非効果的末梢組織循環(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は「非効果的末梢組織循環」について考えていきます。
この計画は末梢組織への血液循環が悪くなっている状態が対象です。
末梢組織の循環不良の原因といったら、血管が細くなる、心臓の機能が低下して送り出す量が少なくなるなどがすぐに思い浮かぶと思います。それ以外にも、ラインナップを見ると、「あぁ、これもあったか」と思い出して頂けると思います。
では、確認してみましょう。
1.非効果的末梢組織循環の対象
・心不全 ★2
・左心不全徴候:安静時呼吸困難、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、末梢霊感、チアノーゼ、ピンク色泡沫痰(喘鳴・咳嗽もある)、心雑音(3.4音)、血圧低下(心原性ショック)
・右心不全徴候:浮腫(体循環系のうっ血)、胸水、腹水
・右心不全は左心不全に続発して起こることが多い。左心不全→肺高血圧→右心不全の機序
・右心不全が左心不全に続発せず、単独で起こる原因には、三尖弁や肺動脈弁などの弁疾患、肺高血圧・COPDなどの肺疾患がある。
・筋肉減少、皮下脂肪増加
・自律神経失調症
・骨折
・ギプス固定
・二次性レイノー病(原因疾患があり、続発して血流障害を来すもの。レイノー症候群ともいう)★1
・レイノー現象を伴う自己免疫性疾患:
強皮症、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、関節リウマチ、多発性筋炎・皮膚筋炎
・閉塞性動脈疾患:ASO(閉塞性動脈硬化症)、バージャー病
・糖尿病
・血液疾患:クリオグロブリン血症
・振動障害(工具・機械・装置の振動による末梢血管の内膜障害と、末梢神経障害)→レイノー現象
・薬物副作用
・原発性レイノー病(原因となる基礎疾患が存在しないもの)★1
・すでに末梢組織循環障害の症状が見られている
・末梢の脈拍欠損
・毛細血管再充満時間 3秒以上
・四肢血圧の低下
・6分間歩行で歩行距離が標準以下(成人は400~700m)
・
★1レイノー病とは
1)病態
寒冷刺激や精神的ストレスが誘引となり、指趾の小動脈の攣縮をきたす。小動脈の攣縮は、血管弛緩因子と血管収縮因子の不均衡に起因する。この小動脈の攣縮により皮膚が白や青紫に変化するものをレイノー現象という。
原因となる基礎疾患が存在せず本体不明のものを原発性レイノー病といい、基礎疾患を有するものを二次性レイノー病という(レイノー症候群)。
2)症状
・指先のある部分から先が白くなる。
・血流が戻ると赤くなる
・しびれや痛みを伴う
3)治療
・手指を冷やさない(手袋)
・冷たい水御使用しない
・ストレスや過労を避ける
・薬物治療(保険適応外のものもある):血管拡張効果薬(Ca拮抗薬)、抗血小板薬
・潰瘍がある場合はリプル静脈注、プロスタンディン静脈注射
★2 看護計画「心拍出量減少」
その他関連の計画を参考にしてみてください
3.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・末梢を冷やさない方法を取り入れることができる。
・処方されている内服薬を用法容量通りに服用できる。
・処置の自己管理ができる。
看護師を主語にする場合にはつぎのようになるとおもいます。
・レイノー現象について理解し、悪化を防ぐ生活習慣を身につけてもらう。
・原因となる基礎疾患の管理を支援する。
・呼吸苦、痛みなどの不快症状の緩和に務める。
・不安を傾聴し、不安の緩和に務める。
4.看護計画
1)観察計画《OP》
・年齢、性別
※高齢で筋肉量減少
※膠原病は女性に多い
・既往歴、現病歴
※心疾患、弁疾患
※肺高血圧、COPDなどの肺疾患
※糖尿病
※血液疾患、凝固系異常
※閉塞性動脈疾患
※自己免疫性疾患:SLE、強皮症、結合組織病、リウマチ、多発性筋炎、皮膚筋炎
※振動障害(職業によるもの)
※ギプス固定、骨折
※自律神経失調症
・レイノー現象
・寒冷刺激によりレイノー現象出現。刺激除去で血流がもどる
・末梢冷感、チアノーゼ
・体重、肥満度、生活習慣:油や糖を多く摂取する生活、喫煙、過度な飲酒や毎日の飲酒
・バイタルサイン
・血圧、脈圧、左右差、脈拍欠損
・心拍数(徐拍、頻拍)、脈拍数(徐脈、頻脈)、心拍と脈拍の差
・SPO2
・聴診:肺雑音(肺水腫)、心雑音(弁疾患3.4音)
・身体所見
・浮腫、チアノーゼ、末梢冷感
・画像検査
・XP、CT:胸水、腹水、骨折など
