領域9  コーピング/ストレス耐性  ライフイベント/生命過程への対処
類2 コーピング反応  環境ストレスを管理するプロセス

00146 不安


看護診断: 不安
定義: 漠然と差し迫った危険・大惨事・不運を予期するような、広範な脅威に対する情動反応

いつもご覧いただきありがとうございます。
今回の看護診断は「不安」です。
不安は、普通に生活していれば自然に起こる感情ですよね。
定義を見てみますと、「予期する」だとか「広範な脅威」などの表現が出てきて、漠然としています。

2015-2017年版のNANDAではもう少し定義が具体的だったので、ご紹介します。

2015-2017年版のNANDA「不安」の定義:
「自律神経反応を伴う、漠然として不安定な不快感や恐怖感(本人に原因は特定できないかわからないことが多い)で、危険の予感によって生じる気がかりな感情。
身に降りかかる危険を警告する合図であり、脅威に対処する方策を講じさせる。」

2015-2017年版のNANDA「不安」の定義では、「自律神経反応を伴う」ような「危険の予感」のあるものを対象にするとしており、不安は不安でも、「自律神経反応を伴っている不安」に対して介入するよ、と考えることができます。
看護診断には「不安」と「恐怖」という類似した診断があります。
「不安」は今後の展望に対する漠然とした感情であり、一時的なものであったり、持続するものであったりする。
それに対し「恐怖」は○○恐怖症というように、脅威が特定されているものを扱う。へび、おばけ、高所、閉所、尖端などで、特定の脅威がなくなれば、恐怖はなくなる。
「不安」と「恐怖」の違いは、「脅威が特定されているかどうか」という点らしいです。
脅威が特定されている=恐怖となります。
ただ、実際には、不安と恐怖を同時に抱いていることもあるというので複雑です。
「痛みがある患者さんが、この痛みはがんによるものではないかと不安になる」などといった場合がそうです。「痛み」という脅威が特定されているため「恐怖」の対象といえるが、同時にこの痛みはがんからくる痛みなのではないかという今後の展望に「不安」も抱いているので、特定の脅威である「痛み」と、漠然とした「がんかもしれない」という「不安」が共存しています。
このように共存する場合には「不安」で立案すればよいと思います。

下の看護計画も参考にしてみてください。

1.看護診断「不安」の対象


1)行動や仕草に「不安」を認める

・泣いている
・不眠
・緊張している
・イライラしている、興奮している
・おびえている
・不安だと言葉にする
・いろいろなことが手につかない
・生産性の低下
・落ち着きがない
・食欲不振
・考え込んでいる、ひきこもる
・以前と比べ伏し目がちである
・自分を非難する
・他人を非難する
・怒りをぶつける
・注意力の低下
・不安を他のことで紛らわす(飲酒、ゲームなどをして考えないようにする)

2)自律神経反応がある

・口渇
・食欲不振
・四肢冷感
・しびれ、振戦
・腹痛
・下痢
・悪心
・動悸(自覚症状)
・心拍数増加
・血圧上昇
・顔面紅潮
・瞳孔散大
・呼吸パターンの変化(過呼吸、頻呼吸)
・頻尿
・落ち着きがない
・めまい
・血圧低下
・過呼吸
・パニック発作
・疲労

3)上の1)や2)の症状の原因となる大きなストレスがある

1)疾患に関すること
・疾患の告知、余命の告知
・侵襲的な処置(手術など)が迫っている
・死を意識してしまうような症状(呼吸苦、胸痛、出血)→死への不安
・がんなど再発の恐れのある疾患
・化学療法、放射線治療など副作用の強い治療
・持続的な疼痛
・精神的疾患:幻覚(幻視、幻聴)、妄想
・精神的疾患:パニック


(2)経験・生活に関すること
・事件、事故、災害などのフラッシュバック
・移民、難民など生活の基盤が十分でない
・恐怖症(閉所、高所、尖端)
・ライフイベントが控えている(離婚、転居、就職)
・喪失(財産、地位、家族、失業など)
・妊娠、出産に伴う身体変化や児の成長過程
・妊娠によるキャリアへの影響
・思春期:友人関係、アイデンティティ、性的発達、学業、成績など他者と比較することで発生する不安
・小児:分離不安、環境変化
・高齢者:心身の機能の低下、経済的問題

2.目標設定


1)NOC、リンケージによる評価の指標

・社会不安のレベル
・不安のレベル
・恐怖のレベル
・興奮のレベル
・バイタルサイン
・睡眠
・スピリチュアルヘルス
・ストレスレベル
・受容:健康状態
 ※上にあげた以外にもまだ指標となるものがあります。気になる方はNOCを直接確認してください。

2)目標

目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。
不安を信用できる他者に打ち明けることができる。
不安が軽減すると述べる。
医師の処方通りに服薬できる。
・社会活動に参加できる。
・気分転換活動を取り入れることができる。

