NANDA-00147 看護計画 死の不安
領域9  コーピング/ストレス耐性  ライフイベント/生命過程への対処
類2 コーピング反応  環境ストレスを管理するプロセス

00147 死の不安


看護診断:死の不安
定義:自分や大切な人たちの死や、死のプロセスの予感によっておこる、情動的な苦痛と不安定さが、生活の質(QOL)に悪影響を及ぼしている状態

いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は「死の不安」です。
類似の診断に「不安」もありますね。こちらの「不安」は、対象が漠然としている場合や複数ある場合に使用することができます。
今回の「死の不安」では、「死」にまつわる不安です。死を意識する状態にある本人や、それを支える家族の抱える不安に焦点を当てて考えていきます。

対象を考える前に、キューブラロスの「死の受容プロセス」についておさらいしていきましょう。

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また、終末期や緩和ケアにまつわる診断をページ巻末に挙げていますので参考にしてみてください。

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1.キューブラロスの「死の受容プロセス」


Wikipediaより引用しています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%BB%E3%81%AC%E7%9E%AC%E9%96%93

1)キューブラロスの著書「On Death and Dying」1969年発表

 日本では1971年に川口正吉訳で「死ぬ瞬間」として発売された。
 ※2001年に鈴木晶により「死とその過程について」という訳で発売されている。こちらは原書の直訳に近い形で訳され、キューブラロスの「死とは長い過程であって特定の瞬間ではない」という基本主張をタイトルに示している。

1965年、キューブラー=ロスはシカゴのビリングス病院で「死とその過程」に関するワークショップを開始する。その中で死病の末期患者約200人との面談内容を録音し、死にゆく人々の心理を分析し、文面に顕したものである。地名、人名、その他プライバシーは伏せられているが、おおよそインタビューの内容は要約・編集されず、冗長であってもそのままにナマに記された。インタビューに際して、患者に対しキューブラー=ロスはまず許しを求め、このように切り出す。
「わたしたちは特別のお願いでここに来ました。N牧師とわたしは重病で死にかかっている患者について、もっと知りたいと考えているのです」
婉曲な表現は使わず、「死にかかっている」という直截な言葉を使用した。
キューブラー=ロスは200人の死にゆく患者との対話の中で以下の5つの死の受容のプロセスがあることを発見した。ただし、すべての患者が同様の経過をたどるわけではないとしている。

2)5つの「死の受容プロセス」

・第1段階 「否認」
患者は大きな衝撃を受け、自分が死ぬということはないはずだと否認する段階。「仮にそうだとしても、特効薬が発明されて自分は助かるのではないか」といった部分的否認の形をとる場合もある。

・第2段階 「怒り」
なぜ自分がこんな目に遭うのか、死ななければならないのかという怒りを周囲に向ける段階。

・第3段階 「取引」
延命への取引である。「悪いところはすべて改めるので何とか命だけは助けてほしい」あるいは「もう数ヶ月生かしてくれればどんなことでもする」などと死なずにすむように取引を試みる。神(絶対的なもの)にすがろうとする状態。

・第4段階 「抑うつ」
取引が無駄と認識し、運命に対し無力さを感じ、失望し、ひどい抑うつに襲われなにもできなくなる段階。すべてに絶望を感じ、間歇的に「部分的悲嘆」のプロセスへと移行する。

・第5段階 「受容」
部分的悲嘆のプロセスと並行し、死を受容する最終段階へ入っていく。最終的に自分が死に行くことを受け入れるが、同時に一縷の希望も捨てきれない場合もある。受容段階の後半には、突然すべてを悟った解脱の境地が現れる。希望ともきっぱりと別れを告げ、安らかに死を受け入れる。

第一段階から第五段階まであるが、必ず一方向というわけではなく、進退を繰り返すなど、受容までのプロセスには個人差がある。死の瞬間まで第五段階の受容にたどり着けない場合もある。

