領域7 役割関係
人々または人々のグループ間の肯定的および否定的なつながりやつきあい、またそうしたつながりが示される手段
類1 介護役割  医療専門家ではないケアの提供者が社会から期待される行動パターン

00056 ペアレンティング障害


看護診断:ペアレンティング障害
定義:主たる養育者が、一貫した共感的な権限の行使と子どものニーズに応じた適切な行動で、子供に適切な成長と発達をはぐくみ、守り、促す能力に限界のある状態

いつもご覧いただきありがとうございます。
今回はペアレンティング障害です。
ペアレンティングとは何でしょうか?まずはペアレンティングについての理解を深めていきましょう。

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1.ペアレンティングとは


「parenting」はペアレントの動名詞(動詞にingをつけて名詞的に使用すること)です。
「parent(ペアレント)」という単語は「両親」という名詞と、「育児をする」という動詞の2つの役割があります。
Parentの動詞を名詞的に使用してparentingとし「育児すること」と訳します。
つまりparentingは「育児をすること」ということになります。

ここでこの「ペアレンティング障害」の診断定義をもう一度見てみます
「主たる養育者が、一貫した共感的な権限の行使と子どものニーズに応じた適切な行動で、子供に適切な成長と発達をはぐくみ、守り、促す能力に限界のある状態」
定義からみると、この診断の対象は、以下のような場合が対象といえると思います。
・子供の養育に必要な愛情に欠ける
・子供の養育に十分な能力がない

では、次に効果的なペアレンティングに必要な愛着形成についておさらいしましょう。

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2.愛着形成とは


愛着理論(アタッチメント理論)


「やさびと心理学」さんのHPより引用させていただきます。
https://yasabito.com/1975
ボウルビーが提唱した「愛着(アタッチメント)理論」とは、「母親(養育者)の世話・養育を求める乳児の行動」のことです。
母親が主導ではなく、子供が母親に対して求める行動を愛着としています。

愛着行動には3種類あります。※1

子供は「愛着行動を通じて、養育者から安心感や愛護感を得られる」ことを学びます。
つまり、子供は愛着行動をすれば、親にかわいがってもらえることを知るということですね。
こうした子供からの愛着行動を、ボウルビーは「内的作業モデル」と呼びました。
この内的作業モデルは、母子の関係だけでなく、成長過程での人間関係を築く基礎ともなっていきます。

そもそもなぜボウルビーは愛着に着目したのか?
当時ボウルビィは、戦争孤児の「ホスピタリズム(施設症)」を研究していました。ホスピタリズムとは「施設で長期間生活することによって、発達上の問題が生じること」です。

ボウルビーは、この原因を「マターナルデプリベーション(母性剥奪)」だと考えました。つまり母性的な養育の欠如によって、身体的・精神的な症状が出ているとしたのです。

母親のはく奪→養育の欠如→身体的・精神的症状→施設症(施設での生活による発達上の問題発生)
という一連の流れがあると考えたわけですね。

※1 愛着行動の3種類

愛着行動のパターンを3つに分けています。そして子どもが成長して、内面的なアタッチメントが形成・発達すると、愛着行動は減っていくとしました。

発信行動:泣く・笑う・声を出すなど
定位行動 :目で追う・接近するなど
経済的身体接触行動:抱きつく・よじ登るなど

ここまでで「愛着」が赤ちゃんからの働きかけから始まり、親がそれに対応することで形成される信用だとわかりました。

愛着形成には「子供からのサイン」を親が適切にキャッチし、相互の反応によって形成されていくことがわかります。
では、相互の反応がうまくやり取りできない場合はどうなるでしょうか?
子供がサインを送れない、親がサインを受け取る気がない・興味がないなどの場合です。
そうした場合がペアレンティング障害につながっていきます。
ペアレンティング障害があると、虐待などのリスクが高まります。児童虐待についても復習していきましょう。

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3.児童虐待


厚生労働省HPより引用しています(児童施策はR5.4から子ども家庭庁に移管)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/dv/about.html

1)虐待の定義

・身体的虐待:
殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など
・性的虐待:
 子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など
・ネグレクト:
 家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など
・心理的虐待:
 言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う など

2)児童虐待の現状

・児童相談所の児童虐待の相談対応件数(平成26年度)は、児童虐待防止法施行前(平成11年度)の7.6倍に増加(88,931件)虐待死はほとんどの年で50人を超えている。

 毎年50人もの子供の命が虐待によって失われていることにあなたはどう感じますか?

