目次
体液量不足(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は、「体液量不足」について考えていきます。
血液、消化液、リンパ液、間質液などすべての体液を対象とします。
体液とは何だったかというおさらいから始めていきましょう。
お急ぎの方は下のジャンプから移動してください。
1.体液バランスとは
1)体液とは
動物が何らかの形で体内に持っている液体のこと。
一般的には消化液(唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液)、汗、涙、鼻汁、尿、精液、用水、乳汁も体液といわれるが、今回はこれらを含まず、生物学的な体液を「体液」とする。
生物学的には、管腔内、組織間(管腔外)、体腔内、に存在する液体をさす。
1.細胞内液
2.細胞外液
(1)管内液
①血漿
②リンパ液
(2)管外液
①間質液 ※1
(3)その他体腔液
①漿膜腔液・・・胸水、腹水、心嚢液
②脳脊髄液
③関節液(滑液)
④眼房水(房水)
※1 間質液
間質液とは、細胞を浸す液体で、細胞外液より血液とリンパ液を除く体液を指す。
組織液ともよばれる。
酸素やタンパク質は、血管→毛細血管→間質液→細胞へと拡散する。
海外ではリンパ液と間質液の明確な区別がなく、「リンパ液」とだけ呼ばれる。
間質液は血管膜(半透膜)を通して、膠質浸透圧や筋肉などの圧力によって、水分と血液ガス(酸素と二酸化炭素)をやり取りする。
タンパク質や老廃物、ウィルスや癌細胞などの分子の大きいものはリンパ管を通る。
2)体液の構成
(1)成人の場合
・全体液は体重の60%
↓内訳は
・細胞内液が40%
・細胞外液が20%
・間質液が15%
・血液(血漿成分のみ)とリンパ液 あわせてが4.5%
・体腔液が0.5%
体重70kg男性を例に、具体的な数字で見てみると、、、
・全水分量:42L
・細胞内液:28L(42L×40%÷60%)
・細胞外液:14L(42L×20%÷60%)
・血漿+リンパ液:3.15L(42L×4.5%÷60%)
・間質液10.5L(42L×15%÷60%)
3)年齢層による構成の違い
・成人女性は男性に比べて脂肪が多いため、体重に対する体液の比率が小さくなる(男性の8割ほど)。
・新生児は体液比が最も高い:78%(細胞外液が多い)
※4歳ごろに成人と同レベルになる
・高齢者は体液比が低い:50%(細胞内液の減少)
4)体液の移動
①細胞の内側と外側の水移動は浸透圧による。
細胞の内側と外側はイオンとタンパク分子の移動が起こらない。
そのため、細胞外に低張の補液がなされると、浸透圧格差で細胞外から細胞内へ水分が移動する。
②血管の内側と外側は浸透圧が同じ。
血管の内側と外側はイオンの移動が原則自由なため浸透圧はほぼ等しくなる。
血管を通過できない低たんぱく分子などでつくられる膠質浸透圧格差により水移動が行われる。
5)日々の水分出納
(1)摂取する水分
①飲料水 1100ml
②食物中の水 1000ml
③代謝水 300ml
合計 2400ml
※代謝水は、栄養素が体内で代謝されて発生する水
(2)1日に排泄する水分
①尿
・随意尿: 1000ml
・不可避尿:400ml
②不感蒸泄 900ml
③便 100ml
合計 2400ml
※随意尿:摂取した水分量を反映 1000ml
※不可避尿:体内で生産され老廃物を排泄留守ために必要な尿
水分摂取をしなくても400~500mlは排泄される
※不感蒸泄:汗とは別に自然に皮膚や呼気から蒸発する水分
2.「体液量不足」看護計画の対象
1)個人の因子
・高齢(体内の水分量が少なく容易に脱水になる)
・低年齢(体温調整機能が未熟)
・認知機能低下で飲水することを忘れている
・頻尿で飲水を控えている
・うつ病で摂食・飲水に意欲がない
・アルコール・カフェインの過剰摂取(利尿作用)
・長時間炎天下での仕事・スポーツ
2)疾患・機能低下の影響
・脱水 ※1
・尿崩症
・熱傷
・下痢
・外傷
・出血
・腹膜炎
・嚥下困難
・口腔内のトラブル(歯の欠損、口内炎、歯肉炎)
・意欲低下(うつ病、消耗性疲労)
・拒食症
・糖尿病性ケトアシドーシス
3)治療に関連するもの
・絶飲食の指示
・術後
・ドレーンからの廃液
・高濃度流動食経管栄養
・利尿薬
・浣腸、緩下剤
※1 脱水
・低張性(ナトリウム欠乏性):熱傷、利尿薬、アジソン病(副腎皮質機能低下症)、嘔吐、下痢、不適切輸液
※細胞内に水が移行するため、細胞外液が著明に減少する。ナトリウムを多く喪失するため
低張性の脱水と言われる
・等張性(混合性):熱傷、出血、下痢
※急速に細胞外液を喪失する状態のとき、細胞外液そのものが消失=等張性のものが喪失するため
等張性の脱水と言われる
・高張性(水欠乏性):発熱、発汗過多、下痢、急性腎不全回復期、尿崩症
