領域11 「安全/防御」

類6 体温調節  有機体を守る目的で体内の熱とエネルギーを調整する生理的過程

看護診断「高体温」 00005

看護診断:高体温

定義:体温調節障害により、深部体温が1日の正常範囲上回っている状態

 

.体温の正常値とは?

1)体温の正常値:

体温の正常値は明確な定義がありません。(一応、感染症法の届け出基準では37.5℃以上を発熱といい、38.0℃以上を高熱と定義しています。)

2)平熱の平均:

①日本人の平均体温は36.89℃±0.34℃(テルモ体温研究所HPより抜粋:https://terumo-taion.jp/health/temperature/01.html)で、7割の方が36.6℃から37.2℃の間に該当する。→37.0℃でも平熱ということ。特に小児は体温が高い。

②平熱は個人差がある:平熱は個人差があり、一概に線引きすることはできない。その人の平熱を知ることが大切。平熱を知る際には、同じ条件で複数回測定する必要がある。

③平熱を同じ条件で複数回測定する理由:

・体温には日内変動がある。朝が最も低く、午後3~4時(15:00~16:00)が最も高くなる。だが、その変動幅は1℃以内。

・測定部位(耳、脇、口、肛門)によっても測定値は変わる。

・女性は月経周期によっても変化がある。(排卵後に高温相に入る。だいたい14日間)

3)発熱の定義:

平熱より1℃以上の体温上昇のこと。

平熱が35.8℃の人→36.9℃でも(36.0℃台なのに)発熱。

平熱が37.1℃の人→38.0℃では平熱。38.2℃以上で発熱となる。

体温の中枢温は37.0℃前後。37.0℃前後で酵素の活性が最も高くなる。

→酵素は生体反応の「触媒」となるもので、エネルギーの産生や、組織の活動のためのエネルギーの消費に必要なもの。触媒とは、ある化学反応を促進するもの(それがあることによって反応を早めることができるもの)。

→酵素が活発に動けるように、中枢温は37.0℃になるように調整されている(視床下部の体温中枢に)。ホメオスタシスの一種(恒常性)です。

  

2.高体温

1)定義

・高体温には、うつ熱と発熱がある。

平熱より1℃以上の体温上昇で「発熱」である。

感染症法では「38.0℃以上を高熱」と定義している。(平熱が37.0℃付近の人では、38.0℃の体温でも平気な場合もある。)

・一般社団法人日本中毒学会では高体温症を次のように定義している。

http://jsct-web.umin.jp/wp/wp-content/uploads/2016/06/taionkanri.pdf

深部体温(昼間)は普通 36から 37.5であるが、これを越えた場合を「高体温症 (hyperthermia)」であり、特に深部体温が 40.0以上の場合を「重症高体温症」と定義す る。高体温を来す原因は、①過敏反応、②体温調節機構の変化(傷害)、③薬物投与に直 接関連したもの、④薬物の直接的薬理作用によるもの、⑤特異的反応がある。また高体温 に伴う重篤な合併症は共通しており、①横紋筋融解症 (rhabdomyolysis)、②DIC、③高 K 血症、④腎不全、⑤代謝性アシドーシス、⑥肝不全などがあり、時として致死的な場合も ある」

→ポイントは「深部体温」と「昼間」という条件ですね。直腸温が中枢温に近いです。周手術期ですと、体温計付き膀胱留置カテーテルなどで、心不全の急性期のモニタリングではスワンガンツカテーテルなどでより正確に深部体温を測定できます。

・「うつ熱」は、熱中症などの、外気温が高いことで熱の放散が障害されて体内に熱がこもること。また、激しい運動で多くの熱が作られて放散しきれない状態もうつ熱に該当する。

・中枢温が維持されるのは、脳の活動を維持するためであるが、高温となると脳への影響が出る。脳は44℃以上の熱で障害される。

2)高体温の原因

感染症、ガン、ストレス、膠原病、ホルモン異常、熱中症

①感染症:

