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心血管機能障害リスク状態(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。今回は「心血管機能障害リスク状態」を取り扱います。
動脈硬化による血管病変や、それに引き続き起こる心臓の動きの異常による血栓症などが対象になります。
動脈硬化についておさらいしていきましょう。
類似の計画に「心拍出量減少」「心拍出量減少リスク状態」などがありますので参考にしてみてください。
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1.動脈硬化とは
動脈硬化とは、動脈壁の肥厚、硬化、機能低下を示す動脈病変の総称。
1)動脈硬化の分類
(1)粥状硬化(アテローム硬化)
(2)中膜硬化
(3)細動脈硬化
2)分類別特徴
(1)粥状硬化(アテローム硬化)
①概要
大型~中型の動脈に見られ、内膜の効果・粥腫・潰瘍化・中膜肥厚などの病理的特徴がある。
虚血性心疾患、大動脈瘤、脳梗塞などの致死性疾患につながるリスクがある。
②好発部位
動脈の分岐点などの血流の乱れる部位に生じやすい
腹部大動脈、冠動脈、大腿動脈、頚動脈、椎骨・脳底動脈に好発
③リスクファクター
・素因:加齢、男性、家族歴
・生活習慣:喫煙、肥満(内蔵型肥満)、運動不足、精神的ストレス
・高リスク病態:脂質異常症、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、慢性腎臓病
④症状
通常は無症状だが、進行により臓器の虚血症状を引き起こしたり、プラークが破綻して管腔の閉塞をきたし、致死的な疾患に進展する可能性がある。
⑤治療
生活習慣の改善:食事療法、運動療法、禁煙
リスク疾患の管理:脂質異常症、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム
(2)中膜硬化
中型動脈にみられ、中膜の輪状石灰化が特徴だが、内腔の狭小化は生じない。
(3)細動脈硬化
全身の細動脈にみられ、高血圧との関連が重要視されている。脳出血、腎硬化症、ラクナ梗塞をきたす。
2.心血管機能障害リスク状態の対象
・慢性透析患者(MIA症候群★1)
・バイタルサイン
・血液データ
・BNP、コレステロール、中性脂肪、血糖、
・脂質異常症
・LDLコレステロール:140mg/dl以上
・HDLコレステロール:40mg/dl未満
・中性脂肪:150mg/dl以上
・年齢65才以上
・糖尿病
・心血管疾患の家族歴
・心血管疾患の既往
・OMI(陳旧性心筋梗塞)
・心電図波形の異常(ST変化)
・高血圧症
・バイタルサイン
・血圧左右差、脈圧
・脈拍に左右差がある、脈が強い・弱い
・改善可能な危険因子についての知識不足
・肥満(特に内蔵脂肪型肥満、リンゴ型の肥満)
・座位中心ライフスタイル
・喫煙
★1 MIA症候群(ミア症候群)
MIA症候群とは、Malnutrition(栄養障害)、Inflammation(慢性炎症状態)、Atherosclerosis(動脈硬化)の頭文字をとったものです。
慢性炎症状態が持続すると、栄養状態が悪化し、ひいては動脈硬化を進行させるという連続した病態です。
慢性炎症が持続するというのは、どういう状態か、またなぜ透析患者に起こるのか。それは、透析に使用する透析液の汚染が慢性炎症を引き起こしている可能性が高いそうです。汚染の原因は細菌毒素エンドトキシンに多いそうで、その毒素を清浄化できるかどうかがMIA症候群を予防できるかどうかの鍵となるようです。
3.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・食事療法・運動療法・薬物療法について理解できる。
・疾患の自己管理ができる(食事・運動・服薬)。
・(在宅)いつもと違う症状があれば病院を受診できる。
看護師を主語にする場合にはつぎのようになるとおもいます。
・バイタルサイン、モニターで異常の早期発見に努める。
・食事療法、運動療法、薬物療法が効果的に継続するように支援を行う。(患者自身が必要性を理解し、行動変容にする)
・頭痛、胸部不快、胸痛、呼吸苦などの自覚症状に注意し、異常の早期発見に努める。
・不安を傾聴し、不安の緩和に務める。
4.看護計画
1)観察計画《OP》
・年齢、性別
・既往歴、現病歴
・心血管(脳梗塞、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症)疾患の既往歴、家族歴
・喫煙、過度な飲酒
・体重、内臓脂肪型肥満
・意識状態(せん妄、不穏、呂律障害など)→脳への酸素不足うたがう
・バイタルサイン
・胸痛、胸部不快
・血圧、脈圧、左右差
・心拍数、脈拍数、心拍と脈拍の差
・心雑音
・呼吸数、呼吸の深さ・リズム、呼吸音の左右差、肺雑音
・SPO2
・心電図
・不整脈
・静脈血液データ
・BNP、ProBNP
・総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪
・血糖
・内服薬、服薬コンプライアンス
・認知障害、コンプライアンス
・食事形態、食事摂取量、補助食品、栄養を示す血液データ
・活動量、座位中心の生活スタイル
2)行動計画《TP》
・食事、運動、薬物療法が指示どおりに行えるように支援する。
・自己血糖測定やインスリン自己注射の手技を確認する。
・血糖測定手帳の記入を確認する。
・食事量、間食をしていないかを確認する。家族が持ち込んでいないかを確認する。
・リハビリの内容をリハビリ職と共有し、療養生活の中に取り込んでいく。
・生活の中での活動量を増やすため、トイレ誘導や付き添い歩行などを行う。
・付き添い歩行をしている際には、胸痛、自覚症状の出現がないかを確認する。労作性の胸痛や呼吸困難
・服薬ができているか確認する。拒薬がないか確認する。拒薬がある場合には、薬剤師や医師からの説明を依頼する。
3)教育計画《EP》
・呼吸苦や胸痛などの異常があったら、すぐにナースコールで知らせるようにお願いする。
・内服治療では、医師の指示に従い、用法用量・期間を守る必要性を説明する。自己中断しないようにするための工夫を話し合う。服薬カレンダーの使用、家族による服薬確認など。
・本人、家族、主介護者に対し、治療計画の目的、目標、治療経過について説明する。
・治療上の守ってもらいたい事を説明する。
・点滴などの管を引っ張らないように説明する。
・禁煙をすすめる。入院中は禁煙しているはずなので、そのまま在宅でも継続してもらえるようにお話する。
・LDLコレステロール高値を改善する食事について説明する。飽和脂肪酸のとりすぎ(肉の脂身、バター、ラード、カカオ油脂、インスタントラーメンなど)を改善する。コレステロールのとりすぎ(鶏卵)の取りすぎに注意する。
・中性脂肪高値を改善する食事について説明する。甘いものやエネルギー量の取りすぎ(菓子、ジュース、酒、油物)を改善する。青魚(オメガ3)は中性脂肪を下げる作用があるため、摂取をする。
・脂質異常、血糖を改善するために運動を推奨する。
・血糖測定の方法、記載について説明する。穿刺針の処理の仕方について説明する。
・インスリンの自己注射の方法について説明する。針の処理の仕方について説明する。
・糖尿病における食事療法について栄養士からの説明を受けてもらい、理解度を確認する。
・低血糖の症状と低血糖時の対応について説明する。
・シックデイについて、またその際の対応法についてパンフレットを用いて説明する。
・定期的に受診するよう説明する。
ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
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