目次
心臓組織循環減少リスク状態(看護計画)
いつもご覧いただきありがとうございます。
今回は「心臓組織循環減少リスク状態」を取り上げます。
心臓組織循環減少とは、「冠動脈の血液循環が減少しやすい」状態のことで、簡単に言うと冠動脈の虚血のことですね。
心疾患は2020年の死因順位の第2位ですから、臨床でもよくお目にかかる疾患です。
では、冠動脈の虚血=「虚血性心疾患」についておさらいしましょう。
お急ぎの方は下のジャンプより目的位置に移動してください。
1.虚血性心疾患
1)虚血性心疾患の分類
①狭心症:労作性狭心症、不安定狭心症
②無症候性心筋虚血
③急性冠症候群
2)心筋虚血の原因
(1)心筋への酸素供給量減少→酸素がとどかない
①冠動脈壁の血栓形成(プラーク)
②冠動脈の器質的病変(動脈硬化、川崎病、血管炎、大動脈解離)
③冠動脈の機能的病変(冠攣縮:スパスム)
④冠動脈潅流圧低下→冠動脈へ送り出す力が弱くなった状態(大動脈弁閉鎖不全、心拍出量減少)
(2)心筋の酸素消費量増加→酸素は届くけど、たくさん使ってしまう
①甲状腺機能亢進
②貧血
3)虚血性心疾患の危険因子
・加齢(男性≧45歳、女性≧55歳)
・冠動脈疾患の家族歴
・喫煙
・高血圧(≧140/90mmHg)
・肥満(BMI≧25)
・耐糖能異常
・高LDLコレステロール血症
・高中性脂肪血症(≧150mg/dl)
・低HDLコレステロール血症
・メタボリックシンドローム
・精神的、肉体的ストレス
・タイプA型行動(積極的で時間切迫感、競争心を持つ性格)
4)虚血性心疾患の経時変化
①心筋虚血→②心室拡張不全→③左室収縮不全→④心電図異常→⑤狭心痛
5)心筋虚血の検査
(1)血液検査:CK、CK-MB、トロポニンT・I、H-FABP)
(2)12誘導心電図
(3)ホルター心電図
(4)負荷心電図
(5)心エコー
(6)心臓核医学検査
(7)冠動脈造影
(8)冠動脈CT
(9)スワンガンツ
6)治療
(1)労作性狭心症の治療
①初期治療:労作制限、増悪因子の除去(貧血、発熱、低酸素、禁煙、血圧管理、耐糖能是正、脂質異常症是正、適正体重維持)
②食事療法
③薬物療法
・発作時:ニトログリセリン舌下・スプレー
・非発作時:硝酸薬、β遮断薬、ニコランジル(kチャネル開口薬:冠動脈攣縮抑制、シグマートなど)、抗血小板薬、Ca拮抗薬
④経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
⑤冠動脈バイパス術
(2)不安定狭心症の治療→急性心筋梗塞への進展予防を目標に治療する
①入院管理、モニタ管理、労作制限
②誘引因子の除去(低酸素、禁煙、血圧管理、耐糖能是正、脂質異常症是正、適正体重維持)
③薬物療法
・硝酸薬、β遮断薬、ニコランジル(kチャネル開口薬:冠動脈攣縮抑制、)、Ca拮抗薬
・ヘパリン
④冠動脈造影→経皮的冠動脈インターベンション(PCI)
⑤冠動脈バイパス術
(3)冠攣縮性狭心症
①薬物療法
・発作時:ニトログリセリン舌下・スプレー
・スパスム予防:硝酸薬(長時間作用型、フランドルテープなど)、ニコランジル(kチャネル開口薬:冠動脈攣縮抑制)、Ca拮抗薬
・β遮断薬は禁忌!!!(スパスム(攣縮)を誘発してしまう)
2.心臓組織循環減少リスク状態の適応
(虚血性心疾患があるひと)
・労作性狭心症
・不安定狭心症
・冠攣縮性狭心症
〈虚血性心疾患のリスクがある人〉
・加齢(男性≧45歳、女性≧55歳)
・冠動脈疾患の家族歴
・喫煙
・高血圧(≧140/90mmHg)
・肥満(BMI≧25)
・耐糖能異常
・高LDLコレステロール血症
・高中性脂肪血症(≧150mg/dl)
・低HDLコレステロール血症
・メタボリックシンドローム
