目次
看護計画:喀痰困難(非効果的気道浄化)・肺炎リスク・窒息リスク
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は自己喀痰が難しい方への介入をしていきます。一口に痰が出せないといっても、様々な理由があります。
例えば、水分の摂取量が少なくて痰が硬くなり出しにくい場合や、アレルギー反応で透明な鼻汁や痰がひっきりなしに産生されており十分に出し切れない場合なども含まれます。手術直後や鎮静剤の使用によって自己喀痰がそもそもできない方や、神経疾患によって咳嗽することがうまくできなくなった方なども対象です。
原因を特定しながら、それぞれに対処し、気道浄化に努めるにはどのようにすればいいかを学んでいきましょう。
お急ぎの方は下からジャンプしてください。
1、看護計画「非効果的気道浄化」の対象
・喫煙者(慢性的な気道の炎症で痰が多くなる)
・呼吸器系の疾患(痰の分泌が多くなる):
・COPD(喫煙による気管の炎症で分泌物増加)
・呼吸器感染症(鼻腔、副鼻腔、気管、気管支、肺胞での炎症反応により痰の産生が増加)
・気管支炎、肺炎、肺水腫、副鼻腔炎
・気管支拡張症(気管支の慢性的炎症→喀痰困難→気管支・肺胞破綻→気管支拡張という機序をたどる)痰が多く、時に血痰が出る
・肺結核(肺尖部での結核菌の増殖、肺門部リンパ節腫大する。喀痰と、空洞病変では喀血あり)
※医師指示で隔離解除となるまでは陰圧室管理(空気感染するため)。接触時はN95装着
・肺がん(たんが多くなる)
・人工呼吸器装着者(人工呼吸器関連肺炎VAP)
・気管切開(病原菌が肺に侵入しやすくなる)
・自己喀痰ができない、または難しくなる患者:
・認知症
・神経筋疾患(ALS、パーキンソン病、筋ジストロフィー)
・鎮静剤使用中
・嚥下機能が低下しやすい患者:
・脳血管疾患後の後遺症→麻痺、咳嗽反射が起こらない(咳嗽中枢は延髄)
・気管支喘息(慢性的な気道の炎症があります。たんはあまり出ません)
・アレルギー性疾患(花粉症など)
・アレルギーを引き起こす環境:
・冷気(寒暖差アレルギー)、花粉、ハウスダスト、ペット(犬猫の毛)、鳥など
・痰が硬くなる要因:
・空気の乾燥(空気の乾燥はウィルスを活発化させます)
・水分バランスの乱れ:下痢、嘔吐
・水分摂取量が少ない
・肺炎を起こしやすい要因(肺炎=肺の炎症=痰が多くなる)
・マウスケア不足
・口呼吸
・嚥下障害(誤嚥リスク=肺炎)
・人工呼吸器装着
・吸引操作
2.看護目標
目標は患者さんを主語にします。
・マウスケアで口腔内をきれいにできる。
・自己喀痰ができる。
・気道分泌物を除去し気道閉塞や肺炎を防ぐ。
・誤嚥による肺炎を防ぐ。
・(気管支喘息)吸入薬や内服薬の用法用量を守り、気道の閉塞を防ぐ。
・適度な水分摂取ができる。
・適度な室温・湿度にできる。
3.看護計画
1)観察計画《OP》
・呼吸器系の観察:
・呼吸数
・呼吸リズム
・呼吸音(エア入り、左右差)、肺雑音
・呼吸困難、起座呼吸、口すぼめ呼吸、陥没呼吸
・酸素投与量、意識レベル、せん妄
・SPO2=90%以下
・血液ガス(PaO2=90Torr以下)
・画像診断(肺野の陰影)
・血液検査(WBC、プロカルシトニン、CRP、好中球などの炎症反応)
・チアノーゼ
・咽頭部の痰貯留音
・咳嗽
・痰の性状、量、臭い
・窒息の症状:
・チョークサイン
・感染兆候:
・発熱(平熱より1℃以上の体温上昇)
・バイタルサインの異常:頻脈、頻呼吸、SPO2値、発熱
・意識レベルの混濁
・痰の増量、痰の性状の異常(臭気のある痰、黄色や緑の痰)
・食事に関連したもの(誤嚥リスク)
・経管栄養:投与経路、投与メニュー、医師の指示内容
・食事の形態(嚥下機能に適した食形態か)
・嚥下機能障害の程度、VT(嚥下造影)、VF(嚥下内視鏡)
・食事の際の姿勢、栄養投与時の姿勢
・食事の際の一口量
・食事介助の手技(介助者の手技)
・認知力低下(食べ物と認識せず、いつまでも口に含んで嚥下しないなど)
・異食行為(認知症でティッシュを食べるなど)
・口腔内の清潔:
・マウスケアの手技、頻度
・治療に関連したもの:
・鎮静剤(麻酔薬)使用(自律神経系に影響し気道の自浄作用が低下する)
・持続鎮痛剤の使用(自律神経系に影響し気道の自浄作用が低下する)
・気管切開・永久気管孔・ミニトラック
・人工呼吸器の装着
・吸引操作