※ナトリウムより水分を多く喪失し、細胞内液から水分が細胞外液へ移動する。体液全体が濃縮
した状態となっているとき高張性脱水と言われる
3.目標
目標は患者さんを主語にして立てます。
・代謝の維持に必要な水分量・食事量を摂取できる。
・暑い場所での活動時には、適度な休憩・水分補給ができる。
・疾患が原因の場合、治療の目的・内容を理解し、指示に従った行動をとることができる。
・脱水の症状について理解できる。
4.看護計画
1)観察計画(OP)
・年齢、性別
・認知機能:機能低下で飲水・飲食のことを忘れてしまう
・通常の一日の摂食量・内容、水分摂取量
・発言
・夜にトイレに行くのは迷惑をかける
・お漏らしをすると迷惑をかける
・ADL(自分でどこまでできるのか)
・麻痺
・介助者の理解度
・トイレまでの距離
・頻尿の有無
・失禁の有無
・飲水できない器質的な障害:嚥下障害
・疾患
・尿崩症
・熱傷
・下痢
・外傷
・出血
・腹膜炎
・嚥下困難
・口腔内のトラブル(歯の欠損、口内炎、歯肉炎)
・意欲低下(うつ病、消耗性疲労)
・拒食症
・糖尿病性ケトアシドーシス
・飲水を控えてしまう場合にはその要因となっている事柄(失禁、トイレまで行くのが億劫)
・絶飲食の指示・指示期間
・脱水の兆候
・口渇
・頭痛、吐き気、立ち眩み、ふらつき
・けいれん、失神
・尿比重(正常値:1.006~1.022)の上昇
・尿量
・下大静脈径(呼吸性変動が50%以上ある場合は脱水を示唆)
・内頚静脈の推定中心静脈圧の低値
・頻脈(90回/分以上)
・血圧低下
・皮膚乾燥、ツルゴール反応(手の甲をつまんで2秒以上つまんだ跡が残っているばあいは脱水の可能性)
・血液データ※:Na、ALB、RBC、Hb、TP、Ht高値、BUN/Cre比が25以上、尿酸(UA)7mgdl以上
2)行動計画(TP)
・医師の指示量の飲水を促す
・嚥下障害:とろみ付き、ゼリーなど嚥下しやすいものへの変更をする
・食思不振:プリン、アイス、ゼリーなど水分を多く含むものを取り入れる
・摂食を促す
・精神疾患:服薬、治療が中断されないよう、見守りや声掛けを行う。
・排泄が間に合う環境に整える。
・認知症:季節に合った服装を促す。
・嘔吐:点滴指示などを適切に行う。吐物は感染源として適切に処理する。
・下痢:飲水・点滴指示などを適切に行う。排泄物は感染源として適切に処理する。皮膚トラブルに注意する。
・原疾患が原因となっているものは、治療計画に沿って介入する。
3)教育計画(EP)
・運動時はこまめに水分・塩分を補給するようにお話しする。
・認知症:季節に合った服装をするようにお話しする。(暑いのに厚着をしていることがある)
・高齢者:のどが渇いていなくてもこまめに水分を摂取するようにお話しする。
・屋外での活動時はこまめに水分・塩分を補給するようにお話しする。
・脱水症状(めまい、意識障害、粘膜乾燥、頻脈)について説明する。
・脱水症状を疑った際の対処法について説明する。
・涼しい場所で、ベルトなどの締め付けを解除し、大きな動脈のある所を冷やす。
・傾向摂取出来そうなら、スポーツドリンクなどを飲水させる。
※脱水:血液データで脱水がわかる?
それぞれの項目がなぜ脱水を示唆するのか
Na、ALB、RBC、Hb、TP、Ht高値、BUN/Cre比が25以上、尿酸(UA)
1. 赤血球数 (RBC): 赤血球の数が増加します。これは血液の濃縮(水分が減ったことで相対的に赤血球が多く見える)を示す兆候です。
2. ヘマトクリット (Ht): 上の赤血球増加に伴い、血液中の赤血球の割合が高くなります。
3. ヘモグロビン値 (Hb): 上の赤血球増加に伴い、ヘモグロビン濃度が上昇します。これも血液の濃縮を反映しています。
4. アルブミン (Alb): 血液の濃縮により、アルブミンの濃度が見かけ上高くなる。
5. 総たんぱく (TP): 血液の濃縮により、総たんぱくの濃度が見かけ上高くなる。
6. 尿酸 (UA): 尿酸は、血液の濃縮による見かけ上の要因と、再吸収の亢進による要因で高くなる。
7. BUN/Cre比が25以上:脱水時にはBUNの尿細管での再吸収が増え(水の再吸収が増える際に一緒に再吸収される)、Crは変わらないため、その値が増える。正常値は10以下
さらに、身体所見として、起立性低血圧、脈拍増加、乾燥した腋窩、粘膜、皮膚、口腔内、眼球の陥没、意識障害(せん妄)があれば、脱水症の可能性が高いと判断されます。
最後までご覧いただきありがとうございました。
ご意見、ご質問、感想などございましたら、下のコメント欄よりお寄せください(‘ω’)ノ
また、「嚥下障害」「下痢」「体液量バランス異常リスク状態」「電解質バランス異常リスク状態」の計画のリンクを貼っていますのでご参考になさって下さい。
下痢
嚥下障害
電解質バランス異常リスク状態
体液量バランス異常リスク状態
非効果的健康自主管理

