領域11 「安全/防御」

類6 体温調節  有機体を守る目的で体内の熱とエネルギーを調整する生理的過程

「低体温リスク状態」 00253

看護診断: 低体温リスク状態

定義:体温調節障害により、深部体温が1日の正常範囲よりも下がりやすく、健康を損なう恐れのある状態

※2021年版では定義が変わっています。

定義:生後28日を超える人で、体温調節障害により、深部体温が日内の正常範囲を下回りやすく、健康を損なう恐れのある状態

 

.体温の正常値とは?

1)体温の正常値:

体温の正常値は明確な定義がありません。(一応、感染症法の届け出基準では37.5℃以上を発熱といい、38.0℃以上を高熱と定義しています。)

2)平熱の平均:

①日本人の平均体温は36.89℃±0.34℃(テルモ体温研究所HPより抜粋:https://terumo-taion.jp/health/temperature/01.html)で、7割の方が36.6℃から37.2℃の間に該当する。→37.0℃でも平熱ということ。特に小児は体温が高い。

②平熱は個人差がある:平熱は個人差があり、一概に線引きすることはできない。その人の平熱を知ることが大切。平熱を知る際には、同じ条件で複数回測定する必要がある。

③平熱を同じ条件で複数回測定する理由:

・体温には日内変動がある。朝が最も低く、午後3~4時(15:00~16:00)が最も高くなる。だが、その変動幅は1℃以内。

・測定部位(耳、脇、口、肛門)によっても測定値は変わる。

・女性は月経周期によっても変化がある。(排卵後に高温相に入る。だいたい14日間)

 

2.低体温とは

1)定義:

一般社団法人日本中毒学会では「低体温症」を次のように定義している。

 http://jsct-web.umin.jp/wp/wp-content/uploads/2016/06/taionkanri.pdf

「健康な人が厳寒の環境にさらされると、低体温に陥ることがある。体温調節機構に傷害 を与える薬毒物によっても同様に低体温が起こるが、環境中への暴露がない低体温は一 般的に軽傷から中等症のことが多い。 深部体温が 35未満を一般的に「低体温症」と定義し、32℃以上– 35℃未満を軽症、 28℃以上– 32℃未満を中等症、20℃以上– 28℃未満を重症、20℃未満を超重症と分類する。」

2)低体温の原因

熱放散の増加

例)水中に長時間滞在、雪山で滞在などの寒冷地で長時間滞在する。

例)酔っ払って、道路で寝た。

例)発病により体動できず、衣服の調節や室温調整ができずに冷えた。

「一人暮らしの高齢者が脳梗塞で麻痺となり動けず、発見されるのが遅れたため冷えてしまった」

「不整脈で意識障害が起こり動けなかった」

「低血糖で倒れて動けなかった」

基礎疾患(低体温となりやすい要素のある基礎疾患)がある。

・甲状腺機能低下症:トリヨードサイロニンやチロキシンの分泌障害で代謝低下

・副腎不全:熱産生に関与する糖質コルチコイドの産生量低下

・敗血症:重症敗血症による低体温をきたした場合は死亡率が高くなる。

「EARLの医学ノート」さんのページに研究報告が詳しく載せられています。

https://drmagician.exblog.jp/21328268/

敗血症→→白血球細胞より「一酸化窒素」が産生される、同時に炎症警笛細胞より「プロスタノイド」「内因性カンナビノイド」が産生される→→血管拡張→→交感神経緊張によりカテコラミン濃度上昇で血圧維持(血管抵抗維持)→→血圧がだんだん維持できなくなってくる→→組織還流低下→→低体温

③熱産生の障害

・栄養失調、摂食障害、哺乳困難

④低体温をきたしうる薬剤使用

・アルコール類:エタノール、イソプロパノール

・降圧剤のβ遮断薬(解糖系変化、脂質代謝変化、心拍出量低下):プロプラノロール、メトプロロール

・降圧剤の中枢性αアドレナリン作動薬(視床下部抑制による体温調整困難):αメチルドパ、クロニジン、グアナベンズ

・コリン作動薬(発汗障害、震えによる熱産生抑制、解糖系阻害):有機リン系殺虫剤、コリンエステラーゼ阻害薬(ネオスチグミン)