・負荷試験
・6分間歩行
・筋力:MMT
・ADL、IADL:自力でどこまで出来るか、自分で行う意欲があるか
・介護者の介護力
・自覚症状:
・呼吸困難、ピンク色泡沫痰、湿性咳嗽、
・末梢の感覚障害
・意識障害(高血糖など)
・イベント:抜歯(心房で菌塊を作る可能性)、術後(下肢DVT可能性あり弾スト着用)
・静脈血データ
・出血傾向:PLT(血小板)、PT(プロトロンビン時間)、APTT(部分トロンボプラスチン)
・高血糖:GLU、HbA1C
・中性脂肪、総コレステロール、HDL、LDL
・出血傾向を示す症状
・出血、点状出血、紫斑、血尿、血便、止血困難
・高血圧を示す症状
・鼻出血、血圧上昇など
・心原性ショック症状
・血圧低下、意識消失、尿量減少など
・心電図
・不整脈
・内服薬(6Rに添ってみてみる。どのようなものを飲んでいて、どのようなリスクがあるか確認)
・チアノーゼ、抹消冷感
・治療計画
・内服薬
・認知障害、コンプライアンス
2)行動計画《TP》
・安全・安楽・自立に配慮したケアを行う。
・モニタは必要最小限にし、モニタ装着時は不整脈などの異常の早期発見をする。
・チューブ類を整理し、屈曲や抜去が起こらないようにする。
・安静度を守れるように環境を整える。
・内服薬の介助・管理をする。
・足浴、手浴、マッサージなどで、四肢の循環をよくする。
・末梢の感覚がない場合には、ぶつけないように気をつけてもらい、履物などの配慮をする。また、転んだりしないように環境整備を行う。
・出血傾向や、抗血小板薬内服患者は、転倒やぶつけたりしないように注意する(ほかの患者はぶつけていいわけではない)。
・シリンジポンプの使用法、交換手順を再確認し、フリーフローに注意する。
・酸素使用中は、酸素の投与デバイス・投与量・意識状態を確認する。酸素が確実に投与されているか、ルートをたどって確認する。引っ張らないように環境整備を行う。
・良肢位保持のための他動運動(関節可動域運動)を行う。
・ADLの低下が起こらないよう、生活リハビリの観点で、自身ができることは自身で行ってもらうように、また自身で行えるような環境整備を行う。
必要に応じてタッチアップやL字柵、ポータブルトイレなどを設置する。
・苦痛症状(呼吸苦、疼痛)がないか確認し、苦痛の緩和に務める。不安があれば傾聴し、不安の軽減に努める。
・症状で、清潔ケアや食事などの必要なことが自身でできない場合には、援助する。
・受傷によりできなくなったセルフケアを補う。
・自宅でも自身でできることを支えるための環境整備をおこなう。ソーシャルワーカー、ケアマネージャーに相談し、必要なサービスが受けられるように調整する。
3)教育計画《EP》
・本人、介護者にレイノー現象について説明する。
・悪化しないために自宅で守ってもらいたいことを説明する。
・洗い物などはぬるま湯を使用して冷やさないようにする。
・手袋や靴下で温める。
・ストレスや過労を避ける
・足浴、手浴で循環をよくする。湯船で温まる。
・手足の感覚が鈍い場合には、ぶつけないように気をつける。ぶつけたところから菌が入ると大変なことになる。
・皮膚、爪を清潔に保ち、靴はサイズのあったものを着用する
・低温やけどに注意する(湯たんぽなどの使用時)
・内服は自己中断せず、処方されたものを内服する。
・自覚症状(疼痛、動悸、息切れ、呼吸苦など)があったらナースコールで知らせるように説明する。
・痛みは我慢せず、知らせるように説明する。必要に応じて鎮痛薬が使用できることを説明する。
・治療計画の目的、目標、治療経過について説明する。
・生活習慣改善の必要性がある場合には、医師、栄養士、理学療法士の方針を確認し、方針に沿った対応や説明をする。
・チューブ類の抜去に伴う危険について説明し、抜去が起こらないような療養方法について説明する。
・酸素使用時は火気厳禁であることを説明する。
・酸素ボンベへの接続、使用法を説明する。
・自宅で酸素を使用する場合も火気厳禁は同様で、最低でも火気より2mは離れる必要があると説明する。
・ライフスタイル変化への適応のための助言を行う。
・自宅での生活に必要なサービスが受けられるように、ソーシャルワーカー、ケアマネージャーに相談する。
・退院後の生活で、いつもと違う症状が現れた時には病院受診するように説明する。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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