(感染症での発熱は、視床下部が体温を故意に上げている(セットポイントの上方移動)。 体温が上昇すると、血管透過性や酵素、サイトカイン、白血球の活動が活発化し、免疫力が高まる)

②熱中症:熱放散抑制によるうつ熱

③発汗減少:自律神経失調、視床下部損傷

④心拍出量低下:心臓弁膜症、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、脱水症

⑤血管拡張障害:自律神経失調、糖尿病、末梢血管疾患

痙攣重積発作:筋攣縮による熱産生増加

⑦熱産生増加:ホルモンの影響→→副腎髄質アドレナリン(解糖系促進、平滑筋収縮、脂肪分解促進)、甲状腺トリヨードサイロニンとチロキシン(代謝亢進)

腫瘍熱:がん患者の10~60%で発熱アリ。腫瘍から発熱物質放出、腫瘍の壊死による白血球貪食・サイトカイン産生

薬剤性

・αアドレナリン作動性(末梢血管収縮による皮膚からの熱放散抑制):アンフェタミン、コカイン、エフェドリン、ノルアドレナリン

・抗コリン薬(汗腺機能障害による発汗抑制):抗ヒスタミン剤、環形抗うつ剤、フェノチアジン

・神経遮断薬(視床下部機能抑制):クロルプロマジン、チオリダジン、ハロペリドール

・鎮静・鎮痛剤:オピオイド、コカイン、催眠鎮静剤

・悪性高熱症:麻酔薬による副反応で、広範囲の筋肉の収縮による熱産生の増加が起こる(対処はダントロレンなどの筋弛緩剤を使用)

・セロトニン症候群

→セロトニンの脳内血中濃度増加でA、神経筋症状(痙攣、ミオクローヌス(自分の意志とは無関係な不随意運動)、振戦、悪寒)B.認知行動症状(錯乱、昏睡、興奮、不眠)、C、自律神経症状(発汗、頻脈、頻呼吸、血圧変動)を起こす。以下の薬で発症リスク有り。

①再吸収阻害薬:SSRI(セロトニン選択的再吸収阻害の抗うつ薬)、環形抗うつ剤(三環形、四環形)

②セロトニン前駆物質となる薬:Lドパ、リチウム、LSD(合成麻薬)

③セロトニン放出促進:アンフェタミン(覚せい剤)、コカイン、MDMA(合成麻薬)、フェンフルラミン(食欲減退薬)

④セロトニン代謝遅延:MAO阻害薬(抗うつ、パーキンソン治療薬)

3)症状

・発汗→→脱水→→心拍出量低下→→心機能低下

・筋収縮・痙攣→→筋肉崩壊→→高カリウム血症→→不整脈

・筋収縮・痙攣→→筋肉崩壊→→ミオグロビン尿→→急性腎不全

高体温持続→→脳損傷→→機能障害

4)治療

1筋肉活動亢進の抑制 (筋肉の異常活動を制御することが持続する熱産生を抑える 有効な手段である)

・痙攣に対して:ジアゼパム( 5-20mg)などのBz系薬剤の投与。

・痙攣に対して:クロールプロマジンは鎮静作用、末梢血管拡張作用がある が、循環血液量減少患者の場合は低血圧を起こすことがあるので注意する。

・神経遮断性悪性症候群(Neuroleptic malignant syndrome)に対して:ブロモ クリプチン(ドーパミン作動薬) ( 2.5 – 10 mg)を 1 日 2-6 回経口投与、ある いは胃管投与( 5 – 30 mg/日)。

・筋硬直や活動亢進の持続に対して:非脱分極性筋弛緩剤(パンクロニウム 5 – 10 mg )を静注し、人工呼吸管理とする。

・悪性高熱症に対して:ダントロレン (1 – 5mg/kg) を静注し、必要なら総量 10mg/kgまで3-5分ごとに静注を繰り返す。筋硬直を伴う他の高体温(悪性 症候群や労作による熱中症、アンフェタミン中毒など)にもダントロレンが有効と言う報告がある。

