
・腹水
・体重増加
・全身性浮腫
・肺雑音(水泡音)
〈排尿の自制〉
→尿失禁による皮膚浸軟・皮膚障害※尿のpHは5.0~8.0で食事内容やホメオスタシスで変動する
・排尿パターン
・尿意
・尿失禁
・1回尿量
・残尿感
・残尿
・おむつの着用
・水分の摂取量
〈排便の自制〉
・排便パターン
・便性状(下痢)
・便意
・水分摂取量
・経管栄養
・乳糖不耐症(経管栄養剤が合わない)
・便失禁
・おむつの着用
・抗生剤の使用(菌交代による下痢のリスク)
・抗がん剤(分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬、イリノテカンなど)の使用
2)《TP》行動計画
・必要な食事摂取量が確保できるように食事内容や形態を工夫する。
・栄養不足の場合は補助食品の検討をする。
・適切なポジショニングを行う。(特に骨突出部の圧迫を避ける)
・定期的に体位変換を行う。自力体位変換が可能ならば、定期的に声掛けをする。
・長時間車椅子へ座っている場合には、耐圧分散クッションを使用し、定期的に除圧のための声掛けを実施する。
・寝たきりの場合にはエアマットを検討する。
・エアマットの除湿モード・自動体交モードを利用する。
・定期的に体重測定を行う。
・浮腫のある場合には、ドレナージやマッサージを行う。
・トイレまで間に合わず失禁のある場合には、尿器やポータブルトイレの使用を検討する。
・オムツ着用の場合には、陰部洗浄を行う。
・下痢をしている場合には、こまめにおむつを交換する。
・経管栄養開始による下痢は医師に相談する。(栄養剤の変更を検討してもらう)
・抗生剤開始による下痢は医師に相談する。(整腸剤や止瀉剤(ししゃざい)を検討してもらう)
・抗がん剤による下痢の出現は医師に相談する。(止瀉剤(ししゃざい)が検討されるか、止瀉剤の使用できない抗がん剤の場合には補液が検討される)
・抹消循環が保持されていない場合には、保温する。(湯たんぽ、掛物、室温)
・浮腫のある場合には、体位変換に注意を図る。(皮膚の破綻を避ける)
・皮膚の脆弱による皮膚剥離や皮下出血にはフィルムドレッシングを貼付し補強する。フィルムの貼付が困難な部位には撥水性のあるワセリンなどを塗布し、皮下組織を刺激から保護する(上皮のような役割を持たせる)。
・排尿パターン、排便パターンを把握し、尿失禁や便失禁する前にトイレ誘導する。
・筋力維持のためのROM訓練を行う。
3)《EP》教育計画
・尿意・便意を感じたら、ナースコールで知らせるように伝える。
・失禁したら、恥ずかしがらずにナースコールで知らせるように説明する。(汚物の長時間付着で皮膚トラブルになるとナースコールの必要性を説明する。)
・バランスよく食事を摂取するよう説明する。
・同一の体位で長時間過ごさず、時々除圧するように説明する。
・しびれ、感覚麻痺、むくみがあったら知らせるように説明する。
・抗生剤、抗がん剤使用に伴って下痢が起きた場合には知らせるように説明する。
・むくみのある部分はぶつけないように説明する。
最期までご覧いただきありがとうございました。
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実習頑張りましょう!


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