外傷リスク・身体外傷リスク状態(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は、不慮の事故によっておこりえる外傷、熱傷を回避する方法について考えていきます。
怪我のしやすい原因は、本人由来のものもあれば、環境由来のものもあります。
どのような原因があるか考え、それぞれに対する対処法を考えていきましょう。
関連する看護計画に転倒リスク状態がありますのでリンクを貼っておきます。
良かったら参照してみて下さい。
お急ぎの方は下のジャンプより目的位置に移動してください。
1.身体外傷リスク状態の適応
・身体的要因による外傷リスク
・認知力低下:長谷川式19点以下、MMSE21点以下
・独居の高齢者(特に認知症のある高齢者)
・転倒転落の既往
・転倒転落アセスメントスコア 危険度Ⅱ以上
(転倒転落アセスメントスコアは下記✩1参照)
・自傷行為を起こしやすい病態や病期(うつ病回復期など)
・麻痺(運動麻痺、感覚麻痺)
・筋骨格系の疾患※
①骨粗鬆症(骨の脆弱化)その結果の骨折
②変形性膝関節症(関節軟骨の変性)
③関節リウマチ(関節炎)
④腰部脊椎管狭窄症や頸椎症性脊髄症 (脊椎の変性)
・骨折や関節の変形がある疾患
・抑制帯を使用している
・栄養障害
・環境の不備
・ナースコールが届かない
・柵がない(階段、窓、ベランダ)
・地域性(犯罪発生率の高い地域)
・室内での危険:ガス漏れ、タコ足配線
・滑り止めのない浴室
・車の利用時にシートベルトを着用しない、チャイルドシートを着用しない
・習慣や仕事などに伴うリスク
・凶器となりうる道具や重機を常用する
(チェーンソー、包丁、アンカー、金槌、重機など)
・火事を引き起こす要因
・酸素吸入中の喫煙や火気の使用
・擦り切れた電源コードの使用、タコ足配線
・非常に熱い風呂に入る習慣、湯たんぽを使用する習慣などの熱傷リスクのある習慣を持つ
・アルコール中毒や依存による、アルコール残存での車や重機の運転
・バイクや自電車運転の際のヘルメット未着用
・(特定の仕事)作業中のヘルメットや安全ベルト未着用
✩1 転倒転落アセスメントスコアシート
スコアによって危険度がⅠ~Ⅲに分類される。Ⅱ以上で転倒リスクが高いと判断される。
患者の状態は変化していくので、入院時から定期的に評価していく必要がある。


2.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・自身のADLに見合った生活環境にできる。
・生活環境の危険なもの排除し安全な環境に整えることができる。
・酸素療法中は火気に注意できる。
・ヘルメットを着用できる。
3.看護計画
1)観察計画《OP》
《個人的要因》
・凶器となりうる道具や重機を常用する(チェーンソー、包丁、アンカー、金槌、重機など)
・非常に熱い風呂に入る習慣
・湯たんぽを使用する習慣
・アルコール依存:アルコール残存での車や重機の運転
・自傷行為を起こしやすい病態や病期(うつ病回復期など)
・麻痺(運動麻痺、感覚麻痺)
・麻痺の部位、範囲、ADL
・筋骨格系の疾患
・変形性股関節症、変形性膝関節症、関節リウマチなど
・疼痛の有無、程度
・内服薬
・抑制
・抑制部位、抑制時間、抑制による皮膚状態
《せん妄レベル》
・時間や場所や人の見当識障害
・認知障害(長谷川式20点以下、MMSE21点以下)
・意味のない言葉の表出
・意識レベルの変化
・不穏
・興奮
・幻覚
・妄想
・徘徊
《身体的損傷の重症度》
※下記のそれぞれについて、範囲、量、程度を観察する
・擦過傷
・打撲痕
・創傷
・熱傷
・四肢の捻挫
・腰背部捻挫
・四肢の骨折
・骨盤骨折
・大腿骨骨折
・脊椎骨折
・頭蓋骨折
・顔面骨折
・歯牙骨折
・開放性頭部損傷
・非開放性頭部損傷
・可動性障害
・認知障害
・意識レベルの低下
・肝挫傷
・脾臓破裂
・出血
・腹部外傷
《転倒転落の発生頻度/転倒転落予防行動/知識:転倒転落》
・転倒転落の回数
・転倒転落の詳細(いつ、どこで、なにをしているとき、どんなふうに)
・(付き添い歩行が必要な人)ナースコールで付き添いを依頼しているか?
