看護計画 領域11 安全/防御

NANDA-00047 看護計画 皮膚統合性障害リスク状態

領域11 安全/防御 危険性や身体損傷や免疫系の損傷がないこと、損失の予防、安全と安心の保障

類2 身体損傷  身体への危害または傷害

「皮膚統合性障害リスク状態」

看護診断:皮膚統合性障害リスク状態

定義:表皮と真皮の両方またはどちらか一方に変化が起こりやすく、健康を損なうおそれのある状態

いつもご覧いただきありがとうございます。

皮膚統合性障害リスク状態は、褥瘡リスク状態と内容が重複しています。皮膚統合性障害リスク状態では、褥瘡以外の皮膚トラブルの原因についても取り扱っています。

すでに褥瘡がある方は皮膚統合性障害の看護診断も参考にしてみてください。

・褥瘡リスクのみに焦点を当てたい方は以下の看護診断も参考にしてみてください。

 

1.「皮膚統合性障害リスク状態」の適応

※褥瘡リスク状態と内容が重複しています。皮膚統合性障害リスク状態では、褥瘡以外の皮膚トラブルの原因についても取り扱っています。

・スクリーニングブレーデンスケール(成人18点未満)、ブレーデンQスケール(小児16点以下)ブレーデンスケールについては下記✩1参照

ASA(米国麻酔科学会)のPS分類(全身状態分類):2度以上(ASAのPS分類については下記✩2参照)

・るい痩、栄養状態の低下、骨突出部が目立つ

・肥満、動脈硬化

・喫煙

・皮膚湿潤状態(おむつ着用)、失禁

・皮膚の菲薄化(浮腫)

・皮膚の弾力の低下(ツルゴール反応低下、脱水)ツルゴール反応については下記✩3参照

・長時間の同一体位、自力体位変換困難

・術中体位や固定、術後の安静

・鎮静剤使用、麻痺、

・整形外科領域の手術後(患肢の免荷や安静、禁忌体位)

・身体拘束

・間違った体位変換の方法、ポジショニング

・褥瘡の既往

・外傷、熱傷(熱、低温、化学)、縫合創

・放射線治療(がん治療)

・浮腫

・表皮・真皮の感染(蜂窩織炎など)

・薬疹、皮疹

・循環不全

・低栄養

  

1 ブレーデンスケール

 ブレーデンスケールは褥瘡の発生を予測するために使用するツールです。

 

✩2 ASA-PS (Wikipedia参照)

ASA-PS(ASA physical status)は、アメリカ麻酔科学会英語版)における全身状態分類である。

全身状態を6クラスに分類しており、手術前のASA-PSと予後は相関するとされる。緊急手術の場合は「E」を併記する。

「褥瘡リスク状態」ではclass2以上を褥瘡ハイリスクと判断している。

 

✩3 ツルゴール反応

 脱水などの体液量減少時に使用する。

 前腕か胸骨上の皮膚をつまみ上げて離し、2秒以内に皮膚が元の状態に戻れば正常と判断する。2秒より時間が掛かり、皮膚のしわの戻りが遅くなることをハンカチーフサインという。.

 

2.目標設定(リンケージ→目標)

リンケージによる目標設定(NOCの後半に載っています)

 ※「リンケージ」は「NANDA」「NIC」「NOC」をつなぐ役割があります(リンクは「連結」の意味)。

1)リンケージ上の成果

・組織の統合性:皮膚と粘膜(1101)

(定義:皮膚と粘膜の組織に異常がなく生理的機能が正常であること)

・栄養状態:栄養素の摂取(1009)

(定義:代謝ニーズを満たす栄養素の摂取)

・栄養状態:生化学的検査値(1005)

(定義:体液組織と栄養状態の生化学的指標)

・感覚機能:触覚(2400)

(定義:皮膚刺激を正しく知覚する能力)

・循環動態(0401)

(定義:体循環と肺循環の大血管を、血液が正常な潅流圧を保って停滞することなく一方向に流れること)

・身体的老化(0113)

(定義:自然化経年的変化に伴って起こる正常な生理学的変化)

・体位変換:自力(0203)

(定義:補助具の使用の有無にかかわらず体位を変換する動作)

・体液の状態(0602)

(定義:体内の細胞内液と細胞外液の適切な水分量)

・体液量過剰の重症度(0603)

(定義:細胞内液・細胞外液の過剰の重症度)

・排尿の自制(0502)

(定義:膀胱からの尿の排出コントロール)

・排便の自制(0500)

(定義:排便過程のコントロール)

