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非効果的家族健康自主管理〈看護計画〉
いつもご覧いただきありがとうございます。
「非効果的家族健康自主管理」の看護診断は、以前には「非効果的家族治療計画管理」の診断でした。
今回はその「家族計画管理」について考えていきます。
治療計画や健康維持を「家族」とともに遂行することを目標にしていきます。
まず、家族機能について考えていきます。
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1.家族機能とは
定義の中にある「家族機能に取り入れる」という部分について考えたいと思います。
家族機能とはどんな機能でしょうか?
心理学では、個人のみに焦点を当てるのではなく、その個人が属する家族の「機能・構造・発達」に焦点を当てて考える方法があります。
そこで、家族システム論と家族療法についてご紹介します。
家族システム論は、家族を系統的にアセスメントするための構造を理解するための理論です。家族療法は、その家族システム論を用いて系統亭にアセスメントし、アプローチするための方法です。
1)家族システム論
臨床心理学用語事典より引用させていただいています。
https://rinnsyou.com/archives/499
①家族システム論 (family systems theory)
家族を1つのまとまりをもつ生命系としてとらえる理論です。
システムとは、いくつかの意味のある関係で結びついたサブシステムから構成されるものをさします。
家族システムとは、夫婦、父子、母子、同胞がそれぞれ特異なサブシステムにより構成されます。その諸部分は、それぞれが独立して機能することもあれば、全体が連動することもあります。
②家族システム論の歴史
家族システム論は、一般システム論やサイバネティクス理論を基礎にして誕生しました。しかし、心理療法分野にとりいれられるにしたがって、機械論的な偏見や先入観を脱します。そして、より人間的な側面を重視した独自の発展を見せはじめています。
とりわけ、理論面から大きな貢献を果たしているものとして、子どもが思春期に達した家族に見られるような、家族人生周期の移行期における家族危機の問題が挙げられます。
この理論が大きな貢献をもたらしている理由として、
• 一方向からではなく、複眼的あるいは多面的にとらえる
• 的確に問題の解決にあたる家族療法を実践するのに、理論面からの大きな貢献を果たしている
が挙げられます。
心に問題を持つ人がいる家族は、現状維持の傾向が強く、システムが硬直化していることがあります。
かつては、この病理的な家族の安定性を壊すことが家族療法の目的とされてきました。
しかし、現在では機能不全の家族にもそれなりの自己治癒力があることを認めるようになっています。セラピストはそれを補完・促進する形で援助する方向に変わりつつあります。家族の「あるがまま」を尊重するセラピスト側の姿勢が、悩みをかかえた家族にも歓迎されます。
2)家族療法
患者の問題解決方法に、「家族療法」というアプローチ法があります。
①家族療法とは
「家族療法とは、アッカーマンによって提唱されたもので、行動療法・コミュニケーション理論などの考え方を取り入れたものです(1958年)。これは、個人の問題行動は家族関係のひずみから生じるとし、来談者だけでなく、家族全体への働きかけが重要だと主張しています。
つまり、家族全体に心理的援助を行い、家族間の人間関係のひずみを改善して、家族間に望ましい均衡を回復させ、それによって来談者の問題を治療しようとします。
方法としては、来談者の問題に対して重要な関係を持つものに働きかける場合や、家族全員の同席のもとに全員に働きかける場合など、様々な方法があります。」
②アプローチ法
・アセスメント技法:家族イメージ法、ジェノグラム
・介入技法:パラドックス技法、リフレーミング、ジョイニング
2.非効果的家族健康自主管理の適応
・主介護者がいない、主介護者が要介護状態、要介護者の筋力不足、老老介護など。
・家族が患者の病気への関心がない、慣れてしまって関心が低下している。
・家族の生活に治療計画を取り入れることが困難。生活を変えられない。変えたくない。
・経済的困窮があり、他のサービスを利用することができないまま、患者と介護者が共倒れとなっている。
・患者と家族の関係が良くないため、療養生活に協力してもらえない。
3.目標設定
目標は患者さん(この場合はご家族さんも)を主語にして立てます。
・疾患管理や健康維持のための治療計画を理解できる。
・疾患管理や健康維持のための生活習慣を身に着けることができる。
・疾患管理や健康維持のための自己管理が継続できる。
・患者の健康管理を支える家族関係が構築できる。
・定期的に受診できる。
看護師を主語にする場合にはつぎのようになるとおもいます。
・患者と家族が、疾患を管理するための治療計画の内容を理解できるよう支援をする。
・患者と家族が、疾患管理や、発症予防のための生活習慣(食事、運動、服薬など)を身につけられるよう支援する。
