ノンコンプライアンス(看護計画)
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この看護診断は2021~2023年版のNANDAからは掲載がありません。
現代では、「コンプライアンス」という言葉をよく耳にします。
コンプライアンスは「守る」という意味で、法律に違反した場合を「コンプライアンス違反」と表現されています。
では、医療でいう「コンプライアンス」とは何でしょうか?
患者さんが「医療者の作成する治療計画に従う」状態がコンプライアンスを維持できている状態と言え、治療計画に従えない場合を「ノンコンプライアンス」の状態と言えます。
現代では、治療も患者さんへ説明し同意を得て行うことが前提となっていますので、ひと昔のように医療者のやり方に一方的に従わせるというのは少なくなってきました。
治療計画に沿った自己管理が難しいと言う場合には「非効果的健康自主管理」を立案されるといいと思います。
非効果的健康自主管理↓
健康自主管理促進準備状態↓
前置きが長くなりましたが、参考程度に呼んでいただければ幸いです。
1.コンプライアンスとノンコンプライアンス
1)コンプライアンス
コンプライアンス(compliance)は、直訳すると、「順守」「追従」「応諾」「承伏」「承知」という意味です。
患者さんにおける「コンプライアンス」というのは、治療計画に対する患者の姿勢が、従順であるあるいは積極的な状態と言えます。
治療に対する処方を守り、自己管理ができていると言い変えることが出来るでしょう。
2)ノンコンプライアンス
コンプライアンスとは反対です。
治療として求められていることを実践できない状態と言えます。
例えば、安静を保持できない、食事制限があるのに間食を繰り返す、服薬拒否があるなどです。
2.ノンコンプライアンスの適応
・認知力低下(長谷川式20点以下、MSSE21点以下)
・幻覚や妄想などの精神症状のきたす疾患(統合失調症、認知症、躁うつ病など、術後せん妄、夜間せん妄など)
・強迫症(思い込みが激しくなる疾患)
・発達障害
・知的障害
・頑固な性格
・理解力不足
・医療者の説明不足
3.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・治療計画の内容を理解できる。
・治療計画に対する疑問は質問することができる。
・在宅でも継続的に実現可能な自己管理方法を考えることができる。
・在宅でも定期的に受診できる。
看護師を主語にする場合にはつぎのようになるとおもいます。
・患者と家族が、疾患を管理するための治療計画の内容を理解できるよう支援をする。
・患者と家族が、疾患管理や、発症予防のための生活習慣(食事、運動、服薬など)を身につけられるよう支援する。
・定期的に健康診断を受け、自己健康管理ができるよう支援する。
・受診日に受診をするようにし、自身で疾患の管理ができるように支援する。
4.看護計画
1)観察計画《OP》
※患者が医師の指示内容を理解できない、あるいは医師の指示を実行できない理由を考える。そのうえで、自己管理をしていくために必要な、現疾患への理解の程度、処方内容(食事、運動、内服、処置)への理解の程度について現状を把握し、コンプライアンスに繋げる為に必要な要素を考えていく。
・年齢、身長、体重、BMI、肥満度
・肥満、やせ
・嗜好(過度な飲酒、喫煙、薬物乱用など健康へ影響を及ぼす嗜好)
・血液データ上の異常
・意識レベル
・バイタルサインの推移
・理解力
・認知力の低下(長谷川式20点以下、MMSE21点以下)
・理解力に影響を及ぼす疾患(知的障害、精神疾患、脳血管疾患、神経内科の疾患など)
・現疾患、併存疾患、慢性疾患の病期
・精神疾患、知的障害など理解力に影響を与える疾患の有無
・医師からの疾患の説明内容、方法(インフォームド・コンセント)
