NANDA-00064 看護計画 親役割葛藤
領域7 役割関係
人々または人々のグループ間の肯定的および否定的なつながりやつきあい、またそうしたつながりが示される手段
類3 役割遂行  社会的に期待される行動パターンにおける機能の質

00064 親役割葛藤


看護診断:親役割葛藤
定義:親が経験する、危機に反応した役割の混乱と葛藤状態

リンダJカルペニート著「看護診断ハンドブック10版」では、次のような定義が「明確で有用である」とのことで追加されています。

追加された定義:
外因(病期、入院、離婚、別居、特別なニーズをもった子どもの誕生)によって役割が実際に変化しているか、そう受け止めている親や主たる養育者の状態

いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は「親役割葛藤」です。
「看護診断ハンドブック10版」での定義は具体的でわかりやすいですね。

親の役割と一口に言っても、親も生涯にわたり発達します。
どの段階で「親」になったかも育児に大きく影響すると思います。

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私個人の経験で言えば、24歳で長男を出産しました。
その際には、自分自身が未熟で分からないことばかり、「○○さんは、できていない」と姑に小言を言われ、育児本通りに育児をしようとし、時には姑と衝突することもありました。家事も自分が全部しなくてはいけないと、自分の時間はほとんどありませんでした。
その12年後、36歳で長女を出産しました。夫の思考・行動パターンがわかってきて、家事や育児を分担するようになり、今では育児に関しても神経質に考えることなく、のびのびと行っています。
24歳だった私と36歳の私とでは、全然違う育児をしています。それは、育児経験による知識(予測や経過を知っている)や、社会経験による知識(人付き合い、ずるがしこさ)を身に着けたことの違いによると思います。
人はそれぞれ自分の発達課題をクリアしながら、成長しています。親となったときにも、その時の発達課題があり、それをクリアしながら、育児も行っていくのです。
看護師が、計画介入の対象である親や子の発達段階を把握するのは、「相手の経験値・能力」を推測するうえで有効だと思います。
発達心理学上でのそれぞれの発達課題について復習してみましょう。

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1.発達段階と発達課題

エリクソンの発達段階を見てみましょう。


19歳未満の青年期では、まだ自己同一性を確立する段階ですから、自分自身のあり方を模索している段階です。仲間やロールモデルから、自分のなりたい自分を見つけていきます。自分自身がまだ定まらない段階なので、育児についても困難なことがおおいでしょう。ただ、体力もありますし、まだまだ柔軟に考えることができますから、育児ができないことはないと思います。周りの理解がどこまで得られ、どこまで支援を受けられるかも大きなカギになってきそうです。
20を過ぎ39までは、社会の中の自分の位置に気付く、または立ち位置を築く段階と言えそうです。社会の中での関係は、周りにいる人間、特に重要な他者(パートナー、家族)との関係性が大きくかかわってくると思います。周囲の理解を得て、良好な関係を築けるか、関係構築できず孤立してしまうかは、自身の発達課題を達成できないばかりか、それより育児にも大きく影響を与えるでしょう。自分のキャリアを続けながら、育児を続けられるのが理想だと思います。重要他者との良い関係がカギになってくると思いますので、パートナーの精神的成熟度も重要な要素になってきます。
40過ぎれば、一通りのことは経験して、様々なことに対する対処法や、リスクを回避する方法など、情報収集から対応まで何でもできるようになっているころだと思います。情緒的にも余裕ができて冷静に考えられるので、失敗も少なくなってくるでしょう。ただ、体力が低下しているので、ケガや病気などまた別の問題が出てきます。家族との連携・役割分担が育児の大きなカギになってきそうです。

親になる人にも発達課題があることを理解したところで、こんどは「親の役割」「家族の役割」について考えてみましょう。
親らしさってなに?親がすることって?

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2.親の役割


これは、調べてみても有効な記事は見つかりませんでした。もっと探せばあるかもしれません。もし見つけたという方は、一番下のコメント欄より教えていただけると助かります。
家族機能から親の役割について考えてみたいと思います。

この機能の中ではすべてにおいて親は関わってきます。なかでも特に親の役割と言えるのは「扶養機能」「経済的生産的機能」「保護機能」「教育的機能」「娯楽的機能」かと思います。
養育の目標は、大きな視点でみると「一人前にする」ことで、小さな視点で見ると「健康である」「その子なりの成長発達がある」「社会に出たときに困らない」ことではないでしょうか。
こうした親の養育過程で、葛藤が起こるのが「親役割葛藤」だと思います。今回の診断「親役割葛藤」がはどのようなケースなのか考えていきましょう。

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3.親役割葛藤の対象


これまでは何の問題もなかったが、ある要因によって、それが維持できなくなる状態を対象と考えています。子どもの成長発達に影響をきたす要因について考えていきましょう。


1)親の要因
・仕事上の役割の変化
・離婚、再婚
・収入の減少:住む場所、食べるもの、教育環境の変化
・転勤による引っ越し
・単身赴任:特定の親に負担が過度にかかる
・ワンオペ育児
・特別なニーズを持つ児の養育に対する不安
・特別なニーズをを持つ児の定期的な通院、症状の観察や管理、投薬、悪化への不安、自分の管理は正しいのかなどの不安
・特別なニーズを持たないほかの兄弟への影響
・子供が多い:一人一人に欠けられる時間が短い
・親の発病、入院:→母子分離、親子分離
・家族の発病、入院
・祖父母の介護の必要性が出てきた
・無力感
・フラストレーション(欲求が満たされないことに対する不満のこと):思い通りにいかない、理想道理にいかない、どうして自分だけがという不満

