腹圧性尿失禁(看護計画)
目次
腹圧性尿失禁(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は腹圧性尿失禁を取り上げていきます。
腹圧性の尿失禁は、咳やくしゃみ、腹圧のかかる運動をした際に尿が漏れてしまう尿失禁です。骨盤底筋(尿道括約筋)のゆるみが原因となります。
まず、尿失禁の分類からおさらいしていきましょう。
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1.尿失禁とは
尿失禁とは尿が不随意に漏れる状態で、以下の6つに分類される。
1)尿失禁の分類
①真性尿失禁
病態:括約筋の不全
原因:先天異常、外傷、骨盤内手術の合併症
対処:
・間欠的自己導尿、膀胱留置カテーテル、膀胱瘻作成
②腹圧性尿失禁
病態:括約筋の軽度不全。腹圧上昇時(咳、くしゃみ、荷物もちあげ)に少量の尿が漏れる
原因:妊娠や分娩(骨盤底筋の緩み)、運動不足、子宮がん術後
治療:
・軽症:骨盤底筋訓練、干渉低周波治療→2~3ヶ月で60%程度の改善みられる。
・重症:上記治療に効果が無かった場合、尿道スリング手術(TVT、TOT法)
③切迫性尿失禁
病態:膀胱が過敏で強い尿意により耐え切れずに尿が流出する。
原因:膀胱炎、神経因性膀胱
治療:
・抗コリン薬による薬物治療と骨盤底筋訓練と膀胱訓練(★1)。
・生活習慣改善指導:過剰な水分抑制や、カフェイン抑制、トイレの習慣化
※抗コリン薬は前立腺肥大には禁忌(悪化させる)。緑内障患者にも禁忌(発作を誘発します)。
④溢流性尿失禁
病態:慢性不完全尿閉で残尿量が大量になると膀胱内の圧が上昇し、尿が漏れ出る。
膀胱収縮障害でも、膀胱内に大量の尿が残り、溢流する(溢れ出る)
原因:前立腺肥大、高度尿道狭窄、神経因性膀胱、糖尿病、骨盤内術後末梢神経障害
治療:
治療では、前立腺肥大や前立腺癌が原因の場合は原因の改善を行います。加齢による膀胱機能の低下や手術の後遺症、糖尿病の神経障害が原因の場合は、間欠的自己導尿が必要になります。
前立腺肥大:
・前立腺肥大とは、加齢とともに男性の前立腺が徐々に大きくなる状態です。
・初期:保存療法(α1ブロッカー投与、抗男性ホルモン約投与)
・2~3期:TUR-P(経尿道的前立腺電気切除術)、前立腺レーザー術、前立腺摘除術
神経因性膀胱:
・神経因性膀胱とは、排尿に関わる神経経路に不具合が出て、排尿システムがうまく機能しなくなることです。脊髄損傷、糖尿病、多発性硬化症などの膀胱機能障害や、骨盤内手術後の神経障害などが原因となります。
・治療ではバランス膀胱に保つことを目標として投薬する。
・バランス膀胱とは、排尿間隔2時間以上、残尿100ml未満、残尿率20%以下の状態のこと。
・高緊張性には、神経支配の遮断を目的とした抗コリン薬などを使用
・低緊張性には、コリン作動薬に合わせて、ムスカリン作用を有する薬を使用
・尿道の閉塞が強い場合には、間欠的自己導尿、膀胱留置カテーテル、膀胱瘻作成
⑤反射性尿失禁
病態:上位・下位排尿中枢の間で連絡不全が有り、排尿筋の無抑制収縮が起こる。
原因:仙髄の排尿中より上位の脊髄損傷
治療:
・骨盤底筋体操
・薬物治療:膀胱収縮抑制(カルシウム拮抗薬+ムスカリン受容体拮抗薬)、
膀胱弛緩薬(抗コリン薬)
・手術:スリング術
・電気刺激療法→骨盤底筋を鍛える効果あり
・引き金現象を利用しての排尿
⑥機能性尿失禁
病態:膀胱の機能とは関係なく、排泄に関連する行動に障害があるために起こる尿失禁。
間に合わない、漏れる。
原因:上下肢の運動機能不全(麻痺、筋力的低下、筋緊張)、認知症(場所がわからない)
治療:
・環境整備や自助具を使用し、間に合わせる為の調整を行う。
★1 膀胱訓練とは
膀胱訓練:
尿意を感じてから排尿をなるべく我慢し、少しずつ排尿間隔を延長させることで膀胱容量を増やし、畜尿症状を改善させる訓練法(行動療法)。
対象:
過活動膀胱、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁、混合性(切迫性+腹圧性)尿失禁
訓練法:
定時排尿、習慣排尿法、排尿促進法とあわせて計画療法という。
具体的方法:
①患者に排尿機能、尿失禁のメカニズムについて説明する。
②患者とともに排尿計画を立てる。徐々に排尿間隔を延ばす。
③導入初期は、我慢する時間を5~15分と短時間からはじめる。(就寝中は除く)
徐々に15~60分単位で排尿間隔を延長する。
尿意を感じた際は、リラックスしたり気を紛らわせたりして尿意を我慢する。
目標は、膀胱内に200~400ml程度溜められるようになることと、排尿間隔が2~4時間に延長する
★2 骨盤底筋体操
ユニ・チャームのHPより引用させていただいております。
https://jp.lifree.com/ja/urine-leakage/training.html
1)仰向けでの方法
①仰向けに寝て、足を肩幅に開き、両膝を軽く曲げて立て、からだをリラックスさせます。
②その姿勢のまま5秒程度、肛門、尿道、膣全体を締め、陰部全体をじわじわっと引き上げる感じで締めます。
③その後は、からだをリラックスさせます。