・オストミーのセルフケア(1615)※オストミーは人工肛門・人工膀胱のことです

(定義:排泄のためにオストミーを継続的に管理する個人の行動)

・薬剤反応(2301)

(定義:処方された薬剤の治療効果と副作用)

 

2)目標

目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。

・定期的に除圧することや体位を変えるなどして、褥瘡予防のための行動ができる。

・栄養のバランスを考えた食事を摂取できる。

・皮膚の異変や感覚の異変を感じたら、医療者に相談できる。

・排尿後のおむつやパッドをそのまま長時間使用せず、清潔な尿パッドを使用できる。

・オストミーの管理方法を述べ、実際に管理できる。

※看護師の目標としては以下のようなものが挙げられると思います。

除圧器具、定期的な体位変換、適切なポジショニングを行い、褥瘡の発生を防ぐ。

・栄養バランスを整え、皮膚や筋骨格の健康を図る(るい痩を予防する)。

・皮膚の清潔や皮膚の循環を維持し、皮膚トラブルからの褥瘡発生を防ぐ。

・オストミーを正しく管理し、皮膚トラブルを防ぐ。

・薬剤などのアレルゲンによるアレルギー反応を早期発見し、早期対応に努める。

 

3.看護計画

1》観察計画 OP

〈皮膚機能〉

・自力体動(仰臥位、側臥位、立位、座位)

・褥瘡の既往

・皮膚温度

・皮膚感覚

・皮膚弾力性・皮膚水分量・皮膚の厚み

・体毛の成長

・異常な色素沈着

・皮膚の病変

・粘膜病変

・瘢痕組織

・皮膚がん

・皮膚剥離・皮膚落屑

・皮膚蒼白、末梢冷感、爪床チアノーゼ

・皮膚掻痒感、掻痒行為

〈栄養状態〉

・カロリー摂取量・蛋白摂取量・脂肪摂取量・炭水化物摂取量

・繊維摂取量

・ビタミン摂取量・ミネラル摂取量

・鉄分摂取量

・ナトリウム摂取量・カルシウム摂取量

・飲水量

・血清アルブミン値・血清プレアルブミン値・血清クレアチニン値

・ヘマトクリット値・ヘモグロビン値・血清トランスフェリン値

〈皮膚知覚〉

・鋭い刺激の識別・鈍い刺激の識別・2点間の識別

・振動の識別

・温度の識別

・圧力の識別

・感覚異常・感覚喪失・しびれ・麻痺

〈循環動態〉

・血圧・脈圧・平均血圧・中心静脈圧

・PaO2・PaCO2

・酸素飽和度

・尿量

・毛細血管充満時間・爪床チアノーゼ・末梢の浮腫

・血管の雑音・心雑音・失神

・頚静脈の怒張

・腹水・体重増加

・感覚異常

・圧痕浮腫

・下肢の潰瘍

〈加齢変化〉

・体液量の減少・細胞の減少・皮膚の弾力性・筋力

・骨密度

・心拍出量・血圧

・膀胱筋緊満

・基礎代謝率

・脂肪分布パターン

〈体液の状態・バランス〉

・下痢・オムツ着用・失禁

〈浮腫の程度〉

・眼窩周囲の浮腫

・四肢の浮腫

・仙骨の浮腫

・腹水・体重増加

・全身性浮腫

・肺雑音(水泡音)

〈排尿の自制〉

→尿失禁による皮膚浸軟・皮膚障害※尿のpHは5.0~8.0で食事内容やホメオスタシスで変動する

・排尿パターン・尿意・尿失禁・1回尿量・残尿感・残尿

・おむつの着用

・水分の摂取量

〈排便の自制〉

・排便パターン・便意

・便性状(下痢)・便失禁

・経管栄養

・乳糖不耐症(経管栄養剤が合わない)

・抗生剤の使用(菌交代による下痢のリスク)

・抗がん剤(分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬、イリノテカンなど)の使用

〈オストミーのセルフケア〉※オストミーは人工肛門・人工膀胱のことです

・ストマ周辺の皮膚状態

・ストマ(人工肛門)からの便の性状:泥状・水様・色・臭い

・ストマ(人工膀胱)からの尿の性状:色・混濁・臭い

・ストマ管理のセルフケア習得程度

〈薬剤反応〉〈アレルギー〉

・新しく追加になった薬剤

・薬剤アレルギー・食物アレルギーの既往

・アレルゲン(ハチ・食物・ラテックス・金属・薬品)

・薬剤によるアナフィラキシー(粘膜浮腫)

 ・呼吸困難

 ・ショック(アナフィラキシーによる血圧低下)