・インフォームド・コンセント時の家族の立会いの有無、医療者の立会いの有無
・治療計画、治療計画の理解度(本人、家族)
・治療内容(食事療法、運動療法、薬物療法など自己管理の必要なもの)
・治療計画を守ることのメリット・デメリットを理解しているか
・治療計画を守らない(守れない)理由
・錠剤が飲みにくい、顆粒が飲みにくい
・嚥下機能の問題
・時間の問題(仕事で昼の分を飲み忘れてしまうなど)
・症状が改善したので自己中断してしまった
・ADL(全介助、一部介助)、後遺症の有無、程度、生活への影響
・自宅の療養環境、慢性疾患をコントロールするために必要な良好環境を理解しているか
・自己モニタリング法(血圧、血糖など)
・運動機能レベル(粗大運動・微細運動)、杖歩行、歩行器歩行、車椅子、見守りのみなど
・処方されている安静度(ベッド上、室内のみ、病棟内歩行可能など)が本人のADLにあっているか
・健康管理の主体(自分自身で管理しているか、家族にしてもらっているか)
・内服薬の相互作用への理解(カルシウム拮抗薬とグレープフルーツ、ワルファリンと納豆、抗菌薬と乳製品など)薬剤師から説明を受けているか、また理解しているか
・家族構成、家族の理解
・栄養状態:血液データ、栄養摂取量が適量か、食事形態、嚥下機能
・社会資源の活用(介護保険の要介護度が適切か、障害認定、生活保護など)
・定期的に健康診断を受けているか
・予防接種歴
・感染予防策が適切に行えているか
・症状(呼吸苦、疼痛、発作、痙攣、動悸)
・食習慣の改善の必要性の有無(具体的に何をどのように調整する必要があるが理解しているか)
・透析の管理:食事管理(リン、カリウム制限、カロリー摂取、水分摂取、暴飲暴食)、ドライウェイト、シャントの管理(スリルの有無、シャント側での血圧測定や荷物を持つのを回避)、透析へ定期的に通う、内服薬管理
・心疾患:食事の調整(水分制限、塩分制限、肥満の回避)、自覚症状の有無(呼吸苦、運動による呼吸苦の程度、Hugh-Jones分類、NYHA分類)服薬管理、浮腫、側副血行路
・胃瘻、腸瘻:経管栄養の際のポジショニング、投与法、消化器症状の有無
・人工肛門管理:ストマ周囲の皮膚トラブル、交換手技、交換頻度、便の正常、腹部症状
・人工膀胱管理:人工膀胱の清潔な管理、尿の性状、臭気、人工膀胱周囲の皮膚トラブル、交換頻度、交換手技
・酸素管理:生活の際は、火気注意を理解しているか、酸素から2m以上離れた場所で火気を使用しているか(本人はダメ)、安静時と活動時の酸素量調整を理解しているか、酸素ボンベの取り扱い方法を理解しているか、酸素ボンベの残量管理ができているか
・狭心症:発作の際には舌下錠を使用する、舌下錠の使用法を理解しているか、外出の際も持っているか
・喘息:日々の吸入を怠らずに行っているか、症状が落ち着いている時にも吸入を継続しているか、自己判断で中断していないか、発作時に使用する吸入薬を理解しているか、発作に備えて外出時にも持っているか
・糖尿病:食事療法を理解しているか、食品交換表を理解しているか、3大合併症を理解しているか、生活習慣改善の必要性を理解しているか、運動療法を理解しているか、血糖降下薬、インスリン、血糖測定、低血糖症状を理解しているか、低血糖症上出現時の糖分摂取を理解しているか、高血糖症状を理解しているか、シックデイの対処法を理解しているか
・アレルギーによるショック(ハチ、食べ物):アナフィラキシーショックの既往が有り、エピペンを所持している場合には、使用法や使用のタイミングを理解しているか
・ストレッサーに対するコーピング(ストレス対処法)ができているか
・ストレッサーに対するコーピングの方法が適切か(飲酒、喫煙、暴飲暴食、薬物乱用など不適切な方法を選択していないか)
・喫煙、アルコール、薬物中毒治療へのやる気、他の疾患を招く生活習慣であることを認識しているか
・現在の疾患、症状、スタミナ、ADLに合わせた活動量を選択しているか(無理をしすぎていないか)