・神経遮断薬(体温中枢抑制):クロルプロマジン、ピペリジン

・血糖降下薬

・催眠鎮静薬(行動機能障害、視床下部抑制):バルビツレート系催眠剤

3)低体温症状

  ・20℃:脳波停止、心停止

  ・25℃:腱反射消失、仮死状態

  ・27℃:昏睡状態、心室細動

  ・29℃:半昏睡、心拍や脈拍減弱、呼吸数低下

  ・31℃:歩行困難、錯乱、意識混濁、シバリング、頻脈、過呼吸

  ・33℃:傾眠傾向

  ・35℃:自律神経失調、排泄能低下

4)低体温の治療

基本は対症療法臓器機能補助(特に循環の安定化)であり、加温が中心とな る。

・ 低体温による心停止に対して:急速内部加温による長時間の蘇生が有効と言われている。(体温が 30℃未満の心停止では、低温自体が脳を保護するため予後は良いとされる)

低体温による心停止の心肺蘇生時のアルゴリズム(ECC ガイドライ2000(ACLS)):低体温による心停止患者(深部体温が 30未満)”では、3 回の除細動後、VF・無脈性 VT が続いていても、それ以上のショ ックをかけ続けてはならないとしている。この状態の患者の細動している心臓がそれ 以上の電流に反応するためには、『復温』がまず必要であり、深部体温をモニターし ながら積極的加温を行う。30以上の場合は、標準の ACLS を施行する。

・酸素投与と、40 – 42℃に加温した補液による加温。

・軽症・中等症では体表から加温する(室温で毛布などをカバーする)だけで十分であ る。

・低血糖あるいは麻薬中毒では、ビタミン B1 欠乏症を伴うこともあり、そのような場合は、ブドウ糖・ナロキソン・サイアミン(ビタミン B1)投与を行う。

・重症低体温症で、体表からの加温に反応しない場合や心機能が不安定(心室性頻 拍や細動、心収縮停止など)では積極的に深部から加温しなければならない。

加温・加湿した酸素投与、②加温した液体による胃洗浄、③加温した透析液を用いた腹膜灌流、④体外循環回路を用いた加温(HD や人工心肺、FF バイパスなど)。

・復温の目安として、中毒が原因の場合は、1 時間に 1以下のゆっくりした復温を行 う。基礎疾患のない健常者は急速に復温しても良い

・低体温では、薬物代謝障害も同時に起こっており、復温後に薬物の副作用が現れることがあり、特に CPR 実施中は心臓病薬の繰り返し投与を出来るだけ避ける

・低体温による低カリウム血症は、細胞内カリウムの変動によって起こるとされ ている。したがって、低体温患者の低カリウムを補正すると、復温後に高カリウム血症を来す場合があるので注意する。

 

3.看護診断「低体温リスク状態」適応

熱放散の増加

・飲酒

・経済的困窮(衣服の不足)

・事故による失血、表皮の欠損、体温低下

基礎疾患(低体温となりやすい要素のある基礎疾患)がある。

・視床下部の損傷

・甲状腺機能低下症

・副腎不全

敗血症

・糖尿病(低血糖)

③熱産生の障害

・栄養失調、摂食障害

・経済的困窮(食事が食べられない)

④低体温をきたしうる薬剤使用

・降圧剤のβ遮断薬(解糖系変化、脂質代謝変化、心拍出量低下):プロプラノロール、メトプロロール

・降圧剤の中枢性αアドレナリン作動薬(視床下部抑制による体温調整困難):αメチルドパ、クロニジン、グアナベンズ

・コリン作動薬(発汗障害、震えによる熱産生抑制、解糖系阻害):有機リン系殺虫剤、コリンエステラーゼ阻害薬(ネオスチグミン)

・神経遮断薬(体温中枢抑制):クロルプロマジン、ピペリジン

・血糖降下薬

・催眠鎮静薬(行動機能障害、視床下部抑制):バルビツレート系催眠剤

⑤新生児

・病院外でのハイリスク出産

・早すぎる新生児沐浴

・哺乳量が少ない、体重減少が生理的範囲を超えている

・深部体温の低値

 

4.目標設定

リンケージによる目標設定(NOCの後半に載っています)

 ※「リンケージ」は「NANDA」「NIC」「NOC」をつなぐ役割があります(リンクは「連結」の意味)。

1)リンケージ上の成果

・体温調節(0800)

(定義:熱の産生、獲得、喪失のバランス)

・体温調節:新生児(0801)

(定義:生後28日間における熱の産生)

・身体的老化(0113)

(定義:自然な経年的変化に伴って起こる正常な生理学的変化)

・リスクコントロール:低体温(1923)

(定義:低体温の脅威を理解して予防し、排除または低減させるための個人の行動)

2)目標

目標は、患者さんを「主語」にします。
「看護者が○○できる」ではなく、
「患者さんが○○できるようになる」といった具合です。

・活動に必要な量の食事摂取、適切な服装の選択、環境の調整ができる。

・低体温の原因となる生活習慣を改めることができる(深酒など)。

・低体温をきたしやすい疾患であることを自覚し、服薬や生活管理ができる。

・判断力が十分でない子や高齢者とともに過ごす、養育者や介護者は、低体温を避ける衣服の選択や環境整備を行うことができる。また異変に気付いたときは病院受診につなげることができる。

