領域11 安全/防御 危険性や身体損傷や免疫系の損傷がないこと、損失の予防、安全と安心の保障

類2 身体損傷  身体への危害または傷害

00039 誤嚥リスク状態 

看護診断:誤嚥リスク状態

定義:気管や気管支に消化管分泌物・口腔咽頭分泌物・固形物・液体が入りやすく、健康を損なう恐れのある状態

いつもご覧いただきありがとうございます。今回は誤嚥リスク状態です。この診断は、リスク型診断なので、「まだ誤嚥はしていないけど、こういう状態の人は、誤嚥しやすいので、気を付けけましょう」という患者さんを対象にします。

類似の診断に「嚥下障害」があります。そちらは、実在型診断なので、嚥下機能の障害があるという場合にはそちらも検討してみてください。嚥下障害があるということは、誤嚥のリスクがあるということでもありますので、どちらも密接に関係しています。

嚥下障害の中で、オーラルフレイルやフレイルなど、嚥下障害がきたす全身への影響についても触れていますので、参考にしてみてください。

 

1.看護診断「誤嚥リスク状態」の対象

1)器質的要因:

・消化管(口腔から肛門まで)の腫瘍・潰瘍・炎症・括約筋の機能不全など消化管運動の低下や食物の逆流を起こす疾患

・逆流性食道炎

・食道裂孔ヘルニア

・アカラシア

・気管切開、気管切開チューブ

・NGチューブの挿入、PEG(誤嚥を繰り返して経口摂取困難となり経管栄養へシフトすることが多

・胃内圧の上昇をきたす状態:肥満、腹水

・顔面の手術や外傷

・乳児(胃がとっくり状で嘔吐しやすい)

2)機能的要因

・脳血管疾患などによる意識レベルの低下

・睡眠導入剤や、鎮静剤、向精神薬使用中の覚醒不良

・脳血管疾患後遺症による麻痺・咀嚼困難・嚥下反射障害・咳嗽反射障害など

・消化管活動をコントロールする器官の障害。

・神経筋疾患(咳嗽弱く、嚥下機能も低下する)

 ・パーキンソン、ギランバレー、重症筋無力症、多発性硬化症、筋ジストロフィなど

・自己喀痰困難

・不顕性誤嚥(高齢者)

3)心理的要因

・食事に対して積極的でない摂食障害

・認知症

・うつ病 

 

2.リンケージによる目標設定

※「リンケージ」は「NANDA」「NIC」「NOC」をつなぐ役割があります(リンクは「連結」の意味)。

1)リンケージ上の成果

 ・誤嚥の予防(1918)

 (定義:水分や固形物が肺を通過するのを予防する個人の行動)

 ・呼吸の状態:換気(0403)

 (定義:肺への空気の出入り)

 

2)目標

目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。

 

・気道分泌物を自己喀出し閉塞や肺炎を防ぐ。

・嚥下機能に合った食事方法、食形態を取り入れ誤嚥を防ぐ。

 

3.看護計画

1》観察計画 OP

 ・誤嚥性肺炎の既往

 ・嘔吐をきたす疾患(イレウス、高血圧、脳ヘルニアなど)

 ・呼吸数、呼吸リズム

 ・呼吸音(エア入り、左右差)、肺雑音

 ・呼吸困難、起座呼吸、口すぼめ呼吸、陥没呼吸

 ・酸素投与量、意識レベル、せん妄

 ・SPO2=90%以下

 ・血液ガス(PaO2=90Torr以下)

 ・画像診断(肺野の陰影)

 ・血液検査

  (WBC、プロカルシトニン、CRP、好中球などの炎症反応)

 ・チアノーゼ

 ・咽頭部の痰貯留音

 ・咳嗽

 ・痰の性状、量、臭い

 ・発熱(平熱より1℃以上の体温上昇)

 ・食事の形態(嚥下機能に適した食形態か)

 ・嚥下機能障害の程度、VT(嚥下造影)、VF(嚥下内視鏡)

 ・食事の際の姿勢

 ・食事の際の一口量

 ・食事介助の手技(介助者の手技)

 ・認知力低下(長谷川式20点以下、MMSE21点以下)

 ・異食行為(認知症でティッシュを食べるなど)

 ・口腔内の清潔

 ・腹部症状(腸蠕動音、腹部膨満、腹痛)

 ・排便状況(便秘)

 

2》行動計画 TP

 ・食前に嚥下体操を行う。パタカラ体操。

 ・気道分泌物のある場合は吸引をする。

 ・吸引は清潔操作で行う。

 ・吸引中はパルスオキシメーターを装着し、SPO2の低下に気をつける。

 ・排痰ケアを行う。(スクイージング、体位ドレナージ)

 ・排痰ケアを行う。(カフアシスト、RTX)

 ・ネブライザーの指示があれば行う。

 ・自力で喀痰ができるように補助する(呼気に合わせて胸郭を圧迫し喀痰を促す)。

 ・食事の際には体位を整える。経管栄養はG-UP30度以上。

 ・経鼻経管栄養投与前には胃泡音を確認する。

 ・経管栄養実施前には吸引を行う。

 ・経管栄養の投与速度は指示を守る。

 ・経管栄養投与中も、時々姿勢が崩れていないかを確認する。

 ・食後はマウスケアを行う。

 ・食後は義歯を外し、マウスケアを行う。

 ・経口摂取をしていない患者も、誤嚥性肺炎予防のためにマウスケアを行う。

 ・嚥下機能に応じた食形態へ変更する。

 ・むせないよう一口ずつ、嚥下を確認しながら食事介助を行う。

 ・食後30分は座位(ファーラー位でも)を保持する。

 ・排便コントロールをする

 

3》教育計画 EP

 ・食事形態の変更が受け入れられるように十分に説明する。

(刻み・とろみやムースが嫌だという人は意外と多くいます。)

 ・一口ずつ、よくかんで、飲み込んでから次の一口を摂取するように説明する。

 ・嚥下体操は自身でもできる部分が多くあるので、一人でもできるように練習を促す。

 ・呼吸困難や変調があったらすぐにナースコールをしてもらうようにお願いする。

 ・マスクや手洗いなどの感染予防策の必要性を説明する。

 

参照文献
T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.
山口徹 北原光夫 福井次矢. (2012). 今日の治療指針.
山内豊明. (日付不明). フィジカルアセスメントガイドブック. 医学書院.
青柳智和. (2018). 洞察力で見抜く急変予兆~磨け!アセスメントスキル~. 株式会社ラプタープロジェクト.
大橋優美子 吉野肇一 相川直樹 菅原スミ. (2008). 看護学学習辞典(第3版). 株式会社 学習研究社(学研).

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投稿者 FlorenceMYM

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