※看護師の目標としては以下のようなものが挙げられると思います。

・患者の自律神経症状が緩和する。
・患者の不安要素のうち、除去できるものは除去する。
・障害の受容過程を支援する。
・患者が家族や関係職種からサポートを受けられるように支援をする。

3.看護計画


1)観察計画(OP)

・バイタルサイン
・年齢
・ライフステージ
・ライフイベント
・家族構成、扶養家族
・児:成長発達 (年齢相応の心身の成長発達をしているか、虐待の兆候はないか)
・社会での人間関係、仕事関係などのストレス
・社会生活への影響:人を避ける、ひきこもる、仕事が手につかない、固執するなど
・疾患
 ・急性疾患
 ・慢性疾患
 ・症状(痛み、吐血、血痰、出血、呼吸苦、胸痛、下血、嘔吐、浮腫、むせこみ)
 ・画像(CT、MRI)
 ・病期(がんや腎疾患などのステージ、肝硬変グレードなど)、転移
 ・治療(侵襲的治療、継続が必要な治療)
 ・ADL低下をきたすもの(麻痺、肢切断、補装具、自助具)
・自律神経症状
 ・自律神経症状の有無
 ・自律神経症状の内容
 ・自律神経症状が起きるタイミング(夜だけ起こるなど)
・不安に対する代償行動(飲酒、喫煙、他人や身内に当たるなど)
・不安の程度(自律神経症状が出ている、精神症状が出ている、バイタルサインに表れている)
・睡眠と活動のバランス
・食事量
・検査データ
・バッドニュースに対する受容の過程。
 ・キューブラロスの「死の(障害)受容過程」:否認→怒り→取引→抑うつ→受容
 ・フィンクの障害受容過程:衝撃→防御的退行→承認→適応
 ※受容過程は必ず一方向ではなく、行ったり来たりを繰り返す。最終的に受容や適応になる。

2)行動計画(TP)

・静かで落ち着いた環境に整備する。
 (モニター音、看護師の走る音、話し声、カーテンや壁紙の色)
・窓を開けて換気をし、新鮮な空気を取り入れる。
・お話を傾聴できる場を設ける。さえぎったりせずに、最後まで話を聞く。
・共感的理解を伝える(タッチングなど)
・(時間があれば)ただそばにいて寄り添う。
・話しやすい人間関係構築のための、日ごろからのかかわり(声掛けやケアの際のかかわり方)を大切にする。
・マッサージ、足浴、アロマテラピー、音楽などリラクゼーションを取り入れる。
・気分転換活動を取り入れる。(運動、散歩、レクリエーション)
・過換気になりかけていたら、いすなどに座らせて、一緒に呼気を促す。
(ゆっくり10秒くらいかけて息を吐く)。落ち着くまで繰り返す。
・不眠があれば、日中の活動を増やす。
・不眠が続けば、医師へ相談し、服薬などの指示をもらう。
・不安の構成要素のうち、取り除けるものは取り除く。(疼痛、知識不足など)
・安心感を与える機会を提供する。
 ・家族との面会、リモート面会、声を聞かせる。
 ・お気に入りのぬいぐるみなどグッズを持ち込む。
・経済的な問題、生活に対する不安には、ソーシャルワーカーやケアマネジャーに相談する。
・虐待などの問題は、医師、ソーシャルワーカーやケアマネジャーに相談し、役所などと連携してもらう。
・認知症など、老いに対する不安には、認知症の症状に応じた対処をする。
 ・いつも同じところに置くようにする。
 ・内服を服用する時間を決める。
 ・場所がわかるように目印をつける。
 ・徘徊センサーをつける(ドアなど)
 ・いつも身に着けるものに、場所が特定できるグッズを入れておく。
 ・衣服に住所や氏名を記載しておく。
・行動、発言を記録に残し、変化を把握する。

3)教育計画(EP)

・ガン患者の会、がんサバイバーの会など、家族会の存在を伝える。
・カウンセラーの介入を依頼する。
・疾患の展望について不安があれば、医師から不安に思っていることに対して説明してもらう。
・生活や家族関係、どんなことでもいいので、不安に思うことは相談するように説明する。
・身近な人(家族など)に対し、患者の様子がおかしいなど兆候があったら知らせてもらうように説明する。
 ・治療に対して消極的な言葉が聞かれる、薬を飲まなくなった、民間療法について調べるようになった、など。
 ・身辺整理を始めたなど。

参照文献

T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
T.ヘザー・ハードマン、上鶴重美、カミラ・タカオ・ロペス. (2021年7月1日). NANDA-I看護診断ー定義と分類 2021-2023 原書第12版. 株式会社 医学書院.
リンダJ.カルペニート. (2014.1.1). 看護診断ハンドブック. 株式会社 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.

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投稿者 FlorenceMYM

「NANDA-00146 看護計画 不安」に4件のコメントがあります

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