看護計画 領域2 栄養

NANDA-00002 看護計画 栄養摂取バランス異常:必要量以下

領域2 栄養
組織の維持と修復、およびエネルギーの産生の目的で、栄養素を摂取し、同化し、利用する作用
類1 摂取 食物や栄養素を体内に摂取すること

00002 栄養摂取バランス異常:必要量以下


看護診断:栄養摂取バランス異常:必要量以下
定義:栄養摂取が代謝ニーズを満たすには不十分な状態

いつもご覧頂きありがとうございますm(_ _)m
今回は栄養摂取バランス異常:必要量以下です。
これは、いろんな要因が考えられます。
要因が異なれば対処も異なります。
また、そもそも栄養摂取バランスが必要量以下であることを証明するデータを見つけることができなければなりません。
この診断は、実在型診断ですから、栄養が必要量以下である証拠を提示した上で、そうなった要因を挙げ、対処していくという流れになります。
ただ、食事・栄養などの処方は医師ですよね。栄養が偏っているからといって勝手に与えたりすることはできません。私たちは医師の処方した指示に従って投与し、その効果を見ていく役割です。

今回はちょっと大変な内容ですが、休憩しながらひとつずつ理解して行きましょう。

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1.栄養摂取バランスを見るための所見やデータ


・身長、体重
・幼児期:カウプ指数:{体重g/身長(cm)2}×10  13未満でやせ
・学童期:ローレル指数{体重g/身長(cm)3}×10000  100未満でやせ
・成人:BMI
・体脂肪率:体組成計で測定(食後2時間は開ける)男性は10~19、女性は20~29が健康。それ以下はやせ
・下腿周囲長34cm未満(ふくらはぎの周囲の長さ)、指輪っかテストで隙間ができる
・上腕周囲長21cm未満
・尿ケトン体陽性(栄養障害の指標)
・皮膚のツルゴール低下(シワ、たるみ)
・黄疸(肝機能・胆道系障害)
・嘔気嘔吐、下痢、下血
・食事摂取量が少ない
・水分摂取量が少ない
・活気がない
・顔色不良
・眼瞼結膜蒼白
・血液データ:
・蛋白 TP Alb
・貧血 RBC、Hb、Ht
・脱水 Na Ht ALB TP
・肝機能 AST ALT
・脂質 R-cho TG
・血糖 BS 

 

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2.栄養摂取量低下する要因


要因には、個人的要因(加齢、早産児)、疾患による要因、治療による要因、社会的要因に分けられると思います。
それぞれを見てみましょう。

 
1)個人的要因

①乳幼児
・早産児:哺乳(吸啜)が弱い、活気がない
・先天性疾患:
・口唇口蓋裂
・消化管の奇形
・脳性麻痺
・母乳分泌不足
②高齢者
・加齢による食欲の低下(運動機能低下→お腹が空かない→食べる量を減らす)
・加齢による嚥下機能の低下
・加齢による唾液分泌の低下、歯の欠損
・ADL低下により食料を買いに行けない(調達できない)
③その他
・経済的要因(食事を控えなければならないほど困窮している)
・偏った食事(ファストフードばかり、など)

 

2)疾患や治療による要因

①口腔機能に影響を与える疾患や治療
・がんによる消化管の閉塞
・抗がん剤による口腔内アフタ、腸障害
・放射線治療
・口腔内外傷
・咽頭・喉頭の疾患や手術
・口腔内唾液の分泌低下

②消化器疾患
・クローン病
・潰瘍性大腸炎
・腸閉塞
・壊死性腸炎
・乳糖不耐症
・膵炎(消化液分泌異常、食欲減退)
・逆流性食道炎(食欲減退)
・十二指腸潰瘍

③筋緊張低下、嚥下障害をきたす疾患
・筋ジストロフィー
・ALS
・脳性麻痺
・パーキンソン病

④代謝障害をきたす疾患(ビタミンなどの不足により栄養の代謝に影響がでる
・嘔吐(栄養摂取困難、水分・消化液の喪失)
・下痢(栄養素の吸収障害、水分・消化液の喪失)
・熱傷(水分、間質液の喪失)
・肝障害(ビタミン、脂質代謝、ビリルビン代謝、ホルモン代謝への影響)
・腎障害(水分・電解質バランス異常)

