身体損傷リスク・外傷リスク(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は外傷などの身体損傷のリスクについて考えていきます。
身体損傷とは、内部の要因や外部の要因によって、身体の組織や臓器に損傷をきたす状態のことを言います。
身体を損傷するリスクとしては、ご自身の身体的な要因と、周囲の環境による要因に分けられます。
本来の身体損傷では、転倒リスクの状態も含みますが、その内容を含むと記事が膨大になってしまいます。転倒リスクのリンクを貼っておきますので、転倒リスクについてはそのページをご覧ください。
また、感染リスクも体の組織を損傷させるという意味では身体損傷に含むと考えられますが、感染リスクも別ページで作成していますので、この記事からは除外します。感染リスクの記事もリンクを貼っておきますので、リンクから参照してみて下さい。
当ページ「身体損傷リスク」では、特に不慮の事故と虐待に対して焦点を当て、その予防に対する計画を立案していきます。
転倒転落リスク記事のURL
感染リスク記事のURL
お急ぎの方は以下のジャンプよりお進みください。
目次
1.「外傷リスク・身体損傷リスク」対象
1)ご本人による要因
・認知機能の低下(未発達)、判断力低下(未発達)
・長谷川式(HDS-R)19点以下で認知症の可能性 30点満点
・MMSE 21点以下で認知症の可能性
(30~27で正常、26~22が経度認知症疑い、
21以下で認知症疑い)30点満点。MMSEは国際基準
・火の取り扱い
・車の運転
・服薬管理
・徘徊
・知的障害、発達障害
・幼児
・精神の不安定(せん妄、不穏状態、幻覚、妄想、酩酊)
・特定の疾患
・意識消失をきたす疾患:低酸素、脳血管疾患、不整脈、冠動脈疾患、貧血
・めまい
・身体のバランスを崩しやすい疾患:パーキンソン病、進行性格上性まひなど
・低血圧症
・感覚異常により外傷に気づきにくい(悪化させやすい)状態:糖尿病、脊髄損傷
・幻覚や妄想をきたす疾患:統合性障害、認知症、アルコール依存症など
・うつ病:自傷のおそれ
・特定の状態
・麻痺
・聴覚障害
・視覚障害
・肢体不自由
・廃用症候群
・組織の脆弱:低栄養、電解質異常
・酸素療法、酸素の取り扱いの理解度
・一時的なせん妄(術後せん妄、ICU症候群)
・特定の薬剤の服用:意識レベル変容、易転倒
・精神安定剤
・血糖降下薬・血管拡張薬・降圧薬・利尿薬
・鎮痛薬
・抗けいれん薬
・筋弛緩薬
・転倒による骨折ハイリスク:ピルの常用、骨粗鬆症
・治療によるもの
・医療留置物による違和感:バルンカテーテル、点滴、ドレーン、挿管など
・転倒転落アセスメントスコアの危険度Ⅱ以上(転倒転落アセスメントスコアは✩1)
・不適切な生活習慣
・飲酒による意識レベルの変容
・依存症(アルコール、ギャンブル、薬物)
・セルフケア不足(爪を切らない)、武器の所持(うつ病の急性期・回復期や不穏時にはベルトでも自傷行為につながる)による自傷行為の可能性
・精神的不安定
・人間関係
・会社での関係
2)ご本人以外の要因
・環境の変化(部屋移動や入院)
・ADLに見合わない住環境(転倒転落しやすい状況):段差、手すりのない廊下、散らかった部屋など
・子供の理解力に合わない環境(灰皿の位置、洗濯機の扉、階段の柵など)
・不適切な自助具(本人のADLに見合わない自助具)
車いす、杖、歩行器など
・公害・有毒化学物質への暴露
(カドミウム、水銀、チオアセトン、青酸カリ、ダイオキシンなど)
・抗癌剤治療による易感染状態:白血球減少、血小板減少
・家庭内暴力
・児童虐待
・高齢者虐待
・障害者虐待
・介護者の心理状態(介護の負担、経済上の理由)→虐待の発生しやすい状態
2.虐待の類型
虐待には5類型あります。
厚生労働省の資料を参照しました。気になる方はアクセスしてください。
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/1.pdf
1)身体的虐待
・暴力的行為で痛みを与えたり、身体にあざや外傷を与える行為
・本人に向けられた危険な行為
※3要件を満たさない抑制は身体的虐待に該当します。
2)ネグレクト(介護放棄・育児放棄)
・意図的であるか、結果であるかを問わず、介護や生活の世話を行っている者が、その提供を放棄または放任し、生活環境や身体的・精神的状態を悪化させていること。
3)心理的虐待
・脅しや屈辱などの言語や威圧的な態度、無視、いやがらせによって精神的苦痛を与えること。
4)性的虐待
・本人との間で合意が形成されていない、あらゆる形態の性的な行為又は強要。
5)経済的虐待