さて、死の受容プロセスをおさらいしたところで、「死の不安」の対象者を見てみましょう。

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2.「 死の不安 」の対象


(1)患者本人
・余命の告知
・ターミナルケアを受けている
・死の受容プロセスの1~4段階
・侵襲的な処置(手術など)が迫っている
・死を意識してしまうような症状(呼吸苦、胸痛、出血)がある
・がんなど再発の恐れのある疾患
・化学療法、放射線治療など副作用の強い治療
・持続的な疼痛・強い疼痛
・治療の効果が出ていない(治癒の見通しが立たない)
・難病で治療法がない、通常よりも寿命が短い
・自身が死んだときの影響を考えている
・自律神経反応がある
 ・睡眠障害、動悸、頭痛、便秘、下痢、いらだち
・食欲不振
・身辺整理を始める、人にものを配る
・投げやりな態度
・やつあたり

(2)患者の家族
・以前に喪失体験をしている
・患者との別れへの恐れ:いつ死んでしまうのか、どんな風に死んでしまうのか
・心の支えがいなくなってしまうことへの不安
・再発への不安
・自身の無力感
・宗教にのめりこむ

3.目標設定


1)NOC/リンケージによる評価の指標

・安楽な死
・希望
・スピリチュアルヘルス
・尊厳ある人生の終焉
・安楽の状況:心理・霊的
・恐怖のレベル、不安のレベル
・コーピング
・心理社会的適応:生活の変化

2)目標

・不安や恐怖が軽減する。
・家族に思いを表出できる
・最期の時に向けて有意義な時間の使い方を自分なりに考え、述べることができる。

4.看護計画


今回は、キューブラロスの死の受容5段階別に考えていきます。


1)観察計画OP


(1)患者本人:余命宣告をされている、あるいは、進行性疾患にり患している本人
①1~5「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」段階共通の観察項目
・年齢、発達段階
・性別
・役割、仕事
・疾患、病期(ステージ)、余命宣告の内容
・バイタルサイン
・症状:疼痛、ADL低下、意識障害、呼吸苦など
・家族の有無、家族構成
・扶養家族、被扶養家族
・余命への不安についての言動
・増悪、つらい症状(激痛、呼吸苦など)への不安についての言動
・医療費、療養費への不安についての言動
・介護をする家族への負担についての言動

②第1~3段階 「否認」「怒り」「取引」の段階の方
・情緒の不安定(泣く、怒る、人へ当たる、ふさぎ込む)
・食欲減退、暴飲暴食
・宗教へのめりこむ、新たに加入する
・自身で治療法を模索する(健康食品など)
・神社仏閣をめぐる、神頼み
・原因が何かを深く考える

③第4段階 「抑うつ」の段階の方
・食欲減退
・無表情、落ち込み、活気がない
・閉じこもる
・セルフケアへの無関心
・身辺整理をしているような兆候
・自傷行為の兆候
・被害妄想
・あきらめ
・治療の拒否、服薬拒否

④第5段階 「受容」の段階の方
・家族との関係を大切にする
・家族に感謝の気持ちを述べる
・残りの時間に向き合うような言動
・悟ったような言動
・前向きに死後のことを語る、遺言
・つらい症状に対する対処法

(2)患者の家族
①患者が1~5「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」段階にある家族の観察項目
・年齢、発達段階
・性別
・役割、仕事
・患者の疾患、病期(ステージ)、余命宣告の内容
・症状:疼痛、ADL低下、意識障害、呼吸苦など
・患者との関係(付き添って何年か、その間の関係は良好だったか)
・扶養家族、被扶養家族
・患者の死期が迫っていることへの不安、悲しみ
・患者の病気の増悪、つらい症状(激痛、呼吸苦など)をそばで見ている不安や悲しみ
・患者の病気の増悪、つらい症状(激痛、呼吸苦など)をそばで見ていても、何もできない無力感やできても限界があることへの悲しみ
・医療費、療養費への不安