・現在の疾患、症状、スタミナ、ADLに合わせた活動量を求められていないか(職場や家庭内での理解の有無)
2)行動計画《TP》
・看護の原則「安全」「安楽」「自立」を念頭に置いた関わりをする。
・安全な療養生活が送れるように療養環境の整備を行う。
・安全な療養生活が送れるように声かけや介助を行う。
・挿入物の管理をする。ルートが引っ張られないように注意する。
・入院中から、退院後のことを見据えて、生活の中に治療計画を取り入れられるように声かけや援助を行う。
・理解力が不十分な患者には、本人と家族の同意を得てインフォームド・コンセントに立ち会う。患者の表情や返答でどの程度理解しているか推測する。
インフォームド・コンセント後に、理解度を確認する。
・治療の必要性が理解できるように、介入の度に説明しながら行う。看護師間でも対応に一貫性を持たせ、どの看護師に聞いても、同じ管理法が提案されるようにする。(人によって答える内容が異なると患者が混乱する)
・ドレナージを行っている場合には、廃液の性状や量を観察して記録する。
・ADLが自立するように療養環境をセッティングする(ポータブルトイレ設置、柵の設置、ベッドの位置調整など)
・ADL低下や後遺症により介助が必要な場合は、家族が介護技術を身につけられるように参加してもらいながら一緒に行う。
・食事の際のポジショニングや膳のセッティングを行い、自己摂取を促す。
・栄養量の不十分な場合には、食事量、形態、嚥下機能を評価し、適切な食事形態となるように調整する。
・運動機能障害(麻痺などで食行動に問題がある)場合には、自助具を使用して、食事摂取量が増えるように調整する。
・食後の内服介助を行う。内服の嚥下を確認する。
・食後のマウスケアを行う。
・ADL低下や、麻痺によって運動量が減少している場合には、ベッド上や座位で行える運動を取り入れる。
・治療計画に悪影響を与えるアレルゲンや特定の因子を回避する。
・十分に睡眠が取れるように環境を整える。
・社会資源の情報が得られるようにメディカルソーシャルワーカーとの橋渡しをする。
3)教育計画《EP》
・現疾患に対する理解ができていないようであれば、現在の状態・治療内容・今後の経過を、医師の説明内容(インフォームド・コンセントの内容)以上のことを話さないように注意して、わかりやすく説明しなおす。
・疾患管理のために定期的に受診や定期検診を受けるよう説明する。
・感染症対策のために、予防接種の有効性を説明する。
・予防接種での副作用の発現歴がある場合には無理に接種せず、感染予防のための手洗いやマスクの着用を徹底するように説明する。
・慢性疾患で、急性増悪や発作などの緊急事態が出現する恐れのあるものは、どのような症状が出たら、どのように対処するかを具体的に説明する。パンフレットなどのわかりやすく、思い出してもらえるものを作成する。
・食生活、運動習慣、内服薬などの自己管理が必要な場合は、医師の指示に従うように説明する。
・服薬忘れが起こらないように、服薬カレンダーなどを活用することを提案する。
・患者と同居家族に対し、自己管理をするメリットやその経過について説明する。
・食事制限の必要な場合、その理由について説明する。
・食事内容の改善が必要な場合は、患者自身だけでなく、調理する家族にも説明する。(減塩、タンパク制限など)必要時は、栄養士からの説明を受けるように説明する。
・運動療法が必要な場合は、患者と理学療法士とで相談しながら、実現可能な運動習慣を生活に取り入れるための計画を立てる。
・禁煙の必要がある場合には、喫煙による身体への悪影響を説明し、禁煙外来を勧める。
・禁酒できない場合には、過剰な飲酒による身体への悪影響を説明し、自助グループへの参加を勧める。
・ADLや介助量に合わせた支援が受けられるように、メディカルソーシャルワーカーと連携し、介護保険の申請などをしてもらう。

