NANDA-00091 看護計画: 床上移動障害 →→床上可動性障害(2021年版より)

領域4 活動/休息
エネルギー資源の産生、保存、消費、またはバランス
類2 活動/運動 身体の一部を動かすこと(可動性)、働くこと、またはしばしば(常にではなく)抵抗に対して行動すること

00091 床上移動障害 →→00091 床上可動性障害(2021年版より)

2021年版より名称変更している。診断指標の項目が増え、新たな判断材料である「ハイリスク群」と「関連する状態」が追加となっており、より具体的にイメージできるようになった。

看護診断;床上移動障害
定義:床上でのある体位から別の体位への、自力動作に限界のある状態

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看護診断;床上可動性障害
定義:床上でのある体位から別の体位への、自力動作に限界のある状態

補足:類似の看護診断について

体位変換や移乗に関する看護診断では、状態に合わせて以下のように選択してみてください。

1. 何らかの原因でADLの低下をきたしている場合:身体可動性障害

看護診断:身体可動性障害
定義:自力での意図的な身体運動や四肢運動に限界のある状態

2.ベッド上での体位変換ができない場合:床上可動性障害

看護診断:床上可動性障害

3.面から面への移動が困難な場合:ベッド⇔車椅子、ベッド⇔ストレッチャーなど:移乗能力障害

看護診断:移乗能力障害
定義:隣接する面から面への自力移動に限界のある状態

  

1.床上移動障害の適応

・要介護4・5
・認知症高齢者の日常生活自立度でⅢ・Ⅳ・M(★1)
・障害高齢者の日常生活自立度でランクA2・B・C(★2)
・認知機能の低下(移動するという言葉の意味がわからない、動作の方法・手順がわからないなど)
・神経筋障害
・筋骨格系の障害
・麻痺
・筋力不足
・サルコペニア(食欲低下・骨折による不動などの原因により筋肉量減少をきたしたもの)
・ロコモティブシンドローム(骨・筋肉・関節・靭帯・腱・神経などの運動器の障害により移動機能が低下した状態)
・フレイル(虚弱:健康と要介護の中間で、社会的フレイル、身体的フレイル、心理的フレイルがある。身体的フレイルにロコモティブシンドロームとサルコペニアは含まれている)
・肥満
・意識レベルの低下
・薬剤
・療養環境、生活環境がADLに適していない
・人工呼吸器の回路(移動困難の一因)
・ドレーン、点滴などの挿入物(移動困難の一因)
・術直後
・疼痛

(★1)認知症高齢者日常生活自立度

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf

★2)障害高齢者の日常生活自立度

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000077382.pdf

 

2.目標設定

リンケージによる目標設定(NOCの後半に載っています)
※「リンケージ」は「NANDA」「NIC」「NOC」をつなぐ役割があります(リンクは「連結」の意味)。

)リンケージ上の成果

・体位変換:自力(0203)
(定義:補助具の使用の有無にかかわらず体位を変換する動作)
・関節運動(0206)
(定義:自発的な運動による全ての関節の自動的関節可動域)
・神経学的状態:中枢性運動神経系調節(0911
(定義:胎動のための骨格筋運動を調整する中枢神経系の機能)
・疼痛のレベル(2102)
(定義:観察または報告された疼痛の重症度)

2)目標

目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。

・生活リハビリを取り入れることができる。

・自助具を活用して、ADLを維持することができる。

・食事をバランスよく摂取できる。

※看護師の目標としては以下のようなものが挙げられると思います。

・完全に寝たきりとなるのを回避するため、関節可動域訓練を行い、関節拘縮の予防と筋力維持を図る。
・術後の疼痛を緩和しながら、離床を安全に進める。
・呼吸器回路やドレーンなどの挿入物に配慮しながら、安全なベッド上での体位変換を支援する。
・できる部分は見守り、できない部分のみ介助する。
・環境の整備や自助具の使用で、残存能力を活かし、自立を促す。

 

3.看護計画


1)観察計画《OP》

・バイタルサイン
・意識レベル
・認知障害(長谷川式20点以下、MMSE21点以下)
・疾患と疾患の病期
・安静度(ベッド上、室内フリー、病棟フリー、院内フリーなど)
・鎮静剤使用の有無
・麻痺の有無、部位
・安静時:疼痛の有無、範囲、部位、疼痛スケール
・体動時:疼痛の有無、範囲、部位、疼痛スケール
・疼痛時の鎮痛剤使用の有無
・術後日数、術後経過
・人工呼吸器の使用の有無(終日か夜間のみか)
・ドレーン、酸素、点滴などの管類の有無
・MMT(徒手筋力テスト)
・関節可動域
・ADL、IADL(受傷前、受傷後、現在)
・要介護度
・自力で可能な関節可動域の範囲(どこまで出来て、どこから介助が必要か)
・認知症高齢者の日常生活自立度
・障害高齢者の日常生活自立度
・肥満、BMI=25以上
・着衣(浴衣、パジャマ、洋服)
・自宅の寝室(ベッドかふとんか)
・同居家族の有無、介護力
・本人の活動に対する意欲、活気
・消極的言動、無気力
・睡眠と活動のバランス
・食欲、食事量、水分摂取量
・皮膚状態、褥瘡の有無