( 2冷却 (深部体温が 41.1℃ (106 F)未満の場合は、38.3℃ (101 F)に低下させることを目標とする)

・体温管理: 常温の水を浸したスポンジあるいはスプレー、扇風機などにより体表から冷 却する。 冷却毛布 (hypothermia blanket)や氷を入れた生理食塩水を用いた胃洗浄や膀胱洗浄。 相対的な低体温に注意する。 解熱剤は多くの場合無効である。 必要な場合は体外循環回路を用いた冷却を行う。

( 3全身管理(深部体温が 41.1℃ (106 F) 以上の場合は全身管理が必要となる)

・十分な酸素投与。

・低血糖の補正

・糖質カロリーの補給。

・生理食塩水(1 – 2 リットル)の補液:CVP モニターや時間尿量 1 – 2 ml//kg を目標にする

・高カリウム血症・低カルシウム血症などの電解質異常や代謝異常の補正。

・DIC、横紋筋融解やミオグロビン尿性腎不全、肝不全に注意をする。

・興奮・筋硬直・痙攣の管理:ベンゾジアゼピン静注でも制御されない筋硬直 にはダントロレン 1 mg/kg を静注する。

 

3.看護診断「高体温」の適応

①感染症:

(感染症での発熱は、視床下部が体温を故意に上げている(セットポイントの上方移動)。 体温が上昇すると、血管透過性や酵素、サイトカイン、白血球の活動が活発化し、免疫力が高まる)

②熱中症:熱放散抑制によるうつ熱

③発汗減少:自律神経失調、視床下部損傷

④心拍出量低下:心臓弁膜症、虚血性心疾患、高血圧性心疾患、脱水症

⑤血管拡張障害:自律神経失調、糖尿病、末梢血管疾患

痙攣重積発作:筋攣縮による熱産生増加

⑦熱産生増加:ホルモンの影響→→副腎髄質アドレナリン(解糖系促進、平滑筋収縮、脂肪分解促進)、甲状腺トリヨードサイロニンとチロキシン(代謝亢進)

腫瘍熱:がん患者の10~60%で発熱アリ。腫瘍から発熱物質放出、腫瘍の壊死による白血球貪食・サイトカイン産生

薬剤性

・αアドレナリン作動性(末梢血管収縮による皮膚からの熱放散抑制):アンフェタミン、コカイン、エフェドリン、ノルアドレナリン

・抗コリン薬(汗腺機能障害による発汗抑制):抗ヒスタミン剤、環形抗うつ剤、フェノチアジン

・神経遮断薬(視床下部機能抑制):クロルプロマジン、チオリダジン、ハロペリドール

・鎮静・鎮痛剤:オピオイド、コカイン、催眠鎮静剤

・悪性高熱症:麻酔薬による副反応で、広範囲の筋肉の収縮による熱産生の増加が起こる(対処はダントロレンなどの筋弛緩剤を使用)

・セロトニン症候群

 

4.目標設定

リンケージによる目標設定(NOCの後半に載っています)

 ※「リンケージ」は「NANDA」「NIC」「NOC」をつなぐ役割があります(リンクは「連結」の意味)。

1)リンケージ上の成果

体温調節(0800)

(定義:熱の産生・獲得・喪失のバランス)

・リスクコントロール:高体温(1922)

(定義:高体温の脅威を理解して予防し、排除または低減させるための個人の行動)

・バイタルサイン(0802)

(定義:体温、脈拍、呼吸、血圧が正常範囲内にある程度)

・神経学的状態(0909)

(定義:内部、外部からの刺激に対し、受容、処理、反応する末梢および中枢神経系の機能)

 