・本人の合意なしに財産や金銭を使用し、本人の希望する金銭の使用を理由なく制限すること。
☆参考☆
参考に転倒転落アセスメントシートを掲載します。
転倒で外傷を起こしやすい人をスクリーニングするときにも役に立ちます。
✩1 転倒転落アセスメントスコアシート
スコアによって危険度がⅠ~Ⅲに分類される。Ⅱ以上で転倒リスクが高いと判断される。
危険度Ⅰ:1~9点(転倒転落の可能性がある
危険度Ⅱ:10~19点(転倒転落を起こしやすい)
危険度Ⅲ:転倒転落をよく起こす
患者の状態は変化していくので、入院時から定期的に評価していく必要があります。


3.目標
目標は患者さんを主語にして立てます。
・環境整備をし、安全に療養生活を過ごすことが出来る。
・ルート類の留置物がある場合には、気を付けて療養生活を送ることができる。
・(在宅;介護者や親向け)溺水、転倒転落、洗濯機などへの閉じ込め、誤薬、誤飲、窒息、徘徊、飛び出しなどのあらゆる事故を予測し、安全に生活できる。
・自身のADLを把握し、自身の能力にあった方法で生活を行うことができる。
・意識レベルの変容や転倒を引き起こす恐れのある薬剤を服用している場合には、注意して行動することができる。
・虐待を受けている場合には、身近な信用できる人に相談することができる。
看護師を主語に目標を立てる場合は以下のような目標になると思います。
・安全に療養生活を過ごしていただくための環境整備ができる。
・留置物の整理ができる。
・服薬による影響を加味したケアや療養生活の支援ができる。
・家庭内暴力、虐待が疑われる場合には、警察と児童相談所(高齢者は市の福祉課や地域包括支援センター)、(障害者は市の市町村障害者虐待防止センターや都道府県障害者権利擁護センター)へ相談し、対象者の安全確保を図る。
※当ページ「身体損傷リスク」では、不慮の事故の予防、虐待予防に焦点を当てています。
※「身体損傷リスク」では、転倒転落リスクと感染リスクの内容も包括していますが、それらは別の記事で取り扱っています。
転倒転落に関しては看護診断「転倒転落リスク」、感染に対しては「感染リスク」で扱っていますので、そちらを参照して下さい。
転倒転落リスク記事のURL
感染リスク記事のURL
4.看護計画
1)観察計画《OP》
(1)ご本人による要因
・認知機能の低下(未発達)、判断力低下(未発達)
・長谷川式(HDS-R)19点以下で認知症の可能性 30点満点
・MMSE 21点以下で認知症の可能性
(30~27で正常、26~22が経度認知症疑い、
21以下で認知症疑い)30点満点。MMSEは国際基準
・火の取り扱い
・車の運転
・服薬管理
・徘徊
・知的障害、発達障害
・幼児
・精神の不安定(せん妄、不穏状態、幻覚、妄想、酩酊)
・特定の疾患
・意識消失をきたす疾患:低酸素、脳血管疾患、不整脈、冠動脈疾患、貧血
・めまい
・身体のバランスを崩しやすい疾患:パーキンソン病、進行性格上性まひなど
・低血圧症
・感覚異常により外傷に気づきにくい(悪化させやすい)状態:糖尿病、脊髄損傷
・幻覚や妄想をきたす疾患:統合性障害、認知症、アルコール依存症など
・うつ病:自傷のおそれ
・特定の状態
・麻痺
・聴覚障害
・視覚障害
・肢体不自由
・廃用症候群
・組織の脆弱:低栄養、電解質異常
・酸素療法、酸素の取り扱いの理解度
・一時的なせん妄(術後せん妄、ICU症候群)
・特定の薬剤の服用
・精神安定剤
・血糖降下薬・血管拡張薬・降圧薬・利尿薬
・鎮痛薬
・抗けいれん薬
・筋弛緩薬
・治療によるもの
・医療留置物による違和感:バルンカテーテル、点滴、ドレーン、挿管など
・転倒転落アセスメントスコアの危険度Ⅱ以上(転倒転落アセスメントスコアは✩1)
・薬物のによる(向精神薬、てんかん薬、降圧薬、睡眠薬、抗うつ薬など)意識レベルの変容
・不適切な生活習慣
・飲酒による意識レベルの変容
・依存症(アルコール、ギャンブル、薬物)
・セルフケア不足(爪を切らない)、武器の所持(うつ病の急性期・回復期や不穏時にはベルトでも自傷行為につながる)による自傷行為の可能性
・転倒による骨折ハイリスク:ピルの常用、骨粗鬆症
・精神的不安定
・人間関係
・会社での関係
(2)不適切な環境
☆幼児・児童
・誤飲を招く環境(内服薬、ボタン電池、硬貨、タバコ、吸殻など)
・常時お湯はりのされた浴槽
・子供でも開けられる冷蔵庫、洗濯機、オーブン、食洗機
・チャイルドシート未装着
・自転車のヘルメット未装着
☆幼児・児童以外
・環境の変化(部屋移動や入院)
・ADLに見合わない住環境(転倒転落しやすい状況):段差、手すりのない廊下、散らかった部屋など