   

2)行動計画《TP》

・安全・安楽・自立に視点を置いて環境整備をする。
・自身でできることは自分で行ってもらう。そのための見極め(なにがどこまでできるのか)をし、他のスタッフへも申し送り、誰もが同じ介入をする。
・できないことの手助けをする。自助具の利用で残存機能を活かせる方法を導入する。
・リハビリ職とも連携し、リハビリでの実施内容、進行状況、生活上の注意などの情報を共有し、療養生活に組み込む。
・気分の落ち込みや、抑うつによる体動の減少がある場合には、気分転換につながる介入を行う。
・筋緊張が強い場合には温罨法やマッサージなどで筋緊張を緩和する。
・安全な療養環境を整備する。手すりの設置がされているトイレへ誘導するなど安全に使えることを認識してもらい、自分にもできそうだと思ってもらえるような介入をする。
・急性期から早期離床に取り組む。
・呼吸器回路がある場合には、テンションが掛かって抜けないように注意して介助する。患者の協力が得られない場合には、複数のスタッフで介助する。
・管類が引っ張られないように注意して介助する。
・可動域保持、筋力保持のための関節可動域訓練を行う。
・ベッド上でもできるROM訓練を取り入れる。
・日中はトイレまで移動する、食事の際は車椅子に移るなど、生活範囲の拡大につながる介入を行う。
・デイルームなどの皆が集まれるスペースがある場合には、食事の際やその他の時間に、お連れして、お互いにコミュニケーションをとってもらうように計らう。(刺激を与える)
・疼痛により活動が制限されている場合には、医師に鎮痛剤の指示をもらい、鎮痛剤の投与をする。
・肥満による体動困難がある場合には、間食の制限など、治療の計画に沿って介入を行う。
・日中活動し、夜間睡眠がとれるようにバランスを整える。朝の日光を取り入れる。
・体交時には、麻痺側を巻き込んだり、下になったままにならないよう気をつける。
・食事量の低下が見られる場合には、口腔内の様子・腹部症状・食形態・嚥下機能などを評価し、食事量が増えるように調整する。食形態の変更、歯科の介入、補助食品の追加など。
・完全に寝たきりの場合には、エアマットの導入を検討する。定期的な体位変換の実施をする。

 

3)教育計画《EP》

・急性期の早期離床の効果を説明する。
・長期臥床による寝たきりへのリスクを説明する。
・呼吸器回路がある場合には、引っ張らないように説明する。体位変換したい場合にはナースコールを押すように説明する。
・ドレーン、酸素、点滴、膀胱留置カテーテルなどの管類がある場合には、利用上の説明をする。ドレーンは看護師の再挿入ができないため、特に注意してもらう。
・受傷による後遺症で麻痺が残った場合には、麻痺側の扱い(脱臼、血流障害)について説明する。
・車椅子に移乗するときには、麻痺側を体幹の内側に入れてから移乗する。
・体位変換時は、麻痺側を下にする時間は短時間とする。
・体位変換時は、麻痺の腕の位置に注意し、脱臼しないように注意する。
・麻痺部は痛みを感じないので、怪我などにも注意する。
・在宅では、朝起きたら更衣をし、暮らしのメリハリをつけることのメリットをお話する。
・疼痛があるときには我慢せず、ナースコールを押すように説明する。
・内服薬は用法用量を守って内服するように、本人と介護者に説明する。飲み忘れしないような工夫も一緒に考えていく。
・食事にタンパク質を取り入れると筋肉量が維持されてサルコペニアの予防にもつながることを説明する。(腎臓病などでタンパク制限のある人はダメです)

  

参照文献

T.ヘザー・ハードマン、上鶴重美、カミラ・タカオ・ロペス. (2021年7月1日). NANDA-I看護診断ー定義と分類 2021-2023 原書第12版. 株式会社 医学書院.
T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
恒藤暁 内布敦子. (2010). 系統看護学講座 緩和ケア. 株式会社 医学書院.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.
大橋優美子 吉野肇一 相川直樹 菅原スミ. (2008). 看護学学習辞典(第3版). 株式会社 学習研究社(学研).

 

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投稿者 FlorenceMYM

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