領域4 活動/休息
エネルギー資源の産生、保存、消費、またはバランス
類4 心血管/肺反応: 活動/休息を支える心肺メカニズム
目次
看護診断:非効果的リンパ浮腫自主管理リスク状態(00281)
非効果的リンパ浮腫自主管理リスク状態は、「リスク状態」なので、現時点では実在でない状態です。今後自己管理できないかもしれないな、、、、という場合に立案していきましょう。まず、実在型のものとの定義を比較してみましょう。
看護診断:非効果的リンパ浮腫自主管理(00278)
定義:リンパ管・節の閉塞や障害に関連した浮腫をかけた生活に固有の症状や治療計画の管理、身体・心理社会・スピリチュアル面へ影響の管理、ライフスタイル変換の管理が不十分な状態
看護診断:非効果的リンパ浮腫自主管理リスク状態(00281)
定義:リンパ管・節の閉塞や障害に関連した浮腫をかけた生活に固有の症状や治療計画の管理、身体・心理社会・スピリチュアル面へ影響の管理、ライフスタイル変換の管理が不十分になりやすく、健康を損なう恐れのある状態
両者を比較するとほとんど同じであることがわかりますね。リスク状態では今後のリンパ浮腫に対して前もって早い段階から説明し自己管理方法を習得して頂く必要がある場合などが適応になると思います。
では、リンパ浮腫の病態からおさらいしてみましょう。
看護計画立案に移りたい方はこちら。
1.リンパ浮腫とは
リンパ浮腫とは、
リンパ管内のリンパ液の輸送障害や、組織間質のリンパ液の蛋白処理能力不全により、リンパ液が貯留し組織障害を起こしたもの。臓器や組織間にリンパ液が蓄積し、徐々に皮膚・皮下組織の肥厚と線維化を起こす。
(1)原因
①原発性(一次性リンパ浮腫):先天性リンパ浮腫、創発性・遅発性リンパ浮腫
②続発性(二次性リンパ浮腫):閉塞性、炎症性(フィラリア)、医原性(手術、放射線治療)
(2)症状
・患肢の浮腫(靴が履きにくくなるなど夕方に増強)
・皮膚の硬結・肥厚(進行すると象皮症)・角化
・リンパ瘻(表皮上にリンパ液が漏れ出してくる)
・感染を伴うと蜂窩織炎。悪化すると壊死。
(3)治療
①保存療法
・患肢挙上
・弾性ストッキングや包帯の着用(締めつけすぎによる皮膚トラブルや循環障害には注意が必要)
・マッサージ療法(リンパドレナージ)
・足浴
・複合的理学療法
②手術療法
・リンパ管静脈吻合
・リンパ節移植術
(4)療養上の注意点
①肥満予防:
浮腫は皮下にリンパ液が貯留するが、皮下脂肪が着くとさらにリンパの流れが悪くなり、浮腫が悪化する。
②感染対策:
浮腫による皮膚の菲薄で皮膚のバリア機能が低下し、皮下に細菌が侵入すると蜂窩織炎になる。皮膚を清潔にし、乾燥を防ぐためにクリームなどを塗布して皮膚の保湿を図る。
③皮膚の保護:
皮膚が薄くなっているのでこすらないように気をつける。
④浮腫軽減策:
浮腫部を挙上しドレナージ。弾性ストッキング着用。弾性包帯装着。
⑤浮腫側での特定部分の圧迫を回避
浮腫のある側の方でカバンをかけたり、同じ動きを繰り返して負担をかけることを避ける。
2.非効果的リンパ浮腫自主管理リスク状態の対象
非効果的リンパ浮腫自主管理では、すでにリンパ浮腫が起きていることが前提です。
非効果的リンパ浮腫自主管理リスク状態では、現在はリンパ浮腫が起きていないが、起こる可能性のある方が対象となります。
その可能性となりうるのは、リンパ浮腫に関わる管理ができないと見込まれる人、リンパ浮腫の管理は適切に行えても十分に効果が出ずに、生活に不自由をきたす恐れのある人が対象となります。では、対象者を具体的に見ていきましょう。
《浮腫をきたす原因がある》
・先天性リンパ浮腫
・創発性・遅発性リンパ浮腫
・閉塞性浮腫:肥満など
・感染症などの炎症性浮腫:フィラリアなど
・医原性浮腫
・手術(大手術やリンパ節郭清)
・放射線治療
《リンパ浮腫を管理する能力が不十分》
・認知機能障害
・理解力不足
・低年齢
・病態を楽観視している。重症化すると壊死など重篤な状態となることへの理解がない。
・弾性包帯の装着がうまくできない、装着をするのが面倒、する時間がない
・患肢の挙上ができない、しない
・定期的に循環や皮膚障害を確認することができない
・肥満(皮下脂肪の貯留はリンパ液の流れに悪影響を与える)
・支援してくれる身近な存在がいない
3.目標設定
目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。
・浮腫の増悪を招く生活習慣を避けることができる。
・蜂窩織炎について述べることができ、症状発症時は医療機関を受診することができる。
・弾性包帯の巻き方を述べることができ、実際に巻くことができる。
※看護師の目標としては以下のようなものが挙げられると思います。
・浮腫の増悪を防ぐ。
・患者にリンパ性浮腫の理解を促し、自己管理方法を身につけてもらう。
・リンパ性浮腫によるボディイメージの変化が受容されるよう、精神的支援を行う。
4.看護計画
1)観察計画《OP》
①自己管理をする能力があるか
・年齢
・認知障害
・理解力
・実行力(理解できても実践できない場合)
・麻痺(浮腫による神経障害、他の疾患による麻痺)による実行力障害
・介護力、支援者
・自己管理能力
②自己管理の理解度について確認する
《上肢》
・患側と健側の周径を測定しているか
・臥床時は患部を挙上しているか
・セルフドレナージをパンフレットに沿って正しく行えているか
