領域11 安全/防御

類2 身体損傷  身体への危害または傷害

00044 組織統合性障害

看護診断:組織統合性障害

定義:粘膜、角膜、外皮系、筋膜、筋肉、腱、軟骨、関節包、靭帯に損傷のある状態

組織統合性障害の定義「粘膜、角膜、外皮系、筋膜、筋肉、腱、軟骨、関節包、靭帯に損傷のある状態」を見ますと、多くの器官の損傷を包括しており、これらの損傷が同時に起こり得るのは通常では考えにくいですね。考えられるとすれば、火災時の熱傷、高エネルギー外傷(交通外傷や高所からの落下、飛行機事故)、自然災害(自身・津波・雷など)などが思い浮かびます。

以下の計画も参考にしてみてください

 

1.看護診断「組織統合性障害」の適応

〈表皮系〉

褥瘡(「皮膚統合性障害」も参考にしてみてください)皮膚統合性障害 看護診断 – フローレンスのともしび (florencenotomosibi.com)

熱傷(「熱傷凍傷リスク状態」も参考にしてみてください)熱傷凍傷リスク状態 看護計画 – フローレンスのともしび (florencenotomosibi.com)

・表皮への刺激(カプサイシン、貼付薬)

・投与される薬剤(抗がん剤によるアフタ、脱毛)(薬疹の出現)

・腸内細菌感染(クロストリジウムディフィシルによる偽膜性腸炎)

・おむつの着用(乳幼児、高齢者)

・自力体位変換の不可能、介護者の知識不足による体位変換の未実施

・ラテックスアレルギー、食物アレルギーによる発疹や粘膜浮腫

・医療留置物を引っ張ることでの組織損傷や、固定する際の皮膚トラブル、自己抜去による損傷

 (気管チューブ、ドレーン、CV、DIV、膀胱留置カテーテル、胃瘻、膀胱瘻)

・角膜炎

〈筋骨格系〉

・変形性膝関節症・変形性股関節症・変形性肘関節症

・骨折

・靭帯断裂

〈そのた〉

・栄養状態の不良(ビタミン不足など皮膚や粘膜再生への影響)

・低栄養

・肥満

・電解質、水分異常

・表皮系への循環不全、末梢神経障害

・糖尿病

 

2.目標設定

リンケージによる目標設定(NOCの後半に載っています)

 ※「リンケージ」は「NANDA」「NIC」「NOC」をつなぐ役割があります(リンクは「連結」の意味)。

1)リンケージ上の成果

・組織の統合性:皮膚と粘膜(1101)

(定義:皮膚と粘膜の組織に異常がなく生理的機能が正常であること)

・創傷治癒:一次癒合(1102)

(定義:創傷の縫合後の細胞や組織の再生の程度)

・熱傷からの回復(1107)

(定義:重度の熱傷に伴う心身の治療の程度)

・栄養状態(1004)

(定義:代謝ニーズを満たす栄養素が摂取され、吸収されている状態)

・オストミーのセルフケア(1615)

(定義:排泄のためにオストミーを継続的に管理する個人の行動)

 ※オストミーは人工肛門、人工膀胱などの人工的な排泄路のことです。

・感覚機能:触覚(2400)

(定義:皮膚刺激を正しく知覚する能力)

 

2)目標

目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。

・熱傷の経過で、異常をきたしていたら、医療者に相談できる。

・ストマの適切な管理ができる。

・ギプス固定時の異常に気付いたら、医療者に相談できる。

・皮膚、筋、骨に痛み、熱感、腫れ、赤みがあるときには、医療者に相談できる。

※看護師の目標としては以下のようなものが挙げられると思います。

・皮膚を清潔に保ち、感染を予防し、また適切な処置を継続することで、組織の治癒を促進する。

・ストマを適切に管理し、新たな感染や皮膚トラブルを予防する。

・熱傷では、治癒過程に合わせた、生活援助を行い、組織の治癒を促進する。

 

3.看護計画

 

1)観察計画《OP》

〈組織の統合性:皮膚と粘膜〉〈感覚機能:触覚〉

・皮膚温

・感覚

・ツルゴール反応

・皮膚の統合性

・異常な色素沈着

・皮膚の病変

・粘膜の病変

・瘢痕組織

・皮膚の剥離

・紅斑

・蒼白

・壊死

・硬結

・皮膚の感覚刺激(鋭い刺激・鈍い刺激・温度・振動・圧力・しびれ・感覚がない麻痺)

