領域3 排泄と交換
身体からの老廃物の分泌と排出
類1 排尿機能 尿の分泌、再吸収、排出のプロセス

尿閉 00023

看護診断:尿閉(00023)
定義:膀胱を完全に空にできない状態

尿閉とはなんだったでしょうか?尿閉と混同しがちな無尿についてもおさらいしてみましょう。

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★ 無尿と尿閉って何が違う?★

「無尿」も「尿閉」も尿が出ない状況で同じように思われがちですが、実は違います。では、どのように違うのかを見てみましょう

①無尿

「無尿」は膀胱内に尿がない状態で、尿が作られていないか、尿は腎臓で作られているが尿管が詰まっていて膀胱まで尿が届いていない状態です。「乏尿」は無尿の仲間で、膀胱に貯留している尿の量が少ない状態をいいます。

・無尿は1日の尿量が100ml以下、乏尿は1日尿量が400ml以下のこと。
・一般成人における正常な尿量は、1ml/kg/Hです。たとえば体重50kgの人で50×1ml×24Hで1200mlとなります。
500ml/日は最低必要で、800~1500ml/日がおおよその正常範囲です。急速な尿量の減少は急性腎障害を疑います。
・発症の経過により「慢性尿閉」と「急性尿閉」に分けられる。
・原因は次のとおりです。
 ・腎前性(脱水、ショック、心不全などの循環の問題)
 ・腎性(糸球体腎炎、毒素や毒物による腎障害、急性尿細管壊死(えし)、急性皮質壊死など)
 ・腎後性:尿路ガン、尿管結石、両側尿管結石、外傷性尿管損傷など)である

②尿閉

「尿閉」尿が膀胱に貯留しているが、下部の尿路障害によって排出できない状態のことです。

・原因は前立腺肥大が最も多く、神経因性膀胱や薬剤(抗コリン作用)も原因としてあげられる。

・腹部エコーや下腹部の触診(膀胱が半球状の腫瘤として触知される)ので残尿の確認ができます。また、導尿で尿の流出を認めます。ただ、外傷がある場合には、外傷による尿道損傷の可能性もあり、導尿は慎重に行う必要があります。

尿閉について理解ができましたね。排尿機序は国家試験に頻出しますので、こちらもおさらいしましょう。

1.排尿機序

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排尿とは、尿を体外へ排出することです。排尿機序も国試に頻発です。おさらいしましょう。

1)排尿機能の神経支配

排尿は、自律神経系での自動調節と、体制神経での任意の調節で成り立っており、
支配神経は以下のようになっています。
★排尿の指示系統は「大脳皮質(前頭葉)」→脳幹・橋「排尿中枢」→仙髄「排尿中枢」です。
①交感神経(下腹神経)
・排尿筋を弛緩、内尿道括約筋を収縮→排尿を抑制する
②副交感神経(骨盤神経)
・排尿筋を収縮、内尿道括約筋を弛緩→排尿を開始する
③体性神経(陰部神経)
・外尿道括約筋を収縮→排尿の一時停止をする(我慢)

 

2)排尿の機序

排尿は次の機序で成り立っています。
①膀胱に尿が貯まる。
大脳皮質(前頭葉)で尿の流入を感知し、脳幹の排尿中枢へ知らせが届く。
 脳幹の排尿中枢は、下腹神経を刺激して膀胱の排尿筋を弛緩させて、内尿道括約筋を収縮させる。
 よって膀胱が尿を入れる入れ物として機能する。
②膀胱内に一定の尿量が貯留する。
膀胱内に150~300ml程の尿が貯留する。
膀胱壁が伸展し、大脳皮質(前頭葉)で尿が溜まってきたことを知覚する。
 大脳皮質は、脳幹の排尿中枢へ排尿するための指令を出す。
 脳幹の排尿中枢は、仙髄の排尿中枢へ排尿するための指令を出す。
 脳幹の排尿中枢は、上の指示と同時に、下腹神経の活動中止も指示する(蓄尿を中止する)。
③排尿反射が起こる。
 脳幹の排尿中枢から指示を受けた、仙髄の排尿中枢は、
骨盤神経を通じて排尿筋を収縮させ、内尿道括約筋を弛緩させる。
すると、膀胱が収縮し、尿道が開くため排尿する。
④排尿を我慢するとき
 大脳皮質は②で尿の貯留を認識していても、すぐに排尿させずに蓄尿を継続させることができる。
 大脳皮質は、仙髄の排尿中枢に尿を我慢するように指令を出す。
 仙髄の排尿中枢は、陰部神経を介して外尿道括約筋を収縮させて、排尿を防ぐ。

 

排尿機序についておさらいができましたね。では、本題の尿閉について考えていきましょう。

 