・患部を清潔に保持しているか(水虫にも注意)
・乾燥を防ぐために保湿材を塗布しているか
・皮膚の損傷をきたす行為を避けているか(傷口からの感染を防ぐ)
・庭いじりなどではゴム手袋や長靴などを利用する
・擦り傷、切り傷、日焼け、火傷、虫刺され、ペットの掻き傷)
・患側への刺激の強い貼付剤を避ける
・患側への鍼灸治療、刺激の強いマッサージは避ける
・弾性包帯の巻き方:均一に圧がかかるように巻けているか※上肢は自分では巻けないので、介護者の技術を確認
・上肢用スリーブを装着できているか
・適時圧迫解除を行っているか
・弾性包帯やスリーブ装着部に異常がある場合には使用を中断し、医療機関に受診することを理解しているか
・患側の一定部位を圧迫していないか(指輪、ブレスレット、時計など)
・患側で重たいものを持つなどの負担をかけていないか
・適度な運動は有効だが、過度な運動をしていないか(患側に負担がかかる)
・手を握ったり開いたりするのはOK、肘や手首の曲げ伸ばしを行うのもOK、散歩もOK
・テニス、ゴルフ、ダンベルなどはNG
・肥満とならないように食生活に気をつけているか
《下肢》
・患側と健側の周径を測定しているか
・臥床時は患部を挙上しているか
・セルフドレナージをパンフレットに沿って正しく行えているか
・患部を清潔に保持しているか(水虫にも注意)
・乾燥を防ぐために保湿材を塗布しているか
・皮膚の損傷をきたす行為を避けているか(傷口からの感染を防ぐ)
・庭いじりなどではゴム手袋や長靴などを利用する
・擦り傷、切り傷、日焼け、火傷、虫刺され、ペットの掻き傷)
・患側への刺激の強い貼付剤を避ける
・患側への鍼灸治療、刺激の強いマッサージは避ける
・長時間の立ち仕事や座位を避けているか
・正座は避けているか
・部分的な締めつけになりやすい下着や衣類を選択していないか
・適時圧迫解除を行っているか
・弾性包帯の巻き方:均一に圧がかかるように巻けているか
・弾性ストッキングの装着の仕方:均一に圧がかかっているか、シワになっていないか
・弾性包帯やストッキング装着部に異常がある場合には使用を中断し、医療機関に受診することを理解しているか
・弾性ストッキングに破れ等がある場合には交換しているか(圧が均一にかからない)
・患側の一定部位を圧迫していないか(指輪、ブレスレット、時計など)
・適度な運動は有効だが、過度な運動をしていないか(患側に負担がかかる)
・膝の曲げ伸ばしを行うのもOK、散歩もOK
・テニス、ゴルフ、ダンベルなどはNG
・肥満とならないように食生活に気をつけているか
2)行動計画《TP》
・浮腫の程度を確認する
・周径の測定(左右で比較)
・浮腫部位の清潔を保つ
・泡で優しく洗浄。傷つけないようにする。洗浄後は保湿クリームで保護する。
・足浴
・手浴
・浮腫軽減をする。
・患側を挙上する。
・リンパドレナージュをする。
・弾性ストッキングや弾性スリーブの着用を手伝う
・弾性包帯を装着する。
・弾性ストッキングなどは、定期的に除圧し、履き直す介助をする。
・感染兆候がある場合には医師へ報告する。
・患側の点滴の針の刺入を避ける
・適度の運動を促す。
・廊下の歩行、トイレまでの誘導など
・浮腫の悪化や、神経障害、循環障害がないかを定期的に観察する。
・ボディイメージの変容に対する精神的支持を行う(傾聴)。受容の過程まで支援する。
3)教育計画《EP》
・リンパ浮腫について説明する。
・自己管理方法について説明する。
・清潔の保持、保湿
・傷を防ぐ
・患肢の挙上
・弾性ストッキング・スリーブ・包帯の正しい使用法
・弾性ストッキング・スリーブ・包帯の定期的な除圧と観察の方法
・異常のあるとき(浮腫が増強している、熱っぽく赤くなっている)は弾性ストッキングなどの
使用は中止し、受診するように促す。
・生活上の注意
・締めつけの強い下着の着用を避ける
・患肢で重いものを持ったりしない
・患肢の一定部位に圧迫するようなものをつけない(時計、ブレスレットなど)
・肥満を防ぐ必要性
・皮下脂肪の蓄積はリンパの流れを妨げて、浮腫を悪化させる原因となる
・適度に運動する
・循環が良くなる
・散歩などの軽い運動を勧める。患肢に負担のかかる運動(テニス、ダンベルなど)は禁
・家族へも説明し、協力を促す。
・不安や痛みなど、自身で対処できない場合には一人で抱え込まず、相談するように説明する。
参照文献
T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
T.ヘザー・ハードマン、上鶴重美、カミラ・タカオ・ロペス. (2021年7月1日). NANDA-I看護診断ー定義と分類 2021-2023 原書第12版. 株式会社 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
岡庭豊. (平成15年). 病気がみえる VOL.2 循環器. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.
山口徹 北原光夫 福井次矢. (2012). 今日の治療指針.
山内豊明. (日付不明). フィジカルアセスメントガイドブック. 医学書院.
大橋優美子 吉野肇一 相川直樹 菅原スミ. (2008). 看護学学習辞典(第3版). 株式会社 学習研究社(学研).
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