 ・発疹(広範囲の紅斑や丘疹)

・薬剤によるアレルギー反応

 ・発疹(丘疹・紅斑)

 ・掻痒

 ・眼瞼・陰部などの浮腫(アナフィラキシーの一歩手前で、重症の可能性がある)

   

2》行動計画 TP

・必要な食事摂取量が確保できるように食事内容や形態を工夫する。

・栄養不足の場合は補助食品の検討をする。

・適切なポジショニングを行う。(特に骨突出部の圧迫を避ける)

・定期的に体位変換を行う。自力体位変換が可能ならば、定期的に声掛けをする。

・長時間車椅子へ座っている場合には、耐圧分散クッションを使用し、定期的に除圧のための声掛けを実施する。

・寝たきりの場合にはエアマットを検討する。

・エアマットの除湿モード・自動体交モードを利用する。

・定期的に体重測定を行う。

・浮腫のある場合には、ドレナージやマッサージを行う。

・トイレまで間に合わず失禁のある場合には、尿器やポータブルトイレの使用を検討する。

・オムツ着用の場合には、陰部洗浄を行う。

・下痢をしている場合には、こまめにおむつを交換する。

・経管栄養開始による下痢は医師に相談する。(栄養剤の変更を検討してもらう)

う。

・褥瘡の起こりそうな部位には、保護材を使用する。

・褥瘡のサイズ、深さ、出血、浸出液の量など、DESIGN-R(★1)に沿って観察する。

・抗生剤開始による下痢は医師に相談する。(整腸剤や止瀉剤(ししゃざい)を検討してもらう)

・抗がん剤による下痢の出現は医師に相談する。(止瀉剤(ししゃざい)が検討されるか、止瀉剤の使用できない抗がん剤の場合には補液が検討される)

・抹消循環が保持されていない場合には、保温する。(湯たんぽ、掛物、室温)

・浮腫のある場合には、体位変換に注意を図る。(皮膚の破綻を避ける)

・皮膚の脆弱による皮膚剥離や皮下出血にはフィルムドレッシングを貼付し補強する。フィルムの貼付が困難な部位には撥水性のあるワセリンなどを塗布し、皮下組織を刺激から保護する(上皮のような役割を持たせる)。

・排尿パターン、排便パターンを把握し、尿失禁や便失禁する前にトイレ誘導する。

・ストマリムーバーなどを使用して、愛護的にストマを交換する。

・ストマをこすらないように泡で洗浄する。

・ストマを貼付する前に保護材を使用する。

・体型変化によってストマ周囲にしわが寄っている場合には、隙間を埋める処置を施し、排泄物が皮膚に触れないように工夫する。

・皮膚トラブルが継続する場合には、皮膚排泄ケア認定看護師に相談する。

・輸血・新たな薬剤を点滴する場合には、開始から15分は注意深く観察を行う。

・薬剤投与後にアレルギー反応を起こしている場合には、薬剤投与を中断し、医師へ報告する。

・アレルギー反応が起きている場合には、医師の指示に従いステロイドや抗アレルギー薬を使用する。

★DESIGN-R

日本褥瘡学会HPより引用

 

3》教育計画 EP

・尿意・便意を感じたら、ナースコールで知らせるように伝える。

・失禁したら、恥ずかしがらずにナースコールで知らせるように説明する。(汚物の長時間付着で皮膚トラブルになるとナースコールの必要性を説明する。)

・バランスよく食事を摂取するよう説明する。

・同一の体位で長時間過ごさず、時々除圧するように説明する。

・しびれ、感覚麻痺、むくみがあったら知らせるように説明する。

・抗生剤、抗がん剤使用に伴って下痢が起きた場合には知らせるように説明する。

・むくみのある部分はぶつけないように説明する。

・ストマが正しく管理されるようにパンフレットを用いて説明する。(洗浄・交換・観察・食事など)

・ストマからの排泄物に異常があれば知らせるようにお願いする。

・薬剤開始により、かゆみや呼吸困難など違和感が出たら、すぐに知らせるようにお願いする。

 

参照文献
T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.
山口徹 北原光夫 福井次矢. (2012). 今日の治療指針.
山内豊明. (日付不明). フィジカルアセスメントガイドブック. 医学書院.
青柳智和. (2018). 洞察力で見抜く急変予兆~磨け!アセスメントスキル~. 株式会社ラプタープロジェクト.
大橋優美子 吉野肇一 相川直樹 菅原スミ. (2008). 看護学学習辞典(第3版). 株式会社 学習研究社(学研).

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投稿者

florence.no.tomoshibi@gmail.com

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