2)目標

目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。

・居住環境を適温にすることができる(衣服調節・エアコンの使用)。

・水分をこまめに摂取できる(脱水予防)。

・がんによる発熱には、医師の指示通りの対処をする(解熱剤内服など)。

・放射線治療、手術などの治療後に震えや熱感がある時は、医療者に報告できる。

※看護師の目標としては以下のようなものが挙げられると思います。

・高体温の原因に対する治療計画に沿って、指示書どおりに看護を行う。

・高体温に伴う不快症状の軽減に努める。

・脱水や熱中症など防ぐことが出来るものは、再発防止のための指導を行う。

 

5.看護計画

1)観察計画《OP》

リンケージの成果別に観察計画(OP)を立案していきます

〈体温調節 0800〉

・暑い時に発汗があるか

・脱水の徴候(口渇・ツルゴール反応低下)

・皮膚温の上昇・高体温

・頭痛

・筋肉痛・筋肉の痙攣

・脱水

・熱性けいれん・熱中症

・基礎疾患(腫瘍)

・自律神経障害を来す疾患(パーキンソン、視床下部損傷(外傷、脳出血、脳梗塞))

・感染症(発熱、咳嗽、頭痛、嘔気嘔吐など)

・薬剤の使用開始(抗コリン薬、向精神病薬、麻薬系鎮痛薬・アンフェタミン、エフェドリン・ノルアドレナリン)

・違法薬物の使用(コカイン)

・末梢血管拡張障害(自律神経障害、糖尿病、抹消位血管疾患)

・麻酔薬の使用(悪性高熱症

・尿量

・血液データ(電解質、腎機能など)

〈リスクコントロール:高体温 1922〉

・発熱の危険因子を明らかにする

・発熱の個人的危険因子を認める

・乳幼児・高齢者

・水分摂取量

・水分摂取の習慣

〈バイタルサイン 0802〉

・体温(平熱より1℃以上の発熱)

・頻脈

・呼吸数上昇

・血圧の低下

・血圧の上昇

〈神経科学的状態 0909〉

・意識レベル(GCS、JCS)

・鎮静スケール(RASS)

見当識・不穏・幻覚

・瞳孔異常(左右差・縮瞳・散瞳)

・感覚障害

・運動障害

呼吸パターン(頻呼吸、徐呼吸、クスマウル呼吸、チェーンストークス呼吸、ビオー呼吸、無呼吸)

・高体温(38.0℃以上で高体温、40.0℃以上で重症高体温)

・痙攣発作

 

2)行動計画《TP》

・薬剤使用に伴ってシバリングや高体温が発現した場合にはすぐに医師へ報告する。

・原因疾患の治療計画の指示通りに薬剤の投与や、クーリング、安静保持などを行う。

・一時的なADL低下に対し、清潔ケア、更衣などの援助を行う。

・痙攣発作が起きた時には、スタッフコールでスタッフを呼び、医師への連絡を依頼し、自身はその場で痙攣の種類と持続時間を観察する。環境整備をし、発作時に外傷が起こらないようにする。

・環境整備を行い、ナースコールは手の届くところに置く。

 

3)教育計画《EP》

・高齢者で口渇を感じにくく、飲水をしない方には、時間を決めて定期的に水分補給をするように促す。

・マスクを着用していると口渇を感じにくいので、定期的に飲水を促す。

・腫瘍熱で、発熱が繰り返される場合には、処方される内服薬を正しく内服できるように服用法を説明する。

・直射日光の当たる屋外では、日傘を用い、定期的にスポーツドリンクなどで水分補給をするように促す。

・屋内でも、高温となり熱中症となることがあるので、我慢せず、エアコンを使用して高体温を予防する。屋内にいても、定期的に水分補給を行う。

 

参照文献
T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.
山口徹 北原光夫 福井次矢. (2012). 今日の治療指針.
山内豊明. (日付不明). フィジカルアセスメントガイドブック. 医学書院.
大橋優美子 吉野肇一 相川直樹 菅原スミ. (2008). 看護学学習辞典(第3版). 株式会社 学習研究社(学研).

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投稿者 FlorenceMYM

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