②患者が第1~4段階 「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」の段階にある家族の観察項目
・情緒の不安定(泣く、怒る、人へ当たる、ふさぎ込む)
・食欲減退、暴飲暴食
・宗教へのめりこむ、新たに加入する
・自身で治療法を模索する(健康食品などの民間療法)
・病気であることを信じない
・神社仏閣をめぐる、神頼み
・原因が何かを深く考える、自分に原因があったのではないかと自身を責める
・あきらめ、無関心になる

④患者が第5段階 「受容」の段階にある家族の観察項目
・患者との関係
・残りの時間に向き合うような言動:患者のやりたいことに協力的になる
・前向きに死後のことを語る
・患者の会いたがっている人との面会をセッティングする

2)行動計画 TP

(1)患者本人に対する行動計画
①1~5「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」の段階に共通した行動計画
・安全で清潔で落ち着いた環境を提供する。
・不足するセルフケアを補完する。
・不快な症状を緩和する(鎮痛剤投与や酸素投与など医師の処方に従って行う)
・本人の症状やリズムに合わせた介助を行う。
・落ち着いて話せる場所を提供する。
・お話を傾聴する。内容を記録し、医療従事者で共有する。
②1~3「否認」「怒り」「取引」の段階の行動計画
・否定も肯定もせず見守る。
・自傷他害行為が起こらないように、部屋の位置を調整する。(頻回に訪室できるようナースステーションの近くにするなど)
・ご家族と安心して過ごせるように、面会時間や場所をセッティングする。
・リラクゼーションを取り入れる。
 ・入浴、マッサージ、足浴、音楽、アロマ、など
・気分転換活動を取り入れる。
 ・散歩、読書、朗読、音楽、映画鑑賞、おしゃれ、メイク、ネイル、簡単なスポーツ、体操など
③「抑うつ」の段階の行動計画
・①②に加え希死念慮に注意する。
④「受容」の段階の行動計画
・本人の希望をかなえられるように支援する。
 ・食べたい食べ物
 ・会っておきたい人
 ・遺言の作成、メッセージの録音・録画
 ・家族に感謝の気持ちを伝える
 ・自宅に帰りたい
 ・死後の取り扱い、臓器提供
・自宅に帰りたい場合には、自宅の環境を整える
 ・福祉用具
 ・福祉職(医師、看護、介護、社会福祉士、ソーシャルワーカー、ケアマネジャー)の手配
 ・在宅での療養ができるように服薬の調整
 ・家族の気持ち、介護力

(2)家族に対する行動計画
・患者の反応や病状に対する家族の応答を受け止め、支援する。
・家族がゆっくりすごせる環境を整える。
・ケアに参加できるように取り計らう
 ・気分転換活動
 ・リラクゼーション
 ・清潔ケア
 ・疼痛緩和

3)教育計画

1)患者本人への教育計画
・自身の想いを素直に表出していいと伝える。
・希望を打ち明けてよいと伝える。
・不安を打ち明けてよいと伝える。
・最期の時に向けて思い残すことを挙げてもらう。
・好きだったこと、やってみたいことを挙げてもらう。
・食べたい食べ物を挙げてもらう。※たまのお楽しみにリクエスト食を出している病院もある。


(2)家族への教育計画
・死の受容プロセスについて説明する。
・患者の病状とこの後に予想される経過について、医師からの説明後に理解度を確認し、質問があれば答える。
・どのように接したらよいかをアドバイスする。
 ・会わせたい人
 ・整理しておいてほしいもの
 ・苦痛の緩和方法:屯用薬の使用、温罨法、マッサージ、会話、時間の共有、さするなど
 ・患者の好きだったものを聴取し、病院にいながら楽しめる方法はないか考える。
・患者への想いを傾聴する。
・家族の不安を傾聴する。

参照文献

T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
T.ヘザー・ハードマン、上鶴重美、カミラ・タカオ・ロペス. (2021年7月1日). NANDA-I看護診断ー定義と分類 2021-2023 原書第12版. 株式会社 医学書院.
リンダJ.カルペニート. (2014.1.1). 看護診断ハンドブック. 株式会社 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.


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投稿者 FlorenceMYM

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