・精神的、肉体的ストレス
・タイプA型行動(積極的で時間切迫感、競争心を持つ性格)
3.目標設定
目標は患者さんを主語にして立てます。
・虚血性心疾患について理解できる。
・ホルター心電図の方法が理解できる。
・服薬の自己管理ができる。
・発作時の対応が理解できる。
・生活習慣を見直すことができる。
看護師を主語にする場合にはつぎのようになるとおもいます。
・バイタルサイン、モニターで異常の早期発見に努める。
・胸痛、放散痛、心不全徴候、心電図などを観察・記録し、異常の早期発見に努める。
・冠動脈疾患のリスクを除去するための生活習慣改善に導くことができる。
・呼吸苦などの不快症状の緩和に務める。
・不安を傾聴し、不安の緩和に務める。
4.看護計画
1)観察計画《OP》
・年齢、性別
・既往歴、現病歴
・喫煙、ブリンクマン指数(一日の喫煙本数×喫煙年数—-高いほどよくない)
・生活習慣:油や糖を多く摂取する生活、喫煙、過度な飲酒や毎日の飲酒
・体重、肥満度(Pickwick症候群リスクの肥満かどうか)
・バイタルサイン
・血圧、脈圧、左右差
・心拍数(徐拍、頻拍)、脈拍数(徐脈、頻脈)、心拍と脈拍の差
・心系数
・心雑音
・SPO2
・静脈血データ
・心筋障害マーカー;CK、CK-MB、トロポニンT、H-FABP)
・血糖:GLU、HbA1C
・中性脂肪、総コレステロール、HDL、LDL
・呼吸
・呼吸数、呼吸の深さ・リズム
・無呼吸(安静時、睡眠時)
・呼吸音の左右差
・肺雑音
・心電図
・不整脈
・ホルター心電図
・負荷心電図
・ピンク色泡沫状痰(心不全徴候)
・XP
・心胸比
・心エコー
・心臓核医学検査SPECT
・冠動脈造影、冠動脈CT
・内服薬(6Rに添ってみてみる。どのようなものを飲んでいて、どのようなリスクがあるか確認)
・チアノーゼ、抹消冷感
・自覚症状
・労作時の狭心痛
・放散痛(肩、歯など)
・動悸、冷汗、意識が遠のくなど
・嘔気嘔吐
・治療計画
・PCI、バイパス術などの観血的治療を行う場合には、抗凝固薬の休薬期間の確認
・術前検査でのリスク確認
・(本人または家族)同意書の確認:検査同意、麻酔同意、手術同意、抑制同意など
・DNARの確認
・術前、術中、術後の経過
・バイタルサイン
・出血量、排液量、尿量
・挿入物
・抜管しないまま帰室した場合:人工呼吸器装着中
・呼吸器の設定
・回路異常
・挿管チューブカフ圧、挿管固定部トラブル
・酸素投与量
・鎮静剤、鎮痛剤の使用の有無
・モニタ異常値の有無(ECG、SPO2、ETCO2、P、BP)
・酸素投与
・投与デバイス、投与量(安静時・労作時)、SPO2、血ガスデータ、意識状態
・酸素ボンベの使用状況、本人が交換できるか
・スパイロメトリー:一秒率、肺活量
・循環動態の指標となる数値や症状
・チアノーゼ
・尿量減少、
・湿性咳嗽
・喀痰:量、性状(色、粘稠度)
・水分出納バランス
・内服薬
・認知障害、コンプライアンス
・生活習慣
・精神状態、ストレス(過換気症候群のリスク)
2)行動計画《TP》
・安全・安楽・自立に配慮したケアを行う。
・チューブ類を整理し、屈曲や抜去が起こらないようにする。
・安静度を守れるように環境を整える。
・入院時にタバコ、火気類を預かる。(持ってきている場合には、院内に持ち込まないように本人、家族に説明し、持ち帰ってもらう)
・ホルター心電図を装着している場合には、イベントごとに専用用紙に記入する。(排泄、入浴、食事など)
・発作時の指示を確認しておき、発作が起きた際には速やかに投薬ができるよう準備する。
・貼付薬、内服薬の介助・管理をする。
・検査や術前検査の準備を行う。クリニカルパスがあれば、パスに沿って、シャワーや剃毛など行う。