3)児童を守る法律

(1)児童虐待防止法
2020.4より施行。親による体罰防止も含まれている。
(2)改正児童福祉法
2020.6成立。
厚生労働省HPでは、児童福祉法改正について以下のように紹介されています。
「これまで児童虐待防止のために種々の対策を講じてきたところですが、虐待による重篤な死亡事例が後を絶たず、また令和2年度には児童相談所の児童虐待相談対応件数が20万件を超えるなど、依然として子ども、その保護者、家庭を取り巻く環境は厳しいものとなっています。例えば、子育てを行っている母親のうち約6割が近所に「子どもを預かってくれる人はいない」といったように孤立した状況に置かれていることや、各種の地域子ども・子育て支援事業についても支援を必要とする要支援児童等に十分に利用されておらず、子育て世帯の負担軽減等に対する効果が限定的なものとなっています。
 こうした子育てに困難を抱える世帯がこれまで以上に顕在化してきている状況等を踏まえ、児童等に対する家庭及び養育環境の支援を強化し、児童の権利の擁護が図られた児童福祉施策を推進するため、要保護児童等への包括的かつ計画的な支援の実施の市町村業務への追加、市町村における児童福祉及び母子保健に関し包括的な支援を行うこども家庭センターの設置の努力義務化、子ども家庭福祉分野の認定資格創設、市区町村における子育て家庭への支援の充実等を内容とする「児童福祉法等の一部を改正する法律」が令和4年6月8日に成立しました。」

4)日本における虐待防止施策(改正児童福祉法に基づく)

愛の鞭ゼロ作戦

前置きが長くなりましたが、ペアレンティング障害の対象について考えていきましょう。

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4.ペアレンティング障害の対象


ペアレンティングは親と子の双方の関係性です。
どちらか一方に不具合があってもペアレンティング障害になりえます。
要因を「親」と「子」のそれぞれから洗い出してみましょう。


1)親の要因
・精神疾患
・若年
・望まない妊娠
・被虐待の経験
・低学歴
・片親
・薬物依存
・アルコール依存
・ギャンブル依存
・経済的問題・貧困
・育児への関心がない
・児への関心がない
・自身の欲求を優先する
・児への育児が十分でない
・育児支援を受けられる環境でない(ワンオペ育児)
※ワンオペ育児とは一人で育児と家事を行っている状態のことです
・児に対する過剰な期待
・父母・祖父母・パートナーとの関係
・近隣関係
・役割が重複している(介護と育児を行っているなど)
・社会からの孤立
・キャリアの中断
・危機的状況:病気・兵役・環境変化

2)子の要因
・発達障害
・知的障害
・身体障害
・早産時
・疾患
・親のニーズにこたえられない
・兄弟間の能力の違い

5.目標設定


1)NOC・リンケージによる成果の選択


・ペアレンティング達成
・安全な家庭環境
・親-乳児の愛着行動
・子供の発達
・介護者の介護能力:直接的・間接的
・虐待の中止
・家族の機能
・役割遂行
・知識:ペアレンティング
・ペアレンティング達成:身体的安全
・不安の自己コントロール
・社会的支援
・身体障害への適応

2)目標設定


目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。

(1)児の目標
・月齢・年齢に応じた身体的・精神的発達が得られる。
・安心して育児を受けられる。
・親に対して不安や意見を述べられる。
2)親の目標
・児の月齢・年齢に応じた養育方法を理解できる。
・児童虐待について理解できる。
・社会資源(フォーマル・インフォーマル)を利用しながら育児に向き合うことができる。
・依存から脱却できる。
・自分自身を大切にできる。
・一人で悩まない。

6.看護計画


1)観察計画(OP)


(1)子供
・年齢
・IQ
・成長と発達
 ・低身長、低体重
 ・言葉を理解しているか
 ・月齢に応じた、落ち着き、態度、理解力、発言、運動であるか
・刺激に対する反応
 ・泣く、笑う、言葉を発する、逃げるなど
・障害
・疾患
・虐待がないか(被虐待の特徴)
 ・痣、体重、服装、清潔
 ・被虐待児で嫌われないように静かに過ごすタイプ:警戒している、極端におびえる、妙におとなしい
 ・被虐待児で嫌われないように好かれようとするタイプ:落ち着きがない、目立とうとする、強く見せようとする、おどけてみせる
 ・暴力的
 