・麻薬(使用量により意識レベルの低下)
・疾患:
・神経疾患(ALS、多系統萎縮症、ギランバレー、重症筋無力症など)
・脳梗塞、脳出血による麻痺や自律神経障害
・頭部外傷による脳の機能低下
2)行動計画《TP》
・痰が生成されにくい環境(感染予防を含む)を整える。
・療養環境を適切な温度・湿度にする
・清潔を保ち、ほこりが舞わないようにする
・定期的に換気をし、空気を入れ替える。
・痰を出しやすい性状にする。
・適切な水分量を保持する。
・水分の出納を確認し、脱水・嘔吐などOUTが多くなる場合は医師へ上申する。
・医師の指示のもとネブライザーを実施する。
・マウスケアを行い口腔内に適度な湿度を持たせる。
・含嗽を促す。
・呼吸器系への対処:
・酸素吸入5L以上は加湿する。
・気道分泌物を吸引し、量と性状を記録する。
・吸引は清潔操作で行う。
・吸引中はパルスオキシメーターを装着し、SPO2の低下に気をつける。
・排痰ケアを行う。(スクイージング、体位ドレナージ)
・排痰ケアを行う。(カフアシスト、RTX)
・含嗽ができれば行う。
・ネブライザーの指示があれば行う。
・自力で喀痰ができるように補助する。
※ハフィング、有効な咳嗽の練習
・喀痰ケアを行う。
※スクイージング、タッピング、RTX、吸入など
・患者さんが吸入薬の使用手技を獲得の援助をする。
・食事の際の誤嚥を防ぐ(誤嚥→肺炎→痰の増加→気道浄化必要となるためそれを防ぐ):
・嚥下機能を評価する
※食事中のむせこみ(何を摂取した際にむせこんだかを確認し記録・報告)
・食事の際には体位を整える。経管栄養はG-UP30度以上。
・食前に嚥下体操(首、肩の体操、口の体操、舌の体操)、唾液腺マッサージを行う。
・嚥下機能に応じた食形態へ変更する。
・むせないよう一口ずつ、嚥下を確認しながら食事介助を行う。
・食後は義歯を外し、マウスケアを行う。
・食後30分は座位(ファーラー位でも)を保持する。
・食事以外の誤嚥を防ぐ
・マウスケアを行い、口腔内を清潔にする
3)教育計画《EP》
・嚥下障害のある方に対して:
・食事形態の変更が受け入れられるように十分に説明する。
(刻み・とろみやムースが嫌だという人は意外と多くいます。)
・一口ずつ、よくかんで、飲み込んでから次の一口を摂取するように説明する。
・嚥下体操(首、肩の体操、舌の体操、口の体操)、唾液腺マッサージを指導する。
・それ以外:
・(入院中)呼吸困難や変調があったらすぐにナースコールをしてもらうようにお願いする。
・基本的な感染対策について説明する。
(マスク、手洗い、換気、過密を避ける)
・(アレルギー性疾患、喘息)吸入薬や内服薬の継続の必要性を説明する。自己中断しないように説明する。
・(喘息)アレルゲンを除去するように説明する(清掃など)。
・(喘息)含嗽で喉を潤す、部屋を加湿・加温する、ストレスを貯めないなど療養生活上の注意事項を指導する。
・(喘息)発作時は、メプチンなどのβ2作動薬を吸入し、発作が収まらない時には受診するように説明する。
・脳梗塞のかたは誤嚥を起こしやすいことを説明する。
・神経疾患の方は、疾患の進行とともに嚥下障害が出現するため、むせこみが見られたら受診するように説明する。
・退院後の自宅での医療的管理について:
・吸引は清潔操作で行うように説明する。
・吸引の手順について説明する。
・正常な痰の性状について、また異常な時には受診するように説明する。
(痰の増量、色が黄色・緑)
・酸素の管理について説明する(火気厳禁)
・酸素ボンベの使用法について説明する。
・酸素を5L以上使用する場合には加湿するように説明する。
・定期的に受診するように説明する。
※受診が難しくなってきたら往診を検討する。
・処方された治療法、内服薬は用法・用量をよく守って使用する。
・退院後の自己管理について
・口腔内を清潔にする必要性・効果について説明する。
・水分を適切に摂取する必要性・効果について説明する。
・喫煙は痰を増加させることを説明する。(できたら禁煙外来、がんばって減煙)
・以上のことを本人、ご家族の両方に説明する。
最後までご覧いただきありがとうございました。
類似の状態に「誤嚥リスク」「感染リスク」があります。
リンクを貼っておきますので参考になさってください。
関連の看護計画
嚥下障害「誤嚥リスク」
「感染リスク」


[…] 看護計画:喀痰困難(非効果的気道浄化)・肺炎リスク・窒息リスク […]