・術前や検査前に休薬が必要な薬は、指示書で確認し、抜薬する。
・術後ベッドを作成する。酸素、モニター、電気毛布、フットポンプ、点滴棒、シリンジポンプ、輸液ポンプなど
・やむを得ず抑制をする場合には、勤務帯ごとに抑制による皮膚トラブルなどがないか確認する。また、毎日、抑制の必要性を評価し、外せる場合には速やかに外す。
・人工呼吸器使用中は、設定値、実測値をダブルチェックする。回路の破損を確認する。加湿の蒸留水の量を確認する。挿管チューブの挿入長・カフを確認する。挿管チューブにテンションがかからないように固定する。
・人工呼吸器使用に伴う鎮静を行っている場合には鎮静スケールによる評価を行う。スケールの指示に従い、適宜鎮静剤の量を調整する。モニターの値を確認する。異常値があればリーダーと主治医へ報告する。
・挿管チューブ挿入中は、マウスケアを2人で行う。固定による皮膚トラブルを観察する。
・シリンジポンプの使用法、交換手順を再確認し、フリーフローに注意する。
・睡眠時無呼吸症候群の夜間BiPAP使用導入時は、必要性を説明しながら、患者が受容できるように関わる。設定、酸素量、回路の確認など安全に使用できるようにセッティングする。
・酸素使用中は、酸素の投与デバイス・投与量・意識状態を確認する。酸素が確実に投与されているか、ルートをたどって確認する。引っ張らないように環境整備を行う。
・ボンベの残量を確認し、残量が少ない場合には交換する。自己管理をしている患者さんでも、使用時に声をかけ量を確認する(ときどき開栓を忘れたまま歩いていることがある)。
・医師の指示に従い、決められた時間に尿量の測定を行う。CVP測定、インアウトバランスを確認し、記録する。
・良肢位保持のための他動運動(関節可動域運動)を行う。
・苦痛症状がないか確認し、苦痛の緩和に務める。不安があれば傾聴し、不安の軽減に努める。
・胸痛、動悸、呼吸苦などの不快症状で、清潔ケアや食事などの必要なことが自身でできない場合には、援助する。
3)教育計画《EP》
・自覚症状(疼痛、動悸、息切れなど)があったらすぐに知らせるように説明する。
・痛みは我慢せず、知らせるように説明する。必要に応じて鎮痛薬が使用できることを説明する。
・治療計画の目的、目標、治療経過について説明する。
・治療上の守ってもらいたい事を説明する。
・治療計画上で休薬や禁煙など自身での管理が必要な項目について説明する。
・造影検査、手術、麻酔、抑制の必要がある場合には、説明し同意書を記入して頂く(基本的には医師が行う)。
・検査や手術に向けての不安を傾聴する。経過を説明し、必要に応じて対処が出来ることを説明する。
・本人と家族に必要時は抑制をさせてもらう旨を説明し、承諾を得る。
・抑制の開始時には、ご家族に、理由・部位・使用時間(3要件)を説明する。
・チューブ類の抜去に伴う危険について説明し、抜去が起こらないような療養方法について説明する。
・(生活習慣病が起因の、動脈硬化→冠動脈疾患の場合は)食事療法、運動療法など生活習慣改善のための説明を行う。
・酸素使用時は火気厳禁であることを説明する。
・酸素ボンベへの接続、使用法を説明する。
・自宅で酸素を使用する場合も火気厳禁は同様で、最低でも火気より2mは離れる必要があると説明する。
・浮腫がある場合には、皮膚が弱くなっていることを説明し、ぶつけたりしないよう気をつけてもらう。
・内服治療では、医師の指示に従い、用法用量・期間を守る必要性を説明する。
・タバコ、火気類を院内に持ち込まないように本人、家族に説明する。
・発作時の対応(ニトログリセリンの使用)について説明する。
お付き合い頂きありがとうございました。
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