領域7 役割関係
人々または人々のグループ間の肯定的および否定的なつながりやつきあい、またそうしたつながりが示される手段
類2 家族関係 生物学的に関連しているか自らの選択によって関連している人々のつながり

00058 愛着障害リスク状態


看護診断:愛着障害リスク状態
定義:親あるいは大切な人と子供との、保護的で養育的な互恵関係の進展を促す相互作用プロセスが、中断しやすい状態

いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は愛着障害リスク状態です。類似の診断に「ペアレンティング障害」という診断があります。
両者はどう違うでしょうか?
まず、その前に「愛着」についておさらいしていきましょう。

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1.愛着形成とは


1)愛着理論(アタッチメント理論)


「やさびと心理学」さんのHPより引用させていただきます。
https://yasabito.com/1975
ボウルビーが提唱した「愛着(アタッチメント)理論」とは、「母親(養育者)の世話・養育を求める乳児の行動」のことです。
母親が主導ではなく、子供が母親に対して求める行動を愛着としています。

愛着行動には3種類あります。※1

子供は「愛着行動を通じて、養育者から安心感や愛護感を得られる」ことを学びます。
つまり、子供は愛着行動をすれば、親にかわいがってもらえることを知るということですね。
こうした子供からの愛着行動を、ボウルビーは「内的作業モデル」と呼びました。
この内的作業モデルは、母子の関係だけでなく、成長過程での人間関係を築く基礎ともなっていきます。

そもそもなぜボウルビーは愛着に着目したのか?
当時ボウルビィは、戦争孤児の「ホスピタリズム(施設症)」を研究していました。ホスピタリズムとは「施設で長期間生活することによって、発達上の問題が生じること」です。

ボウルビィは、この原因を「マターナルデプリベーション(母性剥奪)」だと考えました。つまり母性的な養育の欠如によって、身体的・精神的な症状が出ているとしたのです。

母親のはく奪→養育の欠如→身体的・精神的症状→施設症(施設での生活による発達上の問題発生)
という一連の流れがあると考えたわけですね。

※1 愛着行動の3種類

愛着行動のパターンを3つに分けています。そして子どもが成長して、内面的なアタッチメントが形成・発達すると、愛着行動は減っていくとしました。

発信行動:泣く・笑う・声を出すなど
定位行動 :目で追う・接近するなど
経済的身体接触行動:抱きつく・よじ登るなど

ここまでで「愛着」が赤ちゃんからの働きかけから始まり、親がそれに対応することで形成される信用だとわかりました。

愛着形成には「子供からのサイン」を親が適切にキャッチし、相互の反応によって形成されていくことがわかります。

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2.愛着障害リスク状態の適応


1)子供のリスク因子
・早産、低出生体重児
・保育器での養育
・疾患
・治療、入院で物理的に母子が分離される
・面会制限

2)親のリスク因子
・親の疾患、入院など養育できない
・物質乱用
・育児疲れなど途中からの精神疾患発症

3)環境因子
・プライバシーが守られない環境
・宗教や家のしきたりなどで、本人の意思とは関係なく引き離される
・施設での養育(親からの虐待で児童養護施設に入ることになった場合)

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3.愛着障害リスク状態とペアレンティング障害


この二つの診断は類似していますね。
どのように使い分けていけばよいか、それぞれの定義を比較して一緒に考えましょう。

★ペアレンティング障害
定義:主たる養育者が、一貫した共感的な権限の行使と子供のニーズに応じた適切な行動で、子供に最適な成長と発達を育み、守り、促す能力に限界のある状態

ペアレンティング障害では、両者を引き離す要因がないにもかかわらず、ペアレンティング(育児をすること)に障害をきたしている場合を取り扱います。
子どもにも親にもその要因となるものがあり、以下のようなことが挙げられます。
1)親の要因
・精神疾患
・若年
・望まない妊娠
・被虐待の経験
・低学歴
・片親
・薬物依存
・アルコール依存
・ギャンブル依存
・経済的問題・貧困
・育児への関心がない
・児への関心がない
・自身の欲求を優先する
・児への育児が十分でない
・育児支援を受けられる環境でない(ワンオペ育児)
※ワンオペ育児とは一人で育児と家事を行っている状態のことです
・児に対する過剰な期待
・父母・祖父母・パートナーとの関係
・近隣関係
・役割が重複している(介護と育児を行っているなど)
・社会からの孤立
・キャリアの中断
・危機的状況:病気・兵役・環境変化