(2)親
・年齢
・発達段階(青年期・若年)
・学歴
・身体的疾患
・精神疾患
・知的障害
・話に対する理解度(話の内容を理解しているか。単に「はい」とうなずいているだけでないか)
・収入、収入源
・成育歴(親が成長する過程で問題がなかったか)
・貧困
・被虐待歴
 ・親の低学歴
 ・宗教
 ・慣習、地域柄
 ・犯罪の多い地域、治安の悪い地域
・パートナーの有無
・婚姻、再婚
・パートナーとの関係(被支配的な関係(暴力など)・児への虐待)
・育児の環境:ワンオペ育児
・育児の協力者の有無
・自己コントロールの可否
 ・薬物依存、アルコール依存、セックス依存、ギャンブル依存など
・児への関心
・育児に対する姿勢
 ・児への愛情
 ・産後うつで可愛がれない
 ・児とのコミュニケーション
 ・児が泣いているときの母親の反応
・育児に対する知識
 ・実際の育児の環境、育児の方法

(3)現在の養育環境
・治安の悪い地域
・紛争がある地域
・貧困
・教育が充実していない地域
・地域柄
・家柄
・パターナリズムを押し付ける慣習(育児は母親が行うもの)

2)行動計画(TP)

・環境整備を行う
 ・児や親の状態に応じて、静かな環境などを整備する。
・被虐待児には、必要な栄養・必要な環境を整え、安心できる環境を作る。
・疾患、知的障害、精神障害などに応じた、服薬介助などを行う。
・治療方針・ケアの方針に沿って、統一したケアを行う。
 行った内容、会話、反応は記録し、多職種で共有する。
・不足したセルフケアについて介助を行う。
・不安を傾聴する。
・児が他者との関係を築けるよう、統一したかかわりをする。
・うつ病など希死念慮がある場合には、言動に注意し、危険なものを遠ざける。
・児とのスキンシップを推奨する。
 反応を言葉にして伝え、愛着形成を促す。

・依存がある場合には、他の診療科や多職種との連携をする。

3)教育計画(EP)

(1)児に対しての教育計画
・不安を傾聴し、不安を共感する。※アドバイスなどは控える。
・落ち着かない・他者へ危害を加える場合には、頭ごなしに叱ったりせず、行動に至った理由を話してもらう。
・少なくともここにいる人たちは、あなたを大切に思っていると伝える。
・わからないことはわからないと言っていいと伝える。
・困っていることや怖いと思っていることがあれば言ってくれればいいと伝える。
・児の頑張りを認め、ほめる。
・新たなことに挑戦したり、手伝いなどを進んで行ったら褒め、自己効力感や責任感を高める声掛けをする。

(2)親に対しての教育計画
・児の発達についてパンフレットなどを用いて説明する。
・児は親を求めていることを説明し、親の役割(自分の欲求を優先する行動に歯止めをかける)について考えてもらう。
・子供の権利、しつけと罰について説明する。
・不安を傾聴し、不安を共感する。※アドバイスなどは控える。
・親の頑張りを認め、ほめる。
・親の働きかけに対する児の反応を一緒に確認し褒めたり喜んだりし、親役割に自信や責任を持たせる。
・児は親を見て育つことを伝える。
・生活について(収入や教育)の不安があれば、ソーシャルワーカーを通じて、社会保障の活用を検討する。
・育児負担について不安があれば、ソーシャルワーカーを通じて、社会保障の活用を検討する。
・仕事と育児の両立ができる可能性について一緒に考える。
・主の養育者以外にも上記の説明を一緒に聞いてもらい、皆で育児を行う環境を整える手助けをする。
・親、家族の強みが生かされるように情報を一緒に整理する。。
・依存に対する自助グループなどの情報を提供する。

子どもの虐待防止センターHPより「ペアレンティングプログラム」
https://www.ccap.or.jp/activity/parenting

参照文献

T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
T.ヘザー・ハードマン、上鶴重美、カミラ・タカオ・ロペス. (2021年7月1日). NANDA-I看護診断ー定義と分類 2021-2023 原書第12版. 株式会社 医学書院.
リンダJ.カルペニート. (2014.1.1). 看護診断ハンドブック. 株式会社 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.
中村丁次. (2010). 系統看護学講座 別巻 栄養食事療法. 医学書院.

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投稿者 FlorenceMYM

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