2)子供の要因
・特別なニーズを持つ児の誕生や後天的に発見された障害
・医療的ケア児:吸引、呼吸器、酸素、経管栄養、おむつ、寝たきりなど
 ・精神疾患
 ・発達障害
 ・知的障害
・子供の発病、入院→親子分離
・環境変化
・登校拒否
・いじめ
・親になつかない
・反抗期

4.目標設定


1)NOC/リンケージによる評価の指標


・ペアレンティング達成
・家族の機能
・家族の健康状況
・不安のレベル
・不安の自己コントロール

※ペアレンティングとは「育児すること」という動名詞です。
看護診断「ペアレンティング障害」も参考にしてみてください。

2)目標


目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。

(1)児の目標
・月齢・年齢に応じた身体的・精神的発達が得られる。
・安心して育児を受けられる。
・親に対して不安や意見を述べられる。


2)親の目標
・児の月齢・年齢に応じた養育方法を理解できる。
・社会資源(フォーマル・インフォーマル)を利用しながら育児に向き合うことができる。
・自分自身を大切にできる。
・一人で悩まない。


(3)家族の目標
・家事や育児に家族の皆が参加できる。
・家族で支えあえる。

5.看護計画


1)観察計画(OP)


(1)親
・年齢
・発達段階(青年期・若年)
・離婚、再婚
・収入、収入源、収入の減少
 ・転居
 ・離婚に伴う転職
 ・育児分担ができなくなった
・パートナーの有無
・パートナーとの関係(被支配的な関係(暴力など)・児への虐待)
・仕事上の責任や配置換えなどのイベント
・犯罪の多い地域、治安の悪い地域
・育児の環境:ワンオペ育児
・育児の協力者の有無
・自己コントロールの可否
・児への関心
 ・特別なニーズを必要とする児への関心
 ・特別なニーズを持たない兄弟への関心
 ・扱いの差
・子供の人数、育児に掛けられる時間
・養育者の精神状態
 ・不安
 ・落ち込み、うつ
 ・フラストレーション
 ・怒り
・育児に対する姿勢
 ・児への愛情
 ・しつけと称した虐待がないか
・親自身の発病、障害
 ・入院による親子分離(子供を見られる人がいない)
・親の親(祖父母)への介護が必要になった

(2)子供
・年齢
・IQ
・障害
・疾患
・入院
・成長と発達
 ・低身長、低体重
 ・言葉を理解しているか
 ・月齢に応じた、落ち着き、態度、理解力、発言、運動であるか
 ・愛着行動があるか(

(3)親以外の家族構成員
・祖父母:仕事、ADL、家事育児への参加の程度
・対象児の兄弟:発達段階、家事育児への参加の程度

(4)現在の養育環境
・治安の悪い地域
・紛争がある地域
・貧困
・教育が充実していない地域
・地域柄
・家柄
・パターナリズムを押し付ける慣習(育児は母親が行うもの)

※ボウルビーによる愛着行動とは

子どもは「愛着行動を通じて、養育者から安心感や愛護感を得られる」ことを学びます。
(子供は愛着行動をすれば、親にかわいがってもらえることを知るということ)
こうした子供からの愛着行動を、ボウルビーは「内的作業モデル」と呼びました。
この内的作業モデルは、母子の関係だけでなく、成長過程での人間関係を築く基礎ともなっていきます。

2)行動計画(TP)

・環境整備を行う
 ・児や親の状態に応じて、静かな環境などを整備する。
・疾患、知的障害、精神障害などに応じた、服薬介助などを行う。
・治療方針・ケアの方針に沿って、統一したケアを行う。
 行った内容、会話、反応は記録し、多職種で共有する。
・不足したセルフケアについて介助を行う。
・不安を傾聴する。
・信頼関係を築き、相談しやすい体制づくりに努める。
・児が他者との関係を築けるよう、統一したかかわりをする。
・うつ病など希死念慮がある場合には、言動に注意し、危険なものを遠ざける。
・児とのスキンシップを推奨する。
 反応を言葉にして伝え、愛着形成を促す。
・医療的ケア児の親や家族に対して
在宅でのケアの技術を身に着けてもらうための実技指導を行う。

3)教育計画(EP)

(1)児に対しての教育計画
・不安を傾聴し、不安を共感する。
・わからないことはわからないと言っていいと伝える。
・困っていることや怖いと思っていることがあれば言ってくれればいいと伝える。
・児の頑張りを認め、ほめる。
・新たなことに挑戦したり、手伝いなどを進んで行ったら褒め、自己効力感や責任感を高める声掛けをする。

(2)親に対しての教育計画
・児の発達についてパンフレットなどを用いて説明する。
・子供の権利、しつけと罰について説明する。
・不安を傾聴し、不安を共感する。
・親の頑張りを認め、ほめる。
・主の養育者以外にも上記の説明を一緒に聞いてもらい、皆で育児を行う環境を整える手助けをする。
・親、家族の強みが生かされるように情報を一緒に整理する。
・家族での役割分担について考えてもらう。
 本人が自身でできることは何か、手伝う必要があることは何か、どの時間にケアが必要になるか、実際に自宅に帰ったことを想定して具体的に考えてもらう。
・生活について(収入や教育)の不安があれば、ソーシャルワーカーを通じて、社会保障の活用を検討する。
・育児負担について不安があれば、ソーシャルワーカーを通じて、社会保障の活用を検討する。
・相談支援専門員(障害ケアマネ)との時間をつくり、福祉サービスについての説明を受けてもらう。
・親や家族の健康も大事であると伝える。

参照文献

T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
T.ヘザー・ハードマン、上鶴重美、カミラ・タカオ・ロペス. (2021年7月1日). NANDA-I看護診断ー定義と分類 2021-2023 原書第12版. 株式会社 医学書院.
リンダJ.カルペニート. (2014.1.1). 看護診断ハンドブック. 株式会社 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.

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投稿者 FlorenceMYM

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