2.「尿閉」の適応

「尿閉」は排尿障害の一種です。排尿障害は「尿の排出障害」と「尿の蓄尿障害」の2つに分けられます。それに加えて、薬剤による影響もあります。


①排出障害の原因となる疾患

・神経因性膀胱:排尿に関与する神経の障害による排尿障害
(・脳血管疾患・糖尿病・子宮全摘術後・骨盤内手術後・アルツハイマー病
  ・パーキンソン病・多発性硬化症・小脳変性症・二分脊椎症
  ・椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症)
・前立腺肥大、前立腺がん
・骨盤臓器脱(膀胱瘤、子宮脱)
・尿道狭窄(内視鏡検査後など、尿道内に傷がついている)
・尿道結石、
・膀胱腫瘍、尿道腫瘍
・陰茎がん
・子宮筋腫

 
②蓄尿障害の原因となる疾患

・過活動膀胱
・肥満
・神経因性膀胱
・間質性膀胱炎
・膀胱炎、膀胱結石

 
③薬剤によるもの

・抗コリン作用のある薬剤
 (抗コリン薬,抗うつ薬,鎮痙薬,抗ヒスタミン薬)
・膀胱平滑筋弛緩薬
・β2アドレナリン受容体刺激薬
・鎮咳薬
・パーキンソン症候群治療剤

 

3.目標設定


1)リンケージによる目標設定(NOCの後半に掲載されています)

※リンケージはNANDA(診断)とNOC(成果)を繋ぐ役割があります。
・排尿(0503
(定義:尿をためて排出する)
・排尿の自制(0502)
(定義:膀胱からの尿の排出のコントロール)

2)目標

目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。

・排尿の異常時には、医療機関を受診できる。
・自己導尿の留意点を述べることができ、実際に自己導尿を行うことができる。
・適切なタイミングでパッドを交換することができる。
・医師の処方通りに服薬できる。
・自己導尿を行う患者が、どのような症状が出た場合に医療機関の受診が必要となるか述べることができる。
・膀胱瘻の安全な管理法について述べることができ、実際に安全な管理ができる。

※看護師の目標としては以下のようなものが挙げられると思います。

・尿閉の治療(カテーテル管理、内服管理、手術など)が安全に行われるように支援する。
・内服治療などの自己管理(家族による管理)を支援する。
・管理に伴う不安を傾聴しながら支援する。

 

4.看護計画


1)観察計画《OP》

《排尿機序を把握するための項目》
・年齢、性別
排出障害につながる疾患の有無排出障害につながる疾を参照)
蓄尿障害の原因となる疾患の有無(蓄尿障害の原因となる疾患を参照)
・ADL、介助量(全介助、部分介助)
・排泄環境(トイレ、ポータブル、おむつ)
・清潔ケアの頻度
・おむつ汚染の頻度(尿路感染のリスク)
・水分摂取量(控えていないか、飲みすぎていないか)
・尿意の有無
・尿意を感じてから、トイレまでの移動にかかる時間
・尿の回数
・排尿パターンの把握(排尿日誌をつけるなど)
・利尿薬の内服の有無
・抗コリン作用のある薬剤
 (抗コリン薬,抗うつ薬,鎮痙薬,抗ヒスタミン薬)
・膀胱平滑筋弛緩薬
・β2アドレナリン受容体刺激薬
・鎮咳薬
・パーキンソン症候群治療剤
・排尿パターン(〇時間おき、食後など)
・尿量、尿線(勢いよくまっすぐに出るか、男性は放射線状に出るか)
《排尿障害の可能性のある徴候》
・頻尿
・夜間頻尿、不眠
・排尿中に途切れる、分裂する
・排尿時痛
・排尿後に膀胱内は空になっていない、残尿感
・尿の性状異常(尿臭、尿の混濁、血尿)、発熱
・頻尿
・排尿の切迫感
・尿失禁(腹圧性、切迫性、混合性、機能性、溢流性)
・笑う、くしゃみ、持ち上げるなどの腹圧のかかる作業で尿漏れがある。
《治療計画》
・内服治療
・手術療法
・カテーテル留置
・自己導尿
・膀胱瘻
 