④「(2)締める」「(3)力を抜く」を、1分間のサイクルで10回(10分間)繰り返し行ってください。
2)床に座って壁に寄りかかった姿勢での方法
①壁に軽くもたれるようにして床に座り、両膝を軽く開いて立てた状態にします。足の付け根の股部分(肛門括約筋の近く)に片手の手のひらを当てて、骨盤底の位置を自分の手指で確認します。
②以降は、「仰向けの姿勢で」と同じように1分間のサイクルを10回(10分間)繰り返し行ってください。
2.排尿機能
尿失禁を理解する上で排尿機序を理解する必要があります。国家試験にも頻出ですから、おさらいしておきましょう(´▽`)お急ぎの方は下のジャンプより目的位置に移動してください。
1)排尿機能の神経支配
排尿は、自律神経系での自動調節と、体制神経での任意の調節で成り立っており、
支配神経は以下のようになっています。
★排尿の指示系統は「大脳皮質(前頭葉)」→脳幹・橋「排尿中枢」→仙髄「排尿中枢」です。
①交感神経(下腹神経)
・排尿筋を弛緩、内尿道括約筋を収縮→排尿を抑制する
②副交感神経(骨盤神経)
・排尿筋を収縮、内尿道括約筋を弛緩→排尿を開始する
③体性神経(陰部神経)
・外尿道括約筋を収縮→排尿の一時停止をする(我慢)
2)排尿の機序
排尿は次の機序で成り立っています。
①膀胱に尿が貯まる。
大脳皮質(前頭葉)で尿の流入を感知し、脳幹の排尿中枢へ知らせが届く。
脳幹の排尿中枢は、下腹神経を刺激して膀胱の排尿筋を弛緩させて、内尿道括約筋を収縮させる。
よって膀胱が尿を入れる入れ物として機能する。
②膀胱内に一定の尿量が貯留する。
膀胱内に150~300ml程の尿が貯留する。
膀胱壁が伸展し、大脳皮質(前頭葉)で尿が溜まってきたことを知覚する。
大脳皮質は、脳幹の排尿中枢へ排尿するための指令を出す。
脳幹の排尿中枢は、仙髄の排尿中枢へ排尿するための指令を出す。
脳幹の排尿中枢は、上の指示と同時に、下腹神経の活動中止も指示する(蓄尿を中止する)。
③排尿反射が起こる。
脳幹の排尿中枢から指示を受けた、仙髄の排尿中枢は、
骨盤神経を通じて排尿筋を収縮させ、内尿道括約筋を弛緩させる。
すると、膀胱が収縮し、尿道が開くため排尿する。
④排尿を我慢するとき
大脳皮質は②で尿の貯留を認識していても、すぐに排尿させずに蓄尿を継続させることができる。
大脳皮質は、仙髄の排尿中枢に尿を我慢するように指令を出す。
仙髄の排尿中枢は、陰部神経を介して外尿道括約筋を収縮させて、排尿を防ぐ。
3.腹圧性尿失禁の適応
・不随意の少量の尿漏れ(咳嗽、くしゃみ、労作時など)
・排尿筋の収縮を伴わない、不随意で少量の尿漏れ
・妊娠中(腹腔内圧の上昇)
・出産後(内尿道括約筋の機能不全)
・子宮がん術後
・運動不足(骨盤筋の退行性変化)
・肥満(腹腔内圧の上昇)
・高齢(筋緊張の喪失)
4.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・骨盤底筋体操をマスターできる。
・膀胱訓練の方法をマスターできる。
・(肥満の場合)減量できる。
看護師を主語にする場合にはつぎのようになるとおもいます。
・骨盤底筋体操がマスターできるよう支援する。
・膀胱訓練の方法がマスターできるよう支援する。
5.看護計画
1)観察計画《OP》
・年齢(加齢とともに骨盤筋低下)、性別(特に出産後の女性)
・認知機能(長谷川式20点以下、MMSE21点以下で認知症疑い)
→骨盤底筋体操の説明を理解できるか
・意識障害(せん妄など)
・ADL、介助量(全介助、部分介助)
・出産歴(骨盤底筋群の弛緩)
・子宮がん手術歴(骨盤底筋群の弛緩や損傷)
・骨盤内手術歴(骨盤底筋群の損傷)
・体重(肥満でないか)
・水分摂取量(控えていないか、飲みすぎていないか)
・水分の摂取経路(経口、点滴、経管栄養)
・尿もれの回数
・尿漏れパッドの使用、清潔な管理
・パッド汚染時に交換しているか(尿路感染のリスクを理解しているか)
2)行動計画《TP》
・安全な療養生活が送れるように療養環境の整備を行う。
・おむつ交換の頻度を適切に設ける。
・尿漏れがある場合には、パッドを使用し、こまめに交換する。
・おむつ装着者は陰部洗浄を行う。トイレ使用の患者はウォシュレットの使用を勧める。
・骨盤底筋体操の習得支援をする。(看護師が方法を説明し、患者には実施してもらう)★2へ
・膀胱訓練の習得支援をする。★1へ
・スリング術などの手術を行う場合には、周手術期の準備を行う。
3)教育計画《EP》
・尿もれパッドは汚染したら交換するように説明する。尿路感染のリスクについても説明する。
・尿がでなくなった、尿が出すぎる、急な尿意で間に合わなくなる、尿漏れがひどくなるなどの症状があらわれたら、医師や看護師へ相談するように説明する。
・骨盤底筋体操の方法を、パンフレットを使用して説明する。
・膀胱訓練の方法を、パンフレットで説明する。
・スリング術などの手術を行う場合には、クリニカルパスやパンフレットを用いて、周手術期の準備や経過・管理の説明をし、不安の除去に務める。
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