・患者の健康管理を支える家族関係が構築できるよう支援する。
・受診日に受診をするようにし、自身や家族が主体的に疾患管理をできるように支援する。
4.看護計画
1)観察計画《OP》
・患者の疾患、病期
・患者に必要な介護量、介護内容
・患者の現在の要介護度、利用している福祉サービス
・家族の機能(家族システムの現状と問題点)
・家族の構成
・患者と家族の関係(良好か)
・家族のライフイベント→家族機能に変化をきたす可能性のあるイベント
(進学、就職、結婚、出産、離婚、シングルマザー、非行、疾患の発症)
・家族のそれぞれの役割
・家族それぞれの一日のスケジュール
・家族それぞれにかかる生活費、学費等の費用
・家族の介護力
・家族の、患者の疾患への理解(病態や管理上の必要事項を理解しているか)
・患者と家族との関係性
・患者と家族の関係が良好でない場合、どのような選択をするか
(施設入所、訪問サービス、短期入所、通所サービス)
・介護への意欲の有無
・家族の情報収集能力、ケアマネージャーやソーシャルワーカーとの関係
・主介護者のADL、慢性疾患
→やる気があったとしても家族が看護や介護をすることができるのか
・家族の疾患への理解、疾患コントロールの方法、
・介護手技(身体的ケア、精神的ケア、服薬介助)が適切か
・家族に介護疲れがないか、ストレス、フラストレーション
・家族は治療計画を取り入れることによって生活パターンに大きな影響をきたすか
・家族は治療計画を取り入れることによって、家族の健康状態に影響をきたす可能性があるか(睡眠や精神状態への影響)
・患者は家族から介護を受けることにどう思っているか
(申し訳ない気持ち、十分でないと感じる気持ち、など)
・患者は自分でできることまで家族に頼んでいないか
(家族の介護負担がおおきくなっていかないか)
・ケアプランについて
・患者と家族がケアプラン作成に参加しているか
・患者と家族がケアプラン作成に必要な情報を提供しているか(疾患だけでなく家屋状況など)
・患者と家族が、退院計画に参画しているか
・患者と家族が、療養上の目標設定に参加しているか
2)行動計画《TP》
・看護の原則「安全」「安楽」「自立」を念頭に置いた関わりをする。
・安全な療養生活が送れるように療養環境の整備を行う。
・安全な療養生活が送れるように声かけや介助を行う。
・家族構成や、主介護者のADLを加味したケア計画を立てる。そのうえで、患者と家族がケアを自宅でも実践できるように、わかりやすく説明しながら、一緒に実践し、覚えてもらう。
・介護負担が大きくならないように、患者自身ができることは、自分でできるように促す。
自助具を使用するなどの工夫をする。
・介護者が服薬介助を忘れないように、服薬カレンダーの使用を提案する。
・拒薬がある場合には、服薬ゼリーやオブラートを使用し、服薬ができる工夫をする。
・自宅の家屋状況に合わせて、ベッドや履物を調整する。履物は、病院に持ってきてもらい、退院前のリハビリ時から使用していく。
・痛みがある場合には、屯用の鎮痛薬を使用する。
・メディカルソーシャルワーカーとの橋渡しをし、在宅での療養生活に必要な環境を整えてもらう。
3)教育計画《EP》
・現疾患に対する理解ができていないようであれば、現在の状態・治療内容・今後の経過を、医師の説明内容(インフォームド・コンセントの内容)以上のことを話さないように注意して、わかりやすく説明しなおす。
・疾患管理のために定期的に受診や定期検診を受けるよう説明する。
・感染症対策のために、予防接種の有効性を説明する。
・予防接種での副作用の発現歴がある場合には無理に接種せず、感染予防のための手洗いやマスクの着用を徹底するように説明する。
・慢性疾患で、急性増悪や発作などの緊急事態が出現する恐れのあるものは、どのような症状が出たら、どのように対処するかを具体的に説明する。パンフレットなどのわかりやすく、思い出してもらえるものを作成する。
・食生活、運動習慣、内服薬などの自己管理が必要な場合は、医師の指示に従うように説明する。
・服薬忘れが起こらないように、服薬カレンダーなどを活用することを提案する。
・患者と同居家族に対し、自己管理をするメリットやその経過について説明する。
・食事制限の必要な場合、その理由について説明する。
・食事内容の改善が必要な場合は、患者自身だけでなく、調理する家族にも説明する。(減塩、タンパク制限など)必要時は、栄養士からの説明を受けるように説明する。
・運動療法が必要な場合は、患者と理学療法士とで相談しながら、実現可能な運動習慣を生活に取り入れるための計画を立てる。
・家族にこれまでの介護疲れがないか確認する。
・家族の介護に対する思いを傾聴する。
・患者の家族に対する思いを傾聴する。その上で、家族に何を望むかを確認する。
・主介護者のADLや体力に応じた、介護量であるか評価する。
・介護上の不安がないか傾聴する。(技術、展望、費用、余命など)
・ケアマネージャーなどの福祉職と十分に話し合ってケアプランを立てられると説明する。

