領域1 ヘルスプロモーション
安寧状態または機能の正常性の自覚、およびその安寧状態または機能の正常性のコントロールの維持と強化のために用いられる方略
類2 健康と安寧状態を維持するための活動を明らかにし、コントロールし、実行し、コントロールすること

非効果的抵抗力 00043 →非効果的防衛力

看護診断:非効果的抵抗力
定義:病気や損傷のような内的あるいは外的脅威から自分を守る能力が低下した状態

↓↓

看護診断:非効果的防御力
定義:病気やけがのような内的・外的脅威から自分を守る能力が低下した状態


2021年版では、看護診断名と定義が変更になっています。また、「関連する状態」が追加となり、より具体的に理解できるようになりました。

1.抵抗力・防御力

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抵抗力とはなんでしょうか?何に対する抵抗力なのでしょうか??
防御力とはなんでしょうか?何から防御するのでしょうか??
抵抗力とは、悪性腫瘍や内臓疾患などの病気に抵抗する力、弱った体を回復させる力と言えるのではないでしょうか。
そして防御力とは、内臓疾患にならないための免疫力が維持されている力、ケガを防ぐために保たれる筋力や体力のことと言い換えることができるのではないでしょうか。


1)抵抗力・防御力のある状態 

・十分に栄養を摂取しており、年齢に応じた体格である。
・BMIが正常値である
・意識がはっきりしている
・健康管理ができる
・一時的な体力がある(急性疾患を乗り越える体力がある)
・長期的な体力がある(慢性疾患を悪化させない体力がある)
・若さがある(回復力が高い)
・免疫力が高い(病原菌に対抗する力がある)(不良細胞を貪食する能力があり、体内を正常に導く力がある)
これらが安定している状態が、抵抗力の十分な状態と考えることができるのではないでしょうか。
全てにおいて十分な人は少ないと思います。投薬などをしながらでも、健康を維持していて、ある程度余力があれば抵抗力があると言えるのではないでしょうか。
では、抵抗力が低下した状態とはどのような状態でしょうか、考えてみます。


2)抵抗力が弱った状態

・高齢
・若年(乳幼児)
・るいそう、栄養不良
・筋力、体力不足
・消耗性疾患
・免疫力低下を来す疾患
・免疫力低下をきたす治療
・外傷、失血
これらが上げられると思います。疾患や治療は挙げるとかなりの数になります。
具体的に次で紹介していきます。

 

2.抵抗力・防御力を低下させる疾患や治療

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1)抵抗力を低下させる疾患

・糖尿病
・呼吸不全
・悪性腫瘍
・腎不全
・心不全
・肝不全など
・精神疾患


2)免疫力低下を来す疾患

・免疫不全症候群:
体液性免疫や細胞性免疫の機能不全による抵抗力減弱をきたす疾患群。先天性と後天性がある。
 ・先天性:
  無γグロブリン血症、IgA欠損症、補体欠損症、胸腺形成不全、慢性肉芽腫症
 ・後天性:
  自己免疫疾患、リンパ系悪性腫瘍、ウィルス疾患(HIVなど)


3)免疫力低下をきたす治療

・手術
・侵襲的治療
・放射線治療
・免疫抑制薬、抗がん剤
 ・副腎皮質ステロイド:抗原提示細胞・リンパ球機能を抑制
 ・特異的免疫抑制剤:リンパ球のサイトカイン産生を抑制
  (シクロスポリン、タクロリムス、デオキシスパーガリン)
 ・細胞毒性薬:核酸合成阻害
  (シクロフォスファミド、メトトレキサート、アザチオプリン)
 ・分子標的薬:免疫応答のステップに存在する細胞を標的とする。
(標的は、膜抗原・受容体・接着因子・サイトカインなど)

4)その他抵抗力低下をきたしやすい状態

・高齢、低年齢
・落ち込み、不安
・薬物乱用、アルコール依存
・ワクチン未接種

   

3.非効果的防御力(抵抗力)の適応

・高齢
・若年(乳幼児)
・るいそう、栄養不良
・筋力、体力不足
・外傷、失血
・免疫力低下を来す疾患
 ・糖尿病
・呼吸不全
・悪性腫瘍
・腎不全
・心不全
・肝不全
・無γグロブリン血症
・IgA欠損症、補体欠損症
・ディジョージ症候群(胸腺形成不全)
・慢性肉芽腫症
 ・自己免疫疾患
・リンパ系悪性腫瘍
・ウィルス疾患(HIVなど)、
・免疫力低下をきたす治療
 ・手術
・侵襲的治療
・放射線治療
・免疫抑制薬、抗がん剤
 ・副腎皮質ステロイド
 ・特異的免疫抑制剤
 ・細胞毒性薬
 ・分子標的薬

 

4.目標設定


1)リンケージによる目標設定(NOCの後半に掲載されています)

※リンケージはNANDA(診断)とNOC(成果)を繋ぐ役割があります。
・リスクコントロール(1902)
(定義:修正可能な健康上の驚異を理解して予防し、排除または低減させるための個人の行動)
・健康増進行動(1602)
(定義:健康を維持または増進するための個人の行動)
・消耗性疲労のレベル(0007)
(定義:観察もしくは報告された長引く一般的な疲労の重症度)
・栄養状態(1004)
(定義:代謝ニーズを満たす栄養素が摂取され、吸収されている程度)
・リスクの早期発見(1908)
(定義:個人的な健康への脅威をあきらかにするための個人の行動)
・免疫能の状態(0702)
(定義:外部抗体に対する先天性・後天性の耐性があること)

 

