身体可動性障害(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は身体可動性障害について考えていきます。
身体可動性障害は、自力で意図的に四肢の可動が十分にできない場合が対象になります。
類似の計画に移乗能力障害がありますのでよかったら参考にしてください。
移乗能力障害は接する面の間の移乗や移動が難しい場合を対象にしています。
転倒転落リスクも参考にしてみて下さい。
1.「身体可動性障害」の適応
・要介護3・4・5
・認知症高齢者の日常生活自立度でⅢ・Ⅳ・M(★1)
・障害高齢者の日常生活自立度でランクA2・B・C(★2)
・認知機能の低下(移動するという言葉の意味がわからない、動作の方法がわからないなど)
・感覚性失語(指示が理解できない)
・高次脳機能障害(指示が理解できない、気が散りやすい)
・麻痺の程度(完全、不全)、範囲(四肢、下肢、半身)
・脊髄損傷と損傷部位
・神経筋障害
・パーキンソン病
・脊髄小脳変性症
・筋萎縮性即索硬化症
・重症筋無力症
・筋ジストロフィー
・多発性筋炎
・神経炎・脊髄炎(感染症由来)
・筋骨格系の障害
・骨折、ヘルニア、円背
・脊柱管狭窄、脊椎すべり症
・関節腫瘍
・脱臼
・自己免疫性疾患
・リウマチ、シェーングレン、SLE、強皮症
・筋力不足
・サルコペニア(食欲低下・骨折による不動などの原因により筋肉量減少をきたしたもの)
・ロコモティブシンドローム(骨・筋肉・関節・靭帯・腱・神経などの運動器の障害により移動機能が低下した状態)
・フレイル(虚弱:健康と要介護の中間で、社会的フレイル、身体的フレイル、心理的フレイルがある。身体的フレイルにロコモティブシンドロームとサルコペニアは含まれている)
・肥満
・疼痛
・意識レベルの低下
・薬剤
・療養環境、生活環境がADLに適していない
・ADLの低下
(★1)認知症高齢者日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf

(★2)障害高齢者の日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf

2.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・ADL維持のための筋力維持ができる。
・ADL維持のための関節可動域維持ができる。
・安全に移乗ができる。
・安全に移動ができる。
・安全な移乗や移動のための環境整備ができる。
3.看護計画
1)観察計画《OP》
・バイタルサイン
・意識レベル
・認知障害(長谷川式20点以下、MMSE21点以下)
・疾患と疾患の病期
・治療内容:ギプス固定、挿入物による可動性の障害
・要介護度
・安静度(ベッド上、室内フリー、病棟フリー、院内フリーなど)
・鎮静剤使用の有無
・麻痺の有無、部位
・安静時:疼痛の有無、範囲、部位、疼痛スケール
・体動時:疼痛の有無、範囲、部位、疼痛スケール
・疼痛時の鎮痛剤使用の有無
・活動による身体症状の出現(動悸、呼吸苦など)
・MMT(徒手筋力テスト)
・関節可動域
・自助具の使用
・車椅子への移乗能力(立位困難、移乗困難、全介助、一部介助、見守り)
・歩行状態(小刻み歩行、すり足歩行、突進歩行、小股歩行、痙性歩行、引きずり歩行)
・歩行時の姿勢(パーキンソン病の独特の姿勢、円背)
・間欠性跛行(少し歩くと足が痛くなり歩けなくなるが、少し休むと、また歩けるようになる)
・ADL、IADL
・自力で可能な関節可動域の範囲(どこまで出来て、どこから介助が必要か)
・認知症高齢者の日常生活自立度
・障害高齢者の日常生活自立度
・「指輪っか」テスト:ふくらはぎを1.2指で作った輪で囲み、指先がついたり重なったりするとサルコペニアの可能性が高いというもの。簡易指標)
・活動範囲(ベッド周囲のみ、室内のみなど)
・肥満、BMI=25以上
・着衣(浴衣、パジャマ、洋服)、はきもの(スリッパでないか)
・自宅の環境(手すりやスロープなどでバリアフリーになっているか)
・自宅の寝室(ベッドかふとんか)
・同居家族の有無、介護力
・意欲、活気
・消極的言動、無気力、不安
・睡眠と活動のバランス、睡眠不足
・清潔への意識(不潔となっていないか)
・食欲、食事量、水分摂取量、エネルギー不足
・皮膚状態、褥瘡の有無
・呼吸機能(SPO2、呼吸数、呼吸苦、息切れ)咳嗽
((★1)認知症高齢者日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf

