看護計画 領域11 安全/防御

NANDA-00155 看護計画 転倒転落リスク状態 (2021年版では変更)

領域11 安全/防御 危険や身体損傷や免疫システムの損傷がないこと、喪失からの保護、安全と安心の保障

類2 身体損傷  身体への危害または傷害

00155 転倒転落リスク状態

看護診断: 00155 転倒転落リスク状態

定義:転倒や転落が起こりやすく、身体的危害や健康を損なうおそれのある状態

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NANDA-I 2021では「転倒転落リスク状態」が「成人転倒転落リスク状態」と「小児転倒転落リスク状態」に分けられています。それぞれの定義をご紹介します。

看護診断: 00303 成人転倒転落リスク状態

定義:成人がうっかりして、地面や床などの低い高さのところに着地する事故を経験しやすく、健康を損なうおそれのある状態

看護診断: 00306 小児転倒転落リスク状態

定義:小児がうっかりして、地面や床などの低い高さのところに着地する事故を経験しやすく、健康を損なうおそれのある状態

2021年版からは成人と小児に分け、より具体的になっています。それぞれは以下にリンクを張っていますのでジャンプしてみてください。では、転倒転落リスクについて考えていきましょう。

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類似の看護診断に「身体損傷リスク状態(損傷リスク状態)」と「身体外傷リスク状態」があります。

それぞれもチェックしてみてくださいね。

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1.看護診断「転倒転落リスク状態」の対象

転倒転落はとても多く取り上げられる診断です。私も何度も立案しています。

たかが転倒と思われるかもしれませんが、高齢患者さんにとっては、寝たきりの原因の一つになります。

高齢の患者さんは下肢の筋力が低下しますから転倒しやすくなります。高齢患者さんはエストロゲンの減少により骨がもろくなっています。骨粗しょう症で骨を支持している組織(筋肉)も減少している患者さんが転倒したらどうなるでしょう?容易に骨折すると思いませんか?骨折し、動けない期間に廃用症候群になり、寝たきりになってしまいます。

うまく受け身をとれず頭を打ったりすると、慢性硬膜下血腫を起こすことがあり、そうなると意識障害や命の危険につながる場合もあるんです。

病院によっては、入院時にアセスメントスコアでリスクを把握しているところもあります。

転倒転落アセスメントスコアに沿ってアセスメントすると、漏れもなく、リスクを把握できるのでお勧めです。

前置きが長くなりましたが、どのような方が転倒転落リスク状態の適応となるのか見てみましょう。

《転倒転落リスク状態の適応》

・転倒転落アセスメントスコア 危険度Ⅱ以上(転倒転落アセスメントスコアについては✩1参照)

・高齢者(65歳以上)

・認知機能の低下

・長谷川式(HDS-R)20点以下で認知症の可能性 30点満点

・MMSE 21点以下で認知症の可能性(30~27で正常、26~22が経度認知症疑い、21以下で認

 知症疑い)30点満点。MMSEは国際基準  

・歩行補助器具(杖・歩行器・車椅子)の使用、義足、スリッパ(運動靴やリハビリシューズでない)

・環境:足元が濡れている、浴室、照明が不十分で足元が見にくい、足元が散らかっている

・拘束具の使用

・判断力を低下させるもの:飲酒、向精神病薬、睡眠薬

・立ちくらみや失神を来す疾患:貧血、起立性低血圧、心血管疾患、脳血管疾患、糖尿病合併症

・歩行を不安定にさせる疾患や病態:筋骨格系疾患、関節炎、筋炎、関節リウマチ、視力障害、聴力障害、バランス障害、麻痺、サルコペニア、下肢筋力の低下

・切迫した状況:失禁、尿意切迫

・挿入物の多い状態:ドレーン、点滴、膀胱留置カテーテル

・育児環境:階段や窓の防護柵欠如、チャイルドシートの不適切な設置

 

✩1 転倒転落アセスメントスコアシート

スコアによって危険度がⅠ~Ⅲに分類される。Ⅱ以上で転倒リスクが高いと判断される。

危険度Ⅰ:1~9点(転倒転落の可能性がある

危険度:10~19点(転倒転落を起こしやすい)

危険度Ⅲ:転倒転落をよく起こす

 患者の状態は変化していくので、入院時から定期的に評価していく必要がある。

※日本医師会の転倒転落防止マニュアル参照https://www.med.or.jp/anzen/manual/pdf/score.pdf

 

2.リンケージによる目標設定

 ※「リンケージ」は「NANDA」「NIC」「NOC」をつなぐ役割があります(リンクは「連結」の意味)。

1)リンケージ上の成果

 ・身体バランス(0202)

 (定義:体の平衡を保持できること)

 ・協調運動:(0212)

 (定義:目的とする運動のために筋肉を随意に一緒に動かす能力)

 ・転倒転落予防行動(1909)

 (定義:身の回りの環境で転倒を引き起こす危険因子を最小にするための患者または介護者の行動)

 ・転倒の頻度(1912)

 (定義:過去の転倒回数)

 ・知識・転倒予防行動(1828)

 (定義:転倒予防について示す理解の程度)

 

2)目標

 

目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。

 ・転倒転落を防ぐ方法を述べることができる。

 ・転倒転落を防ぐ方法を実際に生活習慣に取り入れることができる。

 ・転倒しない。転落しない。

 

 

3.看護計画

1》観察計画 OP

①個人的要因

・年齢(高年齢、低年齢)…危険の認識が不十分

・認知力障害(長谷川式20点以下、MMSE21点以下)

・ADL

・MMT(徒手筋力テスト)