2)目標

・患者と家族が、抵抗力が十分でないことを理解し、感染予防や症状悪化を回避するための方法を習得できるように支援する。
・患者と家族が、抵抗力低下を防ぐ、体力維持増強のための方法(食事・運動)を習得できるように支援する。
・病態、ADLに合わせた介助を行う。
・不快症状を緩和し、安全・安心に療養生活を送るように調整する。
・異常の早期発見に努める

5.看護計画


1)観察計画《OP》

・年齢(高齢、若年)
・疾患、疾患の家族歴、病期
・症状、バイタルサイン
・疲労、慢性疲労
・感染徴候(発熱、発赤、腫脹、疼痛)、繰り返す感染、遷延する感染
・恐怖を感じる症状(幻覚、呼吸苦、胸痛など)
・不快症状(頭痛、疼痛、嘔気、下痢など)
・治療の環境(一般症、感染症病床、ICU、クリーンルームなど)
・家族構成
・自己管理可能かどうか
・認知力(長谷川式20点以下、MMSE21点以下で認知症疑い)
・精神状態
・意識レベル
・活動量、安静度、ADL
・栄養状態
 ・体重・BMI・体重減少率
 ・摂食量、摂食内容
・嚥下機能低下、誤嚥、
・摂食量低下(う歯、嚥下機能低下)
・食欲低下(意識レベル、精神疾患、疼痛など)
・下痢、消化器系疾患で吸収に問題あり
・血液データ:
TP(6.7~8.3)、Alb(3.8~5.3)、総コレステロール(210~210)、貧血Hb(12~17)
・免疫能
 ・胃腸機能、呼吸機能、泌尿生殖器の機能
 ・抗体価
 ・皮膚の統合性、粘膜の統合性
 ・検査値
 ・白血球、T4・T8細胞値、補体価
・治療
 ・手術
 ・侵襲的治療
 ・抗がん剤、免疫抑制剤、ステロイド
・コンプライアンス
 ・自身の疾患の経過を理解しているか
 ・自身の疾患に伴う感染リスクを理解しているか
 ・自身の疾患に伴う心身を悪化させるリスクを理解しているか。
 ・嗜好:喫煙、飲酒など
 ・リスクを回避するための方法を理解しているか
 ・感染リスクを回避するための方法を理解しているか
 ・予防接種の必要性を理解し、接種しているか(アレルギーのある場合はのぞく)
 ・回復を促進する生活習慣について理解しているか
・治療計画に同意し自己管理できているか
 (内服、吸入、食事、運動など)
 ・治療計画通りに自己管理できていない(自己中断・拒薬など)
・家族の理解、介護
・使用している社会資源

 

2)行動計画《TP》

・症状を悪化させる因子を排除する。
・感染を予防するための手洗いとマスク着用をする(患者・家族も、医療者も)。
・無菌室への入室は、入室基準を守り手順通りに行う。
・口内炎で食事が進まないなどの理由がある場合には、一時的に食形態を変更する(ムース食やゼリーなど)
・無菌室への食品の持ち込みは、病院の基準に適合したものでなくてはならないため、患者や家族が持ち込む前に確認する。(生もの・半生・冷凍・はちみつはNG。レトルトなどの密閉されたもの・缶詰・カップ麺はOKなど病院基準と照らして確認する)
・十分に休息が取れるように環境整備を行う。(照明、音、においなど)
・安静度を守れるように巡視や見守りを行う。
・活動と休息のバランスが整うようケアの計画を立てる。
・適度に運動をしてもらえるように声かけや見守りを行う。
・リハビリと情報共有し、患者のADLに合わせた介助を行う。
 (廊下歩行、トイレ歩行、杖歩行、歩行器介助、ベッド周囲、ポータブルトイレなど)
・疼痛や嘔気、下痢などの不快症状のある場合には、医師に対処してもらえるよう報告・相談する。
・鎮痛剤など頓服で処方されている場合には、必要に応じて使用する。

 

3)教育計画《EP》

・定期的に受診するよう説明する。内服を切らさない、症状の変化を診てもらう為に必要。
・勧められている予防接種は受けるように説明する(アレルギーや医師の許可のない場合は除く)
・症状を悪化させる因子を排除するように説明する。
・感染を予防するための手洗いとマスク着用の必要性を説明する(患者・家族も、医療者も)。
・無菌室への入室は、入室基準を守り手順通りに行っていただくよう、パンフレットなどを用いて説明する。
・無菌室への食品の持ち込みは、病院の基準に適合したものでなくてはならないため、患者や家族が持ち込む前に確認する。(生もの・半生・冷凍・はちみつはNG。レトルトなどの密閉されたもの・缶詰・カップ麺はOKなど病院基準と照らして確認する)
・十分に休息が取れるように環境整備を行う。(照明、音、においなど)
・安静度を守れるように巡視や見守りを行う。
・適度に運動をするように勧める。(寝たきり予防)
・患者、リハビリ職と情報共有し、患者のADLに合わせた介助を行う。
 (廊下歩行、トイレ歩行、杖歩行、歩行器介助、ベッド周囲、ポータブルトイレなど)
・在宅療養に向けて、メディカルソーシャルワーカーと連携し、療養生活に必要な環境が整うように調整する。

参照文献

T.ヘザー・ハードマン、上鶴重美、カミラ・タカオ・ロペス. (2021年7月1日). NANDA-I看護診断ー定義と分類 2021-2023 原書第12版. 株式会社 医学書院.
T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.
山口徹 北原光夫 福井次矢. (2012). 今日の治療指針.
山内豊明. (日付不明). フィジカルアセスメントガイドブック. 医学書院.
大橋優美子 吉野肇一 相川直樹 菅原スミ. (2008). 看護学学習辞典(第3版). 株式会社 学習研究社(学研).

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。ご意見ご感想ご質問がありましたら下のコメント欄よりお待ちしております(゚▽゚)

投稿者 FlorenceMYM

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