2)行動計画《TP》

・看護の原則「安全」「安楽」「自立」を念頭に置いた関わりをする。
・安全な療養生活が送れるように療養環境の整備を行う。
・尿意を感じた際に、スムーズに移動できるよう、トイレまでの動線を確保する。
・トイレやポータブルまでの移動で転倒が起こらないように、整頓する。
・トイレへの移動時に管類が引っ張られないように整頓する。また、管類の管理を患者に教える。
・付き添いが必要な患者で、ナースコールを押さない(あるいは押せない)場合には、一人で動いて転倒するリスクがあるため、ナースステーションに近い部屋にする。できない場合には、頻回に見回る、排尿パターンを把握して定期的に誘導する、センサーマットを使用するなどの工夫をする。
・着脱しやすい服を選択する。
・排尿パターンに合わせてトイレ誘導をする。
・膀胱訓練の介助をする。
・おむつ交換の頻度を適切に設ける。
・尿漏れがある場合には、パッドを使用し、こまめに交換する。
・おむつ装着者は陰部洗浄を行う。トイレ使用の患者はウォシュレットの使用を勧める。
・腹圧性尿失禁のある場合には、骨盤底筋体操の方法を習得してもらう。(看護師は説明しながら介助する)
・夜間頻尿などで睡眠が十分でない場合には、医師へ報告相談する。
・夜間頻尿がある場合には、夜間だけポータブルトイレや尿器を使用することを提案する。
・家族構成や、主介護者のADLを加味したケア計画を立てる。そのうえで、患者と家族がケアを自宅でも実践できるように、わかりやすく説明しながら、一緒に実践し、覚えてもらう。
・介護負担が大きくならないように、患者自身ができることは、自分でできるように促す。
・前立腺肥大:TURP手術の場合にはクリニカルパスに沿って準備する。
・前立腺肥大:TURP術後はカテーテル管理などを適切に行い、血尿、発熱、飲水量、疼痛、便秘などを観察して記録する。異変があればリーダーと医師に報告する。
・疼痛があれば指示に従い鎮痛薬を投与する。
・自己導尿が必要であれば、患者自身が手技を獲得できるように支援する。清潔操作、挿入の仕方、尿の観察、使用後のカテーテルの管理など。
・TUR-P術後は努責による出血を避けるために緩下剤を適宜使用する。
・疼痛があれば我慢せずにナースコールを押すように説明する。
・尿道ステント術を受ける場合には、術後の尿閉や発熱に注意して観察し、記録する。
・膀胱瘻は瘻孔の形成まで感染に注意して管理する。

 

3)教育計画《EP》

・治療計画の理解度を確認し、必要時は補足する。自己管理に必要な部分について説明する。内服は自己判断で中断せず、医師の指示通りの用法用量で内服するように説明する。
・見守りや付き添い、介助が必要な患者には、尿意を感じたらナースコールを押すように説明する。
何度も自分で動いてしまう場合には、繰り返し説明し、行動変容を促す。
・尿のパッドは汚染したら交換するように説明する。尿路感染のリスクについても説明する。
・適切な水分量を摂取するように説明する。1日1500ml程度(こまめに200mlコップを7杯)
・尿がでなくなった、尿が出すぎる、急な尿意で間に合わなくなる、尿漏れがひどくなるなどの症状があらわれたら、医師や看護師へ相談するように説明する。
・腹圧性尿失禁の場合には、骨盤底筋体操の方法を、パンフレットを使用して説明する。
・前立腺肥大などの基礎疾患のある場合には、定期的に受診するように説明する。
・退院前から、自宅の排泄環境を整える。ソーシャルワーカーやケアマネージャーと連携する。ポータブルトイレを設置してもらうなどの工夫をする。
・介護者にも排尿パターンに合わせた排尿誘導について説明する。
・前立腺肥大:TUR-P術への理解度を確認し、クリニカルパスに沿って準備していくことを患者と確認する。
・前立腺肥大:TUR-P術後は、安静度を守り、カテーテルを引っ張らないように説明する。また、血尿の増強があればナースコールを押すように説明する。水分を摂取するように説明する。排尿時痛がある場合には知らせるよう説明する。努責がかかることによる出血リスクについて説明する(特に1ヶ月は出血しやすい)。
・TUR-P術後は努責による出血を避けるために緩下剤を適宜使用するよう説明する。
・疼痛があれば我慢せずにナースコールを押すように説明する。
・尿道ステント術を受ける場合には、術後に熱っぽさや尿が出ないなどの症状がある場合には知らせるように説明する。
・自己導尿が必要であれば、患者自身が手技を獲得できるように支援する。清潔操作、挿入の仕方、尿の観察、使用後のカテーテルの管理など。
・膀胱瘻の管理について説明する。

参照文献
T.ヘザー・ハードマン、上鶴重美、カミラ・タカオ・ロペス. (2021年7月1日). NANDA-I看護診断ー定義と分類 2021-2023 原書第12版. 株式会社 医学書院.
T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.
山口徹 北原光夫 福井次矢. (2012). 今日の治療指針.
山内豊明. (日付不明). フィジカルアセスメントガイドブック. 医学書院.
大橋優美子 吉野肇一 相川直樹 菅原スミ. (2008). 看護学学習辞典(第3版). 株式会社 学習研究社(学研).

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投稿者 FlorenceMYM

“NANDA-00023 看護計画 尿閉” に1件のフィードバックがあります
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