・関節可動域

・フレイル

・サルコペニア

・視力障害

・聴力障害

・運動障害(麻痺、しびれなど)

・感覚障害

・跛行

・小股、すり足歩行(パーキンソン病など)

・平衡感覚障害

・筋力低下

・関節の異常

・履物(かかとのない靴、靴下のまま歩行、サイズの合わない靴)の選択

・歩行状態(足運び、安定感、杖や歩行器などの使用状況)

・使用している歩行補助具(杖、4点杖、歩行器)

・義足

・意欲の低下

・意識障害(術後せん妄、発熱、傾眠など)

・夜間せん妄、不穏

・睡眠障害、昼夜逆転

・昼間の活動状況

・内服薬:睡眠導入剤・向精神病薬による意識混濁→ふらつき

・内服薬:緩下剤による切迫した便意

・内服薬:利尿薬による切迫した尿意

・夜間排尿の習慣

・頻尿

・起立性低血圧

・病態・疾患(貧血、低血糖、肥満、前立腺肥大)

・留置物(ドレーン、Baカテーテルなどによるつまづき)

・術後の離床の段階

・下肢の手術後(ギプス・免荷など歩行に影響を与える状態)

・せっかちな性格(ナースコールを押さない)

・遠慮がちな性格(ナースコールを押さない)

・リハビリの進行状況(自身の歩行能力を過信している→出来ると思い込んで無理に動こうとする)

・不安(不安が強く動かない→可動域低下、筋力低下)

②環境的要因

・環境の変化

・トイレまでの距離

・寝具(ベッド、畳に布団)、柵、ベッドの高さ

・散らかったベッド周り

・床の段差

・照明(視野が確保できる明るさか)

・滑りやすい場所の対策(浴室、脱衣所など)

・地域(雪の多い地域、路面の凍結が多い地域など)・

・長時間、長期間の臥床(入院や入所により活動の機会が減少している)

  

2》行動計画 TP

・環境整備:ベッドの高さ(転落リスクの高い人には低床、超低床にする)

・環境整備:シーツや物を整頓し、つまづく原因を除去する。

・環境整備:部屋の照度を十分にし、視野を確保する。

・環境整備:柵を使用して、転落を防止する。

・環境整備:センサーマットなどを使用して、起き上りをキャッチする。

・環境整備:留置物(ドレーン、点滴、バルンカテーテルなどの管類)に引っかからないように整理整頓する。

・環境整備:ナースコールを手の届く場所に置く。

・環境整備:頻尿や下痢の際には、ポータブルトイレや尿器を使用するなど、慌てない環境を作る。

・環境整備:夜間のトイレの回数が多い場合には、夜間のみポータブルトイレや尿器を使用する提案をしてみる。

・環境整備:浴室、シャワー室の床が濡れていないか確認する。

・衣服の調整:ズボンの丈を適したものにする。

・衣服の調整:かかとのある靴を着用するように本人やご家族に準備してもらう。

・衣服の調整:室内でもスリッパではなく、滑り止めのついた靴下を着用するように促す。

・歩行状態が不安定な場合は、見守り、付き添い、手引きなどの状態に応じた介助を行う。

・昼夜逆転を防ぐため、日中の活動を取り入れる。

・治療計画に沿った疾患の管理を行う。

・ADLや関節可動域を維持するため、ROM訓練や歩行訓練を行う。

・リハビリの進行状況に応じた介助を行う。

・リハビリの進行状況は理学療法士、作業療法士と情報共有をし、安全な介助ができるようにする。

・睡眠導入剤の効果が強く転倒リスクが高いと判断したら医師へ上申する。

・術後などのせん妄が起こりうる場合は(高齢・広範囲手術・長時間手術・せん妄の既往など)、ナースステーションに近い部屋へ移動しておく。

・せん妄などの外傷リスクが高い場合は、頻回に訪室し、安全確認を行う。

・治療計画を守りながら、安全に歩行できるように介助する。

 

3》教育計画 EP

・本人・介助者に環境整備方法を具体的に説明する。(整理整頓、ベッドの高さ、明るさなど)

・適した履物や衣服を選択するように説明する。

・4点柵やセンサーマットを使用する際は、抑制同意書が必要となるため、主治医の許可を得た後、家族へ説明し同意を得る。

・夜間頻尿や眠れないなどの症状があれば、相談してもらうように伝える。

・ベッド上でできる運動を紹介する。

・浴室や脱衣所は転倒が起こりやすいことを説明し、注意を促す。

・術後の痛みなどの症状がある場合には、ナースコールするように説明する。

・トイレなどへの歩行介助が必要な場合には、遠慮せずナースコールを押すように説明する。

・ナースコールの必要性を説明する。

・雪の日や凍結した際に無理して外に出なくても良いシステム作りを提案する。

 (ネットスーパーやコープの利用、テレビ電話など)

 

参照文献
T.ヘザー・ハードマン、上鶴重美、カミラ・タカオ・ロペス. (2021年7月1日). NANDA-I看護診断ー定義と分類 2021-2023 原書第12版. 株式会社 医学書院.

T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.
山口徹 北原光夫 福井次矢. (2012). 今日の治療指針.
山内豊明. (日付不明). フィジカルアセスメントガイドブック. 医学書院.
青柳智和. (2018). 洞察力で見抜く急変予兆~磨け!アセスメントスキル~. 株式会社ラプタープロジェクト.
大橋優美子 吉野肇一 相川直樹 菅原スミ. (2008). 看護学学習辞典(第3版). 株式会社 学習研究社(学研).

 

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投稿者

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