〈創傷治癒:一次癒合〉

・皮膚の接合

・創部周縁の接合

・瘢痕形成

・膿性の排液

・漿液性排液

・血性排液

・ドレーンからの排液(量、色、性状)

・周辺皮膚の発赤

・周辺皮膚の挫傷

・創部周囲の浮腫

・皮膚温の上昇

・創部の悪臭

〈熱傷からの回復〉

・組織の肉芽形成

・熱傷部位の組織潅流

・治癒の割合

・体温の安定

・電解質の安定

・体液バランス

・セルフケア能力

・四肢の関節の動き

・歩行状態

・容姿の変化に対する心理的反応(受容過程)

・身体の変化に対する心理的な適応

・疼痛

・鎮痛薬(薬剤、使用頻度)

・酸素飽和度

・呼吸困難

・体重減少

・創部感染(悪臭・排膿・発赤・腫脹・熱感・疼痛)

・水疱

・熱傷部位の浮腫

・組織の壊死

・全身性の浮腫

・胃腸への合併

・尿量減少

・熱傷部位の皮膚移植の必要性

〈栄養状態〉

・栄養摂取量、食形態

・消化管の疾患

・食物摂取

・水分摂取

・エネルギー

・BMI

 ※BMI計算方法:体重(kg)÷身長(m)×身長(m)

 ※BMI正常:18.5異常25未満(18.5未満はやせ)(25以上は肥満)

・水分補給・血液データ

・Alb(基準値:3.8~5.3g/dl)

・TP(基準値:6.7~8.3g/dl)、Hb、

・TG中性脂肪(基準値:34~149mg/dl)

・HDL善玉コレステロール(基準値:46~96mg/dl)

・Hb血色素(基準値:男性13~17、女性11~15g/dl)

〈オストミーのセルフケア〉

・ストマ周囲の皮膚状態

・ストマ内の排泄物の正常・量

・食事内容

・水分量

・排ガス(人工肛門の場合)

 

2)行動計画《TP》

・ストマ交換時は、リムーバーを使用しながら、皮膚を剥離させないように交換する。また、装着前に皮膚保護剤を使用し、皮膚損傷を防ぐ。

・熱傷では、重症度により治療計画が異なるため、治癒過程に応じて、感染対策や全身管理、清潔ケアをおこなう。

・熱傷(気道熱傷後)で呼吸困難のある場合には、呼吸状態を細やかに観察し、異常があればすぐにリーダーと医師へ報告する。

・重症な熱傷の場合には全身管理が必要で、体液の喪失によるショックや、表皮の欠損や機能異常による感染と循環不全などの観察を行い、異常があればリーダーと医師へ報告する。

(熱傷凍傷リスク状態を参照して下さい 熱傷凍傷リスク状態 看護計画 – フローレンスのともしび (florencenotomosibi.com)

・術後や外傷などの創部がある場合には、創部の清潔を保持し、医師の指示に従ってガーゼ交換や南高処置などを行う。

・食事摂取量が少ない場合には、食形態の工夫や、補助食品の追加などで、食事摂取量の増加を図る。

・痛みのある場合には、鎮痛剤を使用する。

・点滴や酸素などのルート類の整理を行い、自己抜去や転倒転落を防ぐ。

 

3)教育計画《EP》

・異常があれば、すぐにナースコールで知らせて下さるように説明する。

・疼痛があれば鎮痛薬を使用できることを説明し、我慢せずにナースコールを押すように促す。

・創部(シャワーの許可が出ているような場合)には清潔な手で触れるように説明する。

・まだ癒合していない創部には触れないように説明する(触っていいのは包帯の上からのみ)。

・ストマの交換手順や管理方法を説明する。また、異常時には、病院を受診し、適切な処置を受けるよう説明する。

・組織の治癒のための栄養摂取の重要性を説明する。

 

参照文献
T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.
山口徹 北原光夫 福井次矢. (2012). 今日の治療指針.
山内豊明. (日付不明). フィジカルアセスメントガイドブック. 医学書院.
青柳智和. (2018). 洞察力で見抜く急変予兆~磨け!アセスメントスキル~. 株式会社ラプタープロジェクト.
大橋優美子 吉野肇一 相川直樹 菅原スミ. (2008). 看護学学習辞典(第3版). 株式会社 学習研究社(学研).

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投稿者 FlorenceMYM

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