・転倒転落アセスメントスコアで危険度Ⅱ以上
・転倒転落予防のための環境となっているか
・柵の設置
・手すりの設置
・履物の調整(かかとのあるもの)
・補助具の使用(杖・歩行器・シルバーカー)
・メガネの使用
・リハビリの進行度
・滑りやすい場所の環境
・部屋の照度
・部屋の散らかり
・固定されていない敷物
・内服薬
《アルコール乱用の中止行動》
・アルコール摂取量(習慣的にどのくらい飲んでいるか)
・アルコール依存症の診断(Wikipedia参照アルコール依存症 – Wikipedia)
・アルコール摂取による事故や怪我、DV歴
・アルコール依存救済の会(AA)への参加の有無、参加の継続状況
《物質依存(薬物、たばこ、アルコール)の影響》
・身体的活動の持続的低下
・慢性的運動機能障害(危険を回避できない)
・慢性疲労
・学校や仕事を休む
・就労継続が困難
・落着きがない(意識障害)
・易怒的
・暴力行為
・注射痕
・瞳孔異常
・交通事故歴
・逮捕歴
・中毒による救急外来受診歴
《安全な(家庭)環境》
・柵がない(階段、窓、ベランダ)
・地域性(犯罪発生率の高い地域)
・室内での危険:ガス漏れ、タコ足配線、薬剤の安全な管理、
・煙探知機の作動状況
・酸素吸入中の喫煙や火気の使用
・危険物の管理(刃物、銃(狩猟用)、チェーンソーなど)
・火気の管理
《その他:子供の安全》
・虐待歴、被虐待歴
・子供の身体の状況(身長、体重、あざ、認知、行動障害)
・子供の手の届くところに危険物がないか(タバコ、電池、薬品、ライターなど)
(子供の口はトイレットペーパーの芯穴と同じくらい開きます。
トイレットペーパーの芯に通過するものは誤嚥・誤飲する可能性があります)
・車の利用時にシートベルトを着用しない、チャイルドシートを着用しない
2)行動計画《TP》
・リハビリの進行度に合わせ、リハビリと情報共有しながら、援助の方法を決定し、援助を実施する。
・ADLに合わせた療養環境を整える。
・浴室や浴槽内に滑り止めのラバーマットを使用する。
・部屋を十分な照度に調整する。
・環境整備を行い、ナースコールを届く位置に設置する。
・環境整備を行い、つまずきそうなものを置かない。
・医療留置物の整理をする。
・安全が保持できないときには、必要に応じて抑制(離床センサー、ミトン、四肢・体幹抑制、4点柵など)を行う。
・抑制を行う際は、抑制具の正しい使用法に基づいて使用し、定期的に必要性を評価する。
・抑制を行う際は、勤務帯ごとに抑制によるトラブルが起きていないかを確認する。
・麻痺(運動麻痺、感覚麻痺)のある患者には、患側のポジショニングに注意し、脱臼や血流障害が起こらないようにする。
・筋骨格系の疾患のある患者には、疾患の進行の程度に合わせてADLの介助を行う。
・アルコールや薬物依存(中毒)からの離脱症状による危険行動や外傷を防ぐために、定期的な巡視と、環境整備を行う。
・うつ病回復期など自傷自殺行為のリスクの高い時期は頻回に巡視する。
・内服薬を容量方法通りに服薬介助する。
・虐待が疑わしい場合には、医師へ報告する。(そこから通報されます)。
3)教育計画《EP》
・必要時ナースコールを呼ぶように説明する。
・本人と同居家族に安全な環境整備について説明する。
・転倒転落を予防する方法について説明する。
・安全な酸素療法について説明する。
・アルコールや薬物、ギャンブル依存(中毒)の離脱のための自助グループについて説明する。
・わからないことは遠慮なく聞いていいとお伝えする。
・(精神疾患)内服薬は用法容量を守って服用するよう説明する。
最後までご覧いただきありがとうございます。
ご意見、感想、質問は下のコメント欄よりお寄せください。