※看護師の目標としては以下のようなものが挙げられると思います。

・食事を適切に摂取し、適正体重保持により低体温が予防される。

・低体温を引き起こす原因(疾患、飲酒、環境)を回避あるいは管理できるよう、知識の習得や、行動変容を促す。

・新生児、乳児の育児に必要な知識を習得してもらい、低体温予防に繋げる。 

 

5.看護計画

1)観察計画《OP》

リンケージの成果別に観察計画(OP)を立案していきます

〈体温調節 0800〉

・現在の体温、平熱との差

・寒い時の皮膚の状態(立毛し熱の放散を防いでいるか)

・寒い時に震えて熱を産生しているか(シバリング)

・皮膚温の低下

・深部体温の低下(35℃未満が低体温症)

・低体温症状(意識レベル低下、心拍数減少、脈拍減弱、呼吸数の異常)

〈体温調節:新生児 0801〉

・在胎週数

・出生時アプガースコア(新生児仮死の評価:7点以上が正常で1分、5分時に測定)

・体重増加率、哺乳障害

・不規則な呼吸、頻呼吸

・チアノーゼ

〈身体的老化 0113〉

・年齢、筋力、皮膚の弾力性、基礎代謝

・皮膚感覚機能・感染に対する抵抗力

〈リスクコントロール:低体温 1923〉

・低体温となりやすい環境(水中、寒冷地)での滞在

・低体温となりやすい状態(飲酒による判断力低下、泥酔して道路で眠る)

・発病で体温調節のための保温ができなかった(脳梗塞・心筋梗塞・低血糖の発症などで動くことができず、体が冷えてしまった)

・基礎疾患のコントロールが不良(甲状腺機能低下症、副腎不全)

・栄養状態が悪い(摂食量、摂食内容、体重変化、接触困難となる疾患、血液データ)

・薬剤性(中枢神経抑制する薬剤、血糖降下薬)

 

2)行動計画《TP》

・十分な栄養摂取を促し、適正体重に近づける。

・環境整備(室温、掛物)で低体温を防ぐ。

・高齢者で皮膚感覚が鈍くなっている場合には、声掛けをし、保温のための室温調整や衣服での調整を行う。

・新生児期や乳児期は体温調節中枢が未熟なため、外気温に影響をされやすい。掛物や衣服、室温で調整する。

・新生児仮死の場合には、医師の指示に従い、保温や挿管の準備等を行う。

・自律神経障害があり、自動での体温調節が困難な場合、発汗や皮膚の冷感などから低体温を察知し(体温計があれば体温測定)、衣服や室温で調整する。

 

3)教育計画《EP》

・自身で掛物や室温を調整するように説明する。

・判断がつかなくなるまで飲酒をしないよう勧める。(道路で睡眠をすることによる低体温を防ぐ)

・基礎疾患がある場合(基礎代謝を低下させる副腎機能不全や甲状腺機能低下)は、医師の指示に従い服薬の用法と容量を守るように説明する。

・糖尿病で血糖降下薬やインスリンを使用している場合、低血糖とならないように食事と運動のバランスを考えてもらう。また、低血糖時の症状(異常な空腹、脱力、冷や汗、動悸、混乱、意識が朦朧)があった場合に備えて、アメやジュースなどを携帯し、症状発現時には速やかに摂取する。お薬手帳を携帯する。

・乳児の生理機能についてご家族に説明し、自宅での乳児の管理について理解をしてもらう。

  

参照文献
T.ヘザー・ハードマン 上鶴重美. (2016). NANDA-I 看護診断 定義と分類 2015-2017. 医学書院.
岡庭豊. (2012). 看護師・看護学生のためのレビューブック. 株式会社 メディックメデイア.
岡庭豊. (2019.3). イヤーノート2020. 株式会社メディックメディア.
黒田裕子(訳). (2015). 看護成果分類(NOC)原著第5版 成果測定のための指標・測定尺度. エルゼビア・ジャパン株式会社.
山口徹 北原光夫 福井次矢. (2012). 今日の治療指針.
山内豊明. (日付不明). フィジカルアセスメントガイドブック. 医学書院.
青柳智和. (2018). 洞察力で見抜く急変予兆~磨け!アセスメントスキル~. 株式会社ラプタープロジェクト.
大橋優美子 吉野肇一 相川直樹 菅原スミ. (2008). 看護学学習辞典(第3版). 株式会社 学習研究社(学研).

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投稿者 FlorenceMYM

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