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皮膚統合性障害(褥瘡・ストマによる皮膚トラブル)看護計画
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は皮膚の統合性に障害がある状態について考えていきます。
ここでは、褥瘡やストマによる皮膚トラブルについて考えます。本来なら熱傷や外傷も含みますが、熱傷と外傷はそれぞれ別記事でご紹介します。
皮膚統合性障害は実在型診断なので、すでに褥瘡ができている場合に立案します。まだできていない場合には皮膚統合性障害リスク状態を立案しましょう。
リンクを貼っておきますので、確認してください。
お急ぎの方は下のジャンプより目的位置に移動してください。
1.皮膚統合性障害の適応
私は個人的にはこうしたスケールを使用して系統的に客観的に評価するのが好きです。
特に、毎日違った看護師が関わる場合にはこうした基準で評価できるというのは、経過を正確に把握するうえで役立ちます。
・褥瘡評価1:NPUAP分類
NPUAPで褥瘡の深さと損傷度を把握する。
NPUAP分類でステージⅠ(表皮上の異変)Ⅱ(真皮に及ぶ潰瘍)
NPUAP分類については下記✩1参照(☆1へ)
・褥瘡評価2:DESIGN-R
DESIGN-Rで褥瘡の重症度を把握する。治癒過程を評価する。
DESIGN-Rのd2
DESIGN-Rについては下記✩2参照(☆2へ)
・褥瘡の既往
・外傷、熱傷(熱、低温、化学)
・放射線治療(がん治療)
・浮腫
・表皮の感染
・薬疹、皮疹
・ストマ(尿、便)での皮膚トラブル
✩1 NPUAP分類(褥瘡の定義とステージの分類)
日本褥瘡学会:褥瘡の予防&クイックリファレンスガイド(初版2004第二版2014)より抜粋
japan_quickreferenceguide_sep2016.pdf (epuap.org)


✩2 DESIGN-R 2020
日本褥瘡学会http://www.jspu.org/jpn/member/pdf/design-r2020_doc.pdfより引用

★DESIGNについて
DESIGN-Rは日本褥瘡学会が2002年に発表したDESIGNがもとになっています。
2008年にはDESIGN-Rとして発表され、今では世界的に認知され高く評価されています。
★深部損傷褥瘡(DTI)について
褥瘡には2つの進展様式があると言われ、1つは表皮から深部にかけてです。もう一つは深部から表皮にかけてです。
この深部から表皮にかけて進展していく褥瘡を深部損傷褥瘡(DTI)と定義しています。
これまでは可視化できずに評価が難しかったDTIですが、エコーによって深部(脂肪、筋層)を可視化できるようになりました。
過しかできるようになったためDESIGN-Rの評価項目として加えられることになりました。
★臨界的定着について
臨界的定着はクリティカルコロナイゼーションと言われます。
クリティカルコロナイゼーションとは、通常の感染のような症状をきたしていないにもかわからず、表面に保菌している状態(患部の上にただよっているような状態)です。
※汚染(コンタミネーション)→定着(コロナイゼーション)→感染(インフェクション)と言う流れで感染が成立していきます。
通常、表皮に感染をきたすと発赤、熱感、腫脹、排膿が見られますが、クリティカルコロナイゼーションでは、こうした症状が見られません。それは感染の前段階だから。
一見すると感染していないようななのに、褥瘡が治癒しないようなときはこの状態の可能性があります。
患部の上で菌が「バイオフィルム」と言われる菌の膜を作って住み着いています。その菌の膜が皮膚の再生を妨げているというわけです。
バイオフィルムは表面がぬめぬめしていたり、白く薄い幕のようなものがくっついていたら、その可能性があります。
2.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・褥瘡のリスクを述べることができる。
・褥瘡の発生を回避するための行動をとることができる。
・(本人、家族)褥瘡の処置を適切にできる。
・栄養バランスの良い食事ができる。
・皮膚を清潔に健康に保つことができる。
・適切にストマの管理ができる。
看護師を主語にする場合にはつぎのようになるとおもいます。
・除圧器具、定期的な体位変換、適切なポジショニングを行い、褥瘡・皮膚トラブルの治癒を促す。
・栄養バランスを整え、褥瘡・皮膚トラブルの治癒を促す。
・皮膚排泄ケアナースと連携し、褥瘡・皮膚トラブルの状態に応じた褥瘡処置を実施する。
・ストマを適切に管理し、皮膚トラブルを解消する。
3.看護計画
1)観察計画《OP》
〈ご本人の能力〉
・自力体動(仰臥位、側臥位、立位、座位)の可否
・ADL
・認知機能
〈スケールを使用した評価〉
・NPUAP
・DESIGN-R
〈皮膚機能〉
・褥瘡の既往
・皮膚温度
・皮膚感覚
・皮膚弾力性
・皮膚水分量
・皮膚の厚み
・体毛の成長
・異常な色素沈着
・皮膚の病変
・粘膜病変
・瘢痕組織
・皮膚がん
・皮膚剥離
・皮膚落屑
・皮膚蒼白
・皮膚の感染
・上皮の破綻
・皮下組織の破綻
・褥瘡部位
・褥瘡のサイズ
・褥瘡部の感染:滲出液、悪臭、膿様分泌物、バイオフィルム
・褥瘡の深度
・褥瘡:肉芽の色
・壊死組織、感覚
・褥瘡の出血