・子供の理解力に合わない環境(灰皿の位置、洗濯機の扉、階段の柵など)
・不適切な自助具(本人のADLに見合わない自助具)
車いす、杖、歩行器など
・公害・有毒化学物質への暴露
(カドミウム、水銀、チオアセトン、青酸カリ、ダイオキシンなど)
・抗癌剤治療による易感染状態:白血球減少、血小板減少
・施錠習慣のない環境(エスケープ・事故の危険)
・自転車のヘルメット未装着
・変質者が多く出現する地域、場所(誘拐や強姦が起こりそうな場所)
・つきまとわれている(ストーカーからの傷害事件)
(3)虐待(介護者・親権者の問題)
・家庭内暴力・家族間の不和
・介護者・親権者の依存症
・親の精神状態(産後うつ、双子三つ子などの育児負担、不眠、夫への不満、シングルマザーなど)
・親の生育歴(親自身も虐待を受けていた経験がある、、、など)
・身体的虐待を予測させる所見:
・身体のアザ、傷、打撲、骨折、熱傷
・不自然な親の説明「勝手に転んでぶった」
・ネグレクトを予測させる所見:
・衣服のよごれ、身体の汚れ
・るい痩、低身長などの成長発達遅れ
・発達障害(ことばの発達のおくれ)
・食べ物への執着心が強い(食べさせてもらっていないかも)
・薬物乱用
・薬物乱用の場合の交友関係
・家族との関係
2)行動計画《TP》
・安全な療養環境の整備をする。
・ルート類は整理する。
・薬は服薬カレンダーなどでわかりやすく管理する。
・不安、悩みを傾聴し、カルテに記録する。
情報は医療職間で共有し、統一した対応ができるようにする。
・(幼児)簡単に開けられる冷蔵庫や洗濯機などには、子供が開けられないようにロックを取り付ける。
・(幼児)手の届くところに、内服薬、タバコ、硬貨、電池などを置かない。
・(幼児)手の届くところに、凶器となりうるものを置かない。
・(在宅)徘徊しないように施錠する。徘徊してしまう場合には、衣服に身元を特定できるものを取り付ける(今はQRコードで身元が特定できるシステムがありますQRコードで身元確認を行っている市町村まとめ | 認知症ねっと (ninchisho.net))
・(幼児)チャイルドシートの設置
・浴槽に湯が張っている場合は目を離さない、子供や高齢者をひとりで近づけない。
・虐待が疑われる時には通報する。
・虐待をしてしまう親や介助者の精神状態が不安定な場合は、医師へ相談し、精神科などへの橋渡しをする。
・育児負担で疲弊している時には、同じ悩みを抱える(抱えていたことがある)自助グループがあることを紹介する。一人で抱え込まない、悩まない、思いつめないように援助する。(怪しい団体に騙されないように、市の福祉課へまず相談してみる)
・被虐待児が怖がっていたら、安心できるような環境を作る。
・薬物・アルコール・ギャンブル依存がある場合には、自助団体への橋渡しをする。(怪しい団体に騙されないように、市の福祉課へまず相談してみる)
・意識障害、せん妄があるときには、自傷他害行為に至らないように見守りや介助を行う。
・薬剤性のせん妄が疑われる時には医師へ上申する(たぶん中止になる)
・幻覚、妄想があるときには、自傷他害行為に至らないように見守りや介助を行う。
・自己効力感が低い場合には、成功体験を聞き出すなど自信につながるような関わりをする。臨床心理士へ橋渡しをする。
・ケアマネージャー、ソーシャルワーカーに橋渡しをし、在宅での生活ができるよう調整する。
・健康上の問題や、仕事の問題を抱えている場合には、傾聴する。(受容過程を見守る)
・変質者やストーカーにつきまとわれている場合は、警察に相談する。
3)教育計画《EP》
・ご本人とご家族に、退院後の生活についてお話しする。
・環境整備、服薬管理、その他注意事項
・安全に入院生活を過ごしていただくための注意事項を説明する。
・衣服、履物
・ルート類の管理について説明する。
・薬剤の容量・用法について説明する。
・入院中の持ち込み禁止について説明する:火気、刃物など。
・不安な時はナースコールを押していただくよう説明する。
(幻覚や妄想による自傷他害に発展しないように。)
・加齢による視力の低下、運動機能の低下、判断力の低下などの各種機能の低下について説明する。
・介護・育児の安全な環境についてパンフレットを用いて説明する。
・子供にはヘルメットをかぶる必要性や、火を触ってはいけない理由、交通安全のためのルールなどの安全教育を行う。
・運転免許証を返納したあとの生活について具体的に考える。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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