目次
消耗性疲労・倦怠感(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は「消耗性疲労、倦怠感」について考えていきます。
消耗性疲労は、持続的な倦怠感により、身体的・精神的な活動ができなくなってしまっている状態です。
疾患による症状が原因だったり、治療が原因だったりしますので、どのようなものが対象となるか一緒に考えていきましょう。
この計画場合は取り除くことのできない倦怠感が対象で、その倦怠感とどのように上手に付き合っていくかが焦点となります。
類似の計画に「活動体制低下」があります。活動体制低下は日常生活をこなすことが難しいエネルギー不足を対象にしています。こちらは日常生活をこなすためのエネルギーを高める、耐性を高めて日常生活をこなすことを目標にしていきます。
活動耐性低下の記事は以下を参考にしてみてください。
1.消耗性疲労の対象
1)疾患による消耗・・・身体的疾患
エネルギーが上手に使えなくなる疾患、エネルギーの消費が多くなる疾患、エネルギーの摂取が困難となる状態が該当します。
・慢性疲労症候群:
厚生労働省「慢性疲労症候群について」資料参照
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000yi7y-att/2r9852000000yihm.pdf
・悪性腫瘍:
・腫瘍による症状:発熱、閉塞症状、神経症状など
・抗癌剤による症状:食欲低下・口内炎、意欲低下、発熱、下痢、そのた副作用
・抗癌剤による免疫機能の低下、貧血、出血傾向
・手術、術後の経過
・放射線療法による副作用:宿酔、倦怠感、食欲低下、腹部照射では下痢など
・感染症:
・感染による症状:発熱、咳嗽、下痢、嘔吐
・治療による副作用
・代謝性疾患:糖尿病(エネルギー不足による体重減少)
・甲状腺機能亢進症(代謝亢進・動悸不整脈・発汗)
・貧血、出血
・認知症:食事に対する意欲が低下する→栄養障害
・嚥下機能障害:脳血管疾患後遺症、麻痺、神経筋疾患→栄養障害
2)疾患による消耗・・・精神的疾患に起因する身体的消耗
・不安障害、恐怖症、パニック障害:不安から緊張が続きリラックスできない。予定が近づくと緊張が続く。人前に出るのが怖い。それらの理由から、動悸、頭痛、めまい、下痢、頻尿、便秘、嘔気嘔吐などの身体症状きたす
・抑うつ
・摂食障害
3)加齢による消耗
加齢により食欲が低下し、嗜好も変化し、運動量も低下し、筋肉量が低下し疲れやすくなります。
・食欲低下
・嚥下機能低下
・筋力低下、筋肉量低下
・易疲労
・社会的孤立
・抑うつ
・認知力低下(認知症による幻覚・妄想など)
4)心身のバランスを崩した状態からの消耗
・勤務形態:長時間労働、夜間勤務
・緊張、慎重さを要する職業:警察、消防、医師、看護師、教師、管理職、クレーム対応、など
・睡眠不足:育児、多胎育児、介護、いびきのうるさい人との同室(眠れない)、夜間頻尿
・環境変化:結婚、同居、入院
・災害、事故、喪失など、想定外の事柄への直面
2.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・消耗性疲労の原因を理解し、対処できる。
・疾患が原因の場合には治療または管理できる。
・自身の症状の特徴に合わせた生活ができる。
3.看護計画
1)観察計画《OP》
・年齢(高齢者、小児)で予備力が少なく、変化に対応しにくい
・バイタルサインの変化(トレンドで把握)
・意識レベル:嗜眠
・体力低下、倦怠感
・集中力低下
・性欲減退
・疾患と疾患の病期
・疾患による症状
・悪性新生物の治療、治療内容、副作用
・貧血、汎血球減少など骨髄抑制
・感染症への罹患:発熱、咳嗽、下痢、嘔吐、咽頭痛、頭痛
・糖尿病などの代謝性疾患→エネルギーの活用がうまくできないため相対的にエネルギー不足
・強い不安、パニック障害、不安障害、何かに怯える、緊張が強い
・抑うつ
・甲状腺機能亢進症
・慢性疲労症候群
・認知障害(長谷川式20点以下、MMSE21点以下)→意欲低下や食欲低下の原因が認知症ではないか
・認知症高齢者の日常生活自立度(★1)
・障害高齢者の日常生活自立度(★2)
・要介護度
・ADL、IADLの低下、活動範囲の縮小
・栄養状態(血液データ、活気、顔色、ツルゴール反応)
・食欲、食事量、水分摂取量、エネルギー不足
・皮膚状態、褥瘡の有無→栄養状態の悪化や脱水が見られないか
・麻痺の有無、嚥下機能障害→食欲低下からのエネルギー不足
・活動による身体症状の出現(動悸、呼吸苦など)→活動を控える→筋力低下
・筋力低下・可動域の縮小
・「指輪っか」テスト:ふくらはぎを1.2指で作った輪で囲み、指先がついたり重なったりするとサルコペニアの可能性が高いというもの。簡易指標)
・精神疾患:抑うつ、摂食障害
・睡眠の質:睡眠時間、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、断眠、熟眠感の欠如
・睡眠障害の原因:頻尿、せん妄、幻聴、幻視
・睡眠障害の原因:同室者のいびき、アラームなど安眠できない環境
・睡眠障害の原因:育児、介護などの役割による睡眠不足