・褥瘡の処置内容
〈栄養状態〉
・カロリー摂取量
・蛋白摂取量
・脂肪摂取量
・炭水化物摂取量
・繊維摂取量
・ビタミン摂取量
・ミネラル摂取量
・鉄分摂取量
・ナトリウム摂取量
・カルシウム摂取量
・飲水量
・血清アルブミン値
・血清プレアルブミン値
・血清クレアチニン値
・ヘマトクリット値
・ヘモグロビン値
・血清トランスフェリン値
〈皮膚知覚〉
・鋭い刺激の識別
・鈍い刺激の識別
・2点間の識別
・振動の識別
・温度の識別
・圧力の識別
・感覚異常
・感覚喪失
・しびれ
〈循環動態〉
・血圧
・脈圧
・平均血圧
・中心静脈圧
・PaO2
・PaCO2
・酸素飽和度
・尿量
・毛細血管充満時間
・血管の雑音
・心雑音
・末梢の浮腫
・頚静脈の怒張
・腹水
・疲労
・体重増加
・皮膚温低下
・感覚異常
・失神
・圧痕浮腫
・下肢の潰瘍
〈加齢変化〉
・体液量の減少
・細胞の減少
・骨密度
・心拍出量
・皮膚の弾力性
・筋力
・血圧
・肺活量
・膀胱筋緊満
・基礎代謝率
・脂肪分布パターン
・関節可動域
〈体液の状態・バランス〉
・下痢
〈浮腫の程度〉
・眼窩周囲の浮腫
・四肢の浮腫
・仙骨の浮腫
・腹水
・体重増加
・全身性浮腫
・肺雑音(水泡音)
〈排尿の自制〉
→尿失禁による皮膚浸軟・皮膚障害※尿のpHは5.0~8.0で食事内容やホメオスタシスで変動する
・排尿パターン
・尿意
・尿失禁
・1回尿量
・残尿感
・残尿
・おむつの着用
・水分の摂取量
〈排便の自制〉
・排便パターン
・便性状(下痢)
・便意
・水分摂取量
・経管栄養
・乳糖不耐症(経管栄養剤が合わない)
・便失禁
・おむつの着用
・抗生剤の使用(菌交代による下痢のリスク)
・抗がん剤(分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬、イリノテカンなど)の使用
〈ストマ管理〉
・ストマ周囲の皮膚の状態
・ストマ瘻孔からの排泄物(便)の色、量、性状、排ガスの有無
・ストマ瘻孔からの排泄物(尿)の色、量、浮遊物、混濁、臭い
・ストマ交換の手技
・ストマの色
2)行動計画《TP》
・DESIGN-R、NPUAPスケールを使用して褥瘡を評価する。
・医師の指示通りの褥瘡処置を行う。
・必要な食事摂取量が確保できるように食事内容や形態を工夫する。
・栄養不足の場合は補助食品の検討をする。
・適切なポジショニングを行う。(特に骨突出部の圧迫を避ける)
・定期的に体位変換を行う。自力体位変換が可能ならば、定期的に声掛けをする。
・長時間車椅子へ座っている場合には、体圧分散クッションを使用し、定期的に除圧のための声掛けを実施する。
・寝たきりの場合にはエアマットを検討する。
・エアマットの除湿モード・自動体交モードを利用する。
・定期的に体重測定を行う。
・浮腫のある場合には、ドレナージやマッサージを行う。
・トイレまで間に合わず失禁のある場合には、尿器やポータブルトイレの使用を検討する。
・オムツ着用の場合には、陰部洗浄を行う。
・下痢をしている場合には、こまめに微温湯で洗浄し、おむつを交換する。
・排便管理を行う。(温罨法、腹部マッサージ、緩下剤など)
・経管栄養開始による下痢は医師に相談する。(栄養剤の変更を検討してもらう)
・抗生剤開始による下痢は医師に相談する。(整腸剤や止瀉剤(ししゃざい)を検討してもらう)
・抗がん剤による下痢の出現は医師に相談する。(止瀉剤(ししゃざい)が検討されるか、止瀉剤の使用できない抗がん剤の場合には補液が検討される)
・抹消循環が不良の場合には、足浴や保温(湯たんぽ、掛物、室温)をする。
・浮腫のある場合には、体位変換に注意を図る。(皮膚の破綻を避ける)
・皮膚の脆弱による皮膚剥離や皮下出血にはフィルムドレッシングを貼付し補強する。フィルムの貼付が困難な部位には撥水性のあるワセリンなどを塗布し、皮下組織を刺激から保護する(上皮のような役割を持たせる)。
・排尿パターン、排便パターンを把握し、尿失禁や便失禁する前にトイレ誘導する。
・定期的にストマ内の排せつ物を破棄する。
・ストマの面板を外す際にはリムーバーを使用する。
・ストマ周囲をこすらないよう洗浄する。
・ストマ貼付時に皮膚保護材を使用する。
・ストマが合っていない場合には、皮膚排泄ケアナースと連携する。
3)教育計画《EP》
・褥瘡の発生を防ぐ方法を説明する。
・褥瘡の処置について説明する。
・バランスよく食事を摂取するよう説明する。
・同一の体位で長時間過ごさず、時々除圧するように説明する。
・しびれ、感覚麻痺、むくみがあったら知らせるように説明する。
・抗生剤、抗がん剤使用に伴って下痢が起きた場合には知らせるように説明する。
・浮腫のある部分の管理について説明する。ドレナージ、弾性包帯、弾性ストッキング、循環保持、ぶつけない、など。
・ストマの機能と目的、管理上の注意事項を説明する。
・ストマやその周りのトラブルについて説明する。トラブルのある際には受診するように説明する。
・ストマ交換の手順を説明する。
・下痢の際は皮膚を清潔に保持するよう説明する。
・下痢が収まらないときには受診するように説明する。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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