⑤精神疾患
・神経性食思不振症
・過食嘔吐症
・うつ
・ストレス
・嘔気

⑥摂取と消費のバランスが崩れている(エネルギーの消費が供給を上回っている)
・術後
・全身の炎症
・がん
・代謝の亢進(ホルモン異常)

3)社会的要因

①宗教による断食
・イスラム教:ラマダン
・ユダヤ教:年に6回の断食
②スラム街
③食料が乏しい地域

3.栄養摂取消費バランス異常:必要量以下の対象


・年齢に対して低体重
・体重減少
・幼児期:カウプ指数:{体重g/身長(cm)2}×10  13未満でやせ
・学童期:ローレル指数{体重g/身長(cm)3}×10000  100未満でやせ
・成人:BMI 18未満
・体脂肪率:体組成計で測定(食後2時間は開ける)男性は10~19、女性は20~29が健康。それ以下はやせ
・下腿周囲長34cm未満(ふくらはぎの周囲の長さ)、指輪っかテストで隙間ができる
・上腕周囲長21cm未満
・尿ケトン体陽性(栄養障害の指標)
・皮膚のツルゴール低下(シワ、たるみ)
・黄疸(肝機能・胆道系障害)
・嘔気嘔吐、下痢、下血
・食事摂取量が少ない
・嚥下機能障害があり、摂食できていない
・水分摂取量が少ない
・偏った食生活を送っている
・顔色不良
・眼瞼結膜蒼白
・活気がない
・血液データの異常:
 ・蛋白 TP Alb
 ・貧血 RBC、Hb、Ht
 ・脱水 Na Ht ALB TP
 ・肝機能 AST ALT
 ・脂質 R-cho TG
 ・血糖 BS HbA1C
・食料が十分に調達できていない
・食料を調理、摂取するための能力が失われている
・摂取と消費のバランスが崩れている(術後、全身の炎症、がんなどの、消費が多くなる状態)

 

4.目標


1)リンケージによる介入の指標

(NOCの後ろの方に掲載されています)
・栄養状態
・栄養状態:栄養素の摂取
・乳幼児の栄養状態
・嚥下状態
・食欲
・知識:健康的な食事
・体重:体質量

 

2)目標

目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。
・食事をバランスよく摂取できる。
・口腔機能を正常に保ち、必要な栄養を摂取できる。
・活動量を増やすことができる。
・ADL低下で買い物に行けない場合には、ネットスーパーや配食サービスなどを取り入れることができる。

※看護師の目標としては以下のようなものが挙げられると思います。

・経口摂取に限らず、必要な栄養が摂取(あるいは投与)され、心身のバランスが保たれるよう支援する。 (体重、血液データ、身体所見が改善するように計らう)
・バランスよい食事が摂取できるように支援する。
・経口摂取が困難となる原疾患に対する、不快症状を緩和する。(貧血、下痢、嘔吐、嗜眠、疼痛など)
・日中の活動量を増加させ、食欲増進を図る。
・食材や食事が、自身で入手できない場合は、福祉職と連携し、必要なサポートを受けられるように支援する。

5.看護計画


1)観察計画《OP》


・年齢
・バイタルサイン
・意識障害(経口摂取が可能な覚醒状態であるか)
・月齢・年齢に応じた発達(身長・体重)であるか
・家族構成(同居人がいるか、自身で準備できるのか)
・食欲の有無
・食事量、内容、摂取時間
・摂食能力:
 ・スプーンを口まで運べるか
 ・歯はあるか
・嚥下機能障害はないか
・現状の食事は嚥下機能にマッチしているか
・(在宅)自身で食事を準備、調理が可能か
・訪問介護などのサポートの有無
・認知機能
・食べていないことをわすれていないか?
・乳幼児
 ・活気があるか
  ・授乳の姿勢はどうか、吸啜は出来ているか
 ・大泉門の陥没はないか
・腹部症状の有無
 ・嘔気
 ・嘔吐
 ・下痢
 ・下血
・疾患による原因があるか
 ・腸閉塞、潰瘍性大腸炎、大腸がん、
 ・口腔内の異常(抗がん剤によるアフタ)
・血液データ
 ・脱水の兆候
 ・貧血の兆候
・黄疸
・疼痛
・日中の活動量
・尿ケトン
・ツルゴール
・上腕周囲長、大腿周囲長、指輪っかテスト