・清潔への意識(不潔となっていないか)、意欲低下、清潔への無関心
・生活環境の変化:結婚、単身赴任、子供の独立
・大きなライフイベント:死別、結婚
・ショッキングな出来事:災害、事故、犯罪に巻き込まれる、犯罪の被害者となる
・勤務形態:長時間労働、夜間勤務
・緊張、慎重さを要する職業:警察、消防、医師、看護師、教師、管理職、クレーム対応、など
(★1)認知症高齢者日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf

(★2)障害高齢者の日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf

2)行動計画《TP》
・安全・安楽・自立に視点を置いて環境整備をする。
・症状に合わせて介助を行う。フェイススケール、NRSスケールなどを用い、客観的に評価しながら、無理のないように行う。
・話を傾聴する。
・汎血球減少時には、感染対策を徹底する。患者さんにも手洗いやうがいを勧め、介助者や面会者にも感染対策を行ってもらう。
・倦怠感や疲労感が強く、普段出来ていたこともできない場合には、症状に応じて介助する。床上排泄や食事介助、マウスケアなど。
・術後や化学療法後、放射線療法後などは変化に注意し、正常経過の逸脱時には医師とリーダーへ報告する。
・嚥下機能障害による食事量低下には、食形態の変更や補助食品の検討を医師に依頼する。
・食事量の低下が見られる場合には、口腔内の様子・腹部症状・食形態・嚥下機能などを評価し、食事量が増えるように調整する。食形態の変更、歯科の介入、補助食品の追加など。
・関節可動域訓練、歩行訓練など筋力や関節可動域保持のための介入を行う。
・ベッド上でもできるROM訓練を取り入れる。
・リハビリ職とも連携し、リハビリでの実施内容、進行状況、生活上の注意などの情報を共有し、療養生活に組み込む。低負荷で頻回に無理なく行えるよう配慮する。
・活動しやすい衣服や履物を選択する。
・生活リハビリを意識し、日中はトイレまで移動する、食事の際は車椅子に移るなど、生活範囲の拡大につながるように声掛けをする。
・気分の落ち込みや、抑うつによる体動の減少がある場合には、本人の興味などを聞き取り、意欲が出るような趣向を凝らして、意欲を引き出す関わりをする。
・デイルームなどの皆が集まれるスペースがある場合には、食事の際やその他の時間に、お連れして、お互いにコミュニケーションをとってもらうように計らう。(刺激を与える)
・できていることに着目し、できていることを認める。エンパワメントの強化。
・信頼関係の構築につとめ、引きこもりからの脱却を目指す(外部とのつながりを持つ)。
・疼痛などにより活動が制限されている場合には、医師に鎮痛剤の指示をもらい、鎮痛剤の投与をする。
・患者や家族の話を傾聴し、不安や困っていることを傾聴する。またその中で介入が必要な事柄があれば、スタッフ間で話し合って、解決策を提示する。
・日中活動し、夜間睡眠がとれるようにバランスを整える。朝の日光を取り入れサーカディアンリズムを整える。
・活動による呼吸苦や動悸などの身体症状が出る場合には、途中で休息ができるような工夫を取り入れる。時々パルスオキシメーターを装着して客観的な評価も取り入れた介助をする。
・ショックな出来事(災害、事後、犯罪の被害など)で無気力となっている場合には、身体的なケアのお手伝いをする。傾聴し、心の変化を捉える。記録し、他職種とも情報共有し、心身の障害を軽減するための対策を話し合う。
3)教育計画《EP》
・自身の疾患や症状についての理解が深まるよう説明する。
・病期や症状に合わせたケアを行うことをパンフレットで説明する。
・めまい、出血、頭痛、吐き気、下痢、発熱、咳、口内炎、倦怠感、呼吸苦、息切れ、動悸など普段とは異なる症状が出たら看護師に伝えるように説明する。
・痛みなどの不快症状があったら我慢せず看護師に伝えるように説明する。
・嚥下機能障害による誤嚥性肺炎のリスクを説明し、むせ込みが見られたら看護師に伝えるようにお願いする。
・日中活動し、夜間は睡眠をとるように説明する。
・日中はデイケア、デイサービスなどの利用ができるよう、ソーシャルワーカーへ橋渡しをする。
・眠れない場合には、看護師に知らせるように説明する。
・介護者の介護負担軽減(訪問サービスやレスパイト)のためのサービス利用ができるよう、ソーシャルワーカー・ケアマネージャーと連携する。
・介助が必要な場合には、遠慮せず、ナースコールを押すように説明する。
・内服薬は用法用量を守って内服するように、本人と介護者に説明する。飲み忘れしないような工夫も一緒に考えていく。
・ベッド上でひとりでもできる関節可動域訓練について説明する。
・必要な栄養が摂取できるような工夫(食形態など)について説明する。
・不安があれば、一人で抱え込まず、相談してもらう。プライバシーは保護される(関係職種間では情報共有される)ので、安心して欲しいとお話する。必要ならば、カウンセラーなどの専門職種へ橋渡しする。
最期までご覧いただきありがとうございました。
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