2)子の要因
・発達障害
・知的障害
・身体障害
・早産時
・疾患
・親のニーズにこたえられない
・兄弟間の能力の違い

★愛着障害リスク状態
定義:親あるいは大切な人と子どもとの、保護的で養育的な互恵関係の進展を促す相互作用プロセスが中断しやすい状態

愛着障害リスク状態では、児の疾患や早産、親の疾患などで母子分離(入院などによる物理的な隔離)が対象になると思われます。
また、施設に入所している児童も「マターナルデプリベーション(母性剥奪)」により施設病になる可能性がありますから、対象になりえます。

「愛着障害リスク状態」の「危険因子」でも親の薬物依存が含まれていますが、その場合には「ペアレンティング障害」を立案したほうが良いと思われます。なぜなら、愛着障害リスク状態の定義の中に「相互作用プロセスが中断しやすい」という部分があります。中断ということは、その前はちゃんと愛着が形成されている(もしくは大切に思っていることが見受けられる)ことを表しており、薬物依存(その他のアルコール、セックス、たばこ、ギャンブル)などの依存状態にある場合、依存に至るまでにほかにも問題(低年齢、低学歴、被虐待歴、パートナーとの関係、自分の欲求を優先する)があり、初めから育児に向き合えない場合が多いと思うからです。
そのことから、母親の「育児に向き合う姿勢」について介入するなら「ペアレンティング障害」の方が向いていると思います。

こうしたことから、ここでは、物理的に引き離される状態になって愛着形成が中断される場合は「愛着障害リスク状態」を立案し、物理的なことは関係ない場合を「ペアレンティング障害」「ペアレンティング障害リスク状態」を立案していきます。

ペアレンティング障害の診断も参考にしてみてください。

4.目標設定


1)NOC・リンケージによる成果の選択


・親-乳児の愛着行動
・ペアレンティング達成
・コーピング
・早産児の組織
・物質依存度の影響

2)目標設定

目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。

・児を大切に思う言葉や行動が見られる。
・児の養育方法について述べることができる。
・愛着形成に向けた行動をとることができる。

5.看護計画


1)観察計画(OP)

1)子供
・在胎週数
・出生時アプガースコア
・出生体重
・出産後の管理(NICU,GCUの必要性)
・面会の可否、面会の時間
・障害
・疾患

(2)親
・年齢
・発達段階(青年期・若年)
・学歴
・身体的疾患
・入院、治療
・精神疾患
・知的障害
・収入、収入源
・成育歴(親が成長する過程で問題がなかったか、自身が愛情を受けてこなかったためにどのように愛情を注いだらいいかわからない)
・パートナーの有無
・婚姻、再婚
・パートナーとの関係(被支配的な関係(暴力など)・児への虐待)
・育児の協力者の有無
・自己コントロールの可否
 ・薬物依存、アルコール依存、セックス依存、ギャンブル依存など
・児への関心
・育児に対する姿勢
 ・児への愛情
 ・産後うつで可愛がれない
 ・児とのコミュニケーション
 ・児が泣いているときの母親の反応
・育児に対する知識

(3)現在の養育環境
・治安の悪い地域
・紛争がある地域
・貧困
・教育が充実していない地域
・地域柄
・家柄

2)行動計画(TP)

・環境整備を行う
 ・児や親の状態に応じて、静かな環境などを整備する。
・治療方針・ケアの方針に沿って、統一したケアを行う。
 行った内容、会話、反応は記録し、多職種で共有する。
・不足したセルフケアについて介助を行う。
・不安を傾聴する。
・面会の機会を設ける(リモート面会など柔軟に)
・児とのスキンシップを推奨する。
 児のケアに参加してもらえるならば参加してもらう。
 反応を言葉にして伝え、愛着形成を促す。

3)教育計画(EP)

・児の発達についてパンフレットなどを用いて説明する。
・面会に来た際や、お電話する際に、現在の児の様子や反応などをお話しする。
・不安を傾聴し、不安を共感する。※アドバイスなどは控える。
・親の頑張りを認め、ほめる。
・児の障害や生活について(収入や教育)の不安があれば、医師・ソーシャルワーカーに相談するよう勧める。
・育児負担について不安があれば、ソーシャルワーカーを通じて、社会保障の活用を検討する。
・主の養育者以外にも上記の説明を一緒に聞いてもらい、皆で育児を行う環境を整える手助けをする。
・親、家族の強みが生かされるように情報を一緒に整理する。
・親本人が疾患を抱えながら育児をする場合、家族サポートや社会資源を活用できるよう、ソーシャルワーカーに相談するよう勧める。

参照文献

T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
T.ヘザー・ハードマン、上鶴重美、カミラ・タカオ・ロペス. (2021年7月1日). NANDA-I看護診断ー定義と分類 2021-2023 原書第12版. 株式会社 医学書院.
リンダJ.カルペニート. (2014.1.1). 看護診断ハンドブック. 株式会社 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.

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投稿者 FlorenceMYM

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