 

2)行動計画《TP》

①乳幼児
・授乳時の姿勢、ラッチオンなど哺乳のための支援をする。
・体重を測定し、記録する。
②高齢者
・嚥下機能に見合った食形態に変更してもらう。
・義歯を着用する。合わない場合には作り直しや調整をしてもらう。
・ADL低下維持のため、日中は活動を取り入れる。
③食生活
・偏った食事(ファストフードばかり、など)をしている場合には、栄養士の介入を医師に検討してもらう。
・年齢に応じた栄養が摂取できるように、医師に、栄養士介入を検討してもらう。
④摂食に影響を与える疾患や治療
・原疾患の治療を支援する。
抗生剤の投与で下痢になることがあるため注意する。
・症状の悪化があれば医師へ報告する。
・経管栄養、点滴などが開始になったら、注意事項に気を付けて投与する。
変化に注意する。経管栄養開始時には下痢になることがある。
・嘔吐があれば、換気・掃除をして、嘔吐が連鎖しないようにする。
・疼痛や嘔気がある場合には、食前に頓服を使用し症状をコントロールする、食事ができるように計らう。
・口腔内や喉の疾患で飲み込みが困難なときは、栄養補助食品なども医師に検討してもらう。
⑤嚥下障害をきたす疾患
・嚥下機能に見合った食形態に変更してもらう。
・経管栄養、点滴などが開始になったら、注意事項に気を付けて投与する。
変化に注意する。経管栄養開始時には下痢になることがある。
⑥精神疾患
・他職種で介入するため、記録を熟読し、統一した対応ができるように気をつける。
・気分転換活動を取り入れる。
・精神状態にムラがある場合には、言動に注意する。

 

3)教育計画《EP》

①乳幼児
・母親に乳幼児の生理や正常な発育について説明する。
・児の抱き方、ラッチオンなど哺乳について説明する。
②高齢者
・トイレを気にして飲水量を減らさないように説明する。
・ご家族や介助者に、バランスの良い食事の提供について説明する。
・介護サービスの導入についてソーシャルワーカーを通じて説明してもらう。
担当ケアマネがいれば、ケアマネに本人や家族から相談してもらう。
・むせ込みがあったら食事を中断し、連絡するように説明する。
③食生活
・経済的要因(食事を控えなければならないほど困窮している)場合には、
ソーシャルワーカーに相談する。
・偏った食事(ファストフードばかり、など)をしてしまう場合には、
バランスの良い食事について説明する。可能なら栄養士から説明してもらう。
④疾患、治療による栄養摂取低下
・疾患による痛み、嘔気、嘔吐、下痢、下血、喉の痛みなどがあればすぐにナースコールするように説明する。
( 痛み止め、吐き気止めなど頓服を使用したりできます。
どうしても摂取できない場合には、点滴などが検討されます。)
・嚥下機能障害がある場合には、むせ込みに注意し、むせ込んだ場合には
食事を中断してナースコールするように説明する。

  

参照文献

T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
T.ヘザー・ハードマン、上鶴重美、カミラ・タカオ・ロペス. (2021年7月1日). NANDA-I看護診断ー定義と分類 2021-2023 原書第12版. 株式会社 医学書院.
リンダJ.カルペニート. (2014.1.1). 看護診断ハンドブック. 株式会社 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.

ここまでお付き合い頂きありがとうございました(*゚▽゚*)
もっと細かく分類して介入することができると思いますが、全部は書ききれませんでしたのでご了承ください。
ご意見、ご感想などありましたら、下のコメント欄よりお待ちしております。

 

乳幼児の母乳不足に対して介入される場合には「母乳分泌不足」という診断もありますので、参考にしてみてください。

投稿者

florence.no.tomoshibi@gmail.com

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