(★2)障害高齢者の日常生活自立度
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf

2)行動計画《TP》
・安全・安楽・自立に視点を置いて環境整備をする。
・自身でできることは自分で行ってもらう。そのための見極め(なにがどこまでできるのか)をし、他のスタッフへも申し送り、誰もが同じ介入をする。
・できないことの手助けをする。全部は手伝わない。
・移乗動作、歩行動作を日々アセスメントしながら介助する。
・適切な自助具を使用する。車いす、シルバーカー、ポータブルトイレ、歩行器など
・リハビリ職とも連携し、リハビリでの実施内容、進行状況、生活上の注意などの情報を共有し、療養生活に組み込む。
・活動しやすい衣服や履物を選択する。
・麻痺状態に合わせて日常生活動作を援助する。
・ギプスや牽引の状況に合わせて日常生活動作を援助する。
・医療挿入物に留意して日常生活動作を援助する。
・気分の落ち込みや、抑うつによる体動の現象がある場合には、季節の催しや売店への買い物、散歩など、気分転換しながら活動が行えるような介入を行う。
・安全な療養環境を整備する。手すりの設置がされているトイレへ誘導するなど安全に使えることを認識してもらい、自分にもできそうだと思ってもらえるような介入をする。
・急性期から早期離床に取り組む。
・不快症状(疼痛など)を取り除く。
・関節可動域訓練、歩行訓練など筋力や関節可動域保持のための介入を行う。
・ベッド上でもできるROM訓練を取り入れる。
・疾患の特徴(朝が調子が悪い、末梢が冷えるなど)に合わせた日常生活動作の援助をする。
・日中はトイレまで移動する、食事の際は車椅子に移るなど、生活範囲の拡大につながるように声掛けをする。
・デイルームなどの皆が集まれるスペースがある場合には、食事の際やその他の時間に、お連れして、お互いにコミュニケーションをとってもらうように計らう。(刺激を与える)
・疼痛などにより活動が制限されている場合には、医師に鎮痛剤の指示をもらい、鎮痛剤の投与をする。
・肥満による体動困難がある場合には、間食の制限など、治療の計画に沿って介入を行う。
・患者や家族の話を傾聴し、不安や困っていることを傾聴する。またその中で介入が必要な事柄があれば、スタッフ間で話し合って、解決策を提示する。
・日中活動し、夜間睡眠がとれるようにバランスを整える。朝の日光を取り入れる。
・体交時には、麻痺側を巻き込んだり、下になったままにならないよう気をつける。
・食事量の低下が見られる場合には、口腔内の様子・腹部症状・食形態・嚥下機能などを評価し、食事量が増えるように調整する。食形態の変更、歯科の介入、補助食品の追加など。
・活動による呼吸苦や動悸などの身体症状が出る場合には、途中で休息ができるような工夫を取り入れる。時々パルスオキシメーターを装着して客観的な評価も取り入れた介助をする。
3)教育計画《EP》
・急性期の早期離床の効果を説明する。
・長期臥床による寝たきりへのリスクを説明する。
・自宅での療養環境を聞き取りし、自宅で安全に生活するための環境に必要な整備を本人やご家族と考える。また、福祉用具の導入などではケアマネジャーとの連携も行っていく。
・活動しやすい衣服や履物を選択する。
・受傷による後遺症で麻痺が残った場合には、麻痺側の扱い(脱臼、血流障害)について説明する。
・車椅子に移乗するときには、麻痺側を体幹の内側に入れてから移乗する。
・体位変換時は、麻痺側を下にする時間は短時間とする。
・体位変換時は、麻痺の腕の位置に注意し、脱臼しないように注意する。
・痛みを感じないので、怪我などにも注意する。
・麻痺状態に合わせて日常生活動作を援助する。
・ギプスや牽引の状況に合わせた日常生活動作について説明する。
・医療挿入物に留意した日常生活動作について説明する。
・在宅では、朝起きたら更衣をし、暮らしのメリハリをつけることのメリットをお話する。
・デイケア、デイサービスなどの利用ができるよう、ソーシャルワーカーへ橋渡しをする。
・介護者の介護負担軽減(訪問サービスやレスパイト)のためのサービス利用ができるよう、ソーシャルワーカーと連携する。
・疼痛などの不快症状があるときには我慢せず、ナースコールを押すように説明する。
・介助が必要な場合には、遠慮せず、ナースコールを押すように説明する。
・内服薬は用法用量を守って内服するように、本人と介護者に説明する。飲み忘れしないような工夫も一緒に考えていく。
・食事にタンパク質を取り入れると筋肉量が維持されてサルコペニアの予防にもつながることを説明する。
